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CardanoがValentineアップグレードと小回りの利くノードで進化

先頃導入された変更で、他のブロックチェーンとの互換性が向上し、ダイナミックP2Pの追加によりネットワーク全体の効率が向上

2023年 5月 2日 Anthony Quinn 11 分で読めます

CardanoがValentineアップグレードと小回りの利くノードで進化

Cardanoは、新しい分散型金融システムをホストできるブロックチェーンとして、着実に前進しています。「ハードフォーク」を使って実装された近年最大のこのアップグレードでは、ステーク委任、ネイティブ資産、NFT、PlutusとMarloweのスマートコントラクトプラットフォームが追加されました。 

今年に入ってからの改良は一見些細なもののようですが、Cardanoを第三世代ブロックチェーンとして定義する相互運用性、スケーラビリティ、サステナビリティといったコア領域すべてに影響を与えるものであるうえ、Plutusスマートコントラクトを使用しているソフトウェア開発者を支援するものでもあります。

カーブが増えるごとに、ブロックチェーンリンクは向上

 まず、2月のアップグレードであるValentineは、スマートコントラクトを使用するソフトウェアを構築する開発者を助け、Cardanoと他のブロックチェーンとの互換性を拡張します。このアップグレード名は、DAppへの愛を込めて、リリース予定日であった聖バレンタインデーにちなんで付けられました。 

このリリース日と名称が設定されるまで、このアップグレードはSECPと呼ばれていました。これはStandards for Efficient Cryptography Protocol(効率的な暗号プロトコルの標準)の略で、SECG、すなわちStandards for Efficient Cryptography Groupにちなんでいます。このコンソーシアムは1998年に暗号の商用標準化を開始しました。このグループは楕円曲線に基づいた技術を採用しています。これは、楕円曲線を含む符号を破ることは非常に困難でありながら、鍵符号は他の方法よりも短いためです。 

Valentineアップグレードでは、SECP256k1と呼ばれる曲線のサポートが追加されました。これは、ビットコイン、イーサリアム、バイナンスコインの公開鍵の暗号化に使用されているため、Cardanoとこれらの主要ブロックチェーンとの互換性が向上します。特に、Cardano上で分散型アプリケーション(DApps)を作成している開発者や企業は、データの検証に楕円曲線デジタル署名アルゴリズム(ECDSA)とSchnorrという2種類の署名を使用することができます。CardanoにはEdDSA(エドワーズ曲線デジタル署名アルゴリズム)というネイティブ署名アルゴリズムがあり、今回の変更はこれへの追加となります。

これらの署名追加により、Cardanoでは開発者のコストと時間を節約できるようになり、Plutusでスマートコントラクトを作成するときにセキュリティを低下させるようなエラーを起こす可能性が排除されます。Cardano上で実行されているPlutusスクリプトは、すでに7,800を超えています。 

相互運用性の向上、つまりブロックチェーン連携能力の向上は、Cardanoの構築を推進する3つのコアコンセプトの1つです。ブロックチェーンの互換性は、世界規模で分散型技術が受け入れられるために不可欠であり、Cardanoはクロスチェーン転送、多種多様なトークン、汎用スマートコントラクトで、これを可能にするのに役立ちます。

Valentineによる署名変更は、イーサリアム対応EVMなどのサイドチェーンや別のブロックチェーンで生成されたトランザクションをCardanoで簡単に検証できることを意味します。  

成長に向けて

最近進展がみられるもう1つのコアコンセプトは、スケーラビリティです。ここでは、レイヤー2プロトコルとしてCardano上に置かれたHydra技術が重要です。Hydraは、開発者が独自のミニブロックチェーン(Head)を作成する可能性を提供し、特定の機能をメインブロックチェーンから切り離して処理できるようにします。Hydra Headはアプリケーションの処理時間を短縮するとともに、メインチェーンからその作業を切り離します。この技術により、トランザクションコストも削減されます。Input Output Global(IOG)とMLabsは、この技術の力を示すために、Hydraを使用したオークションに取り組んでいます。また別のプロジェクトでは、Obsidian Systemsと協力して、Hydraを使用した支払いを導入しています。 

ダイナミックP2Pがネットワーク全体を改良 

3つ目のコンセプトはサステナビリティです。ブロックチェーンが長期的に機能し続けるためには分散化が不可欠であり、単一の当事者や小グループにコントロールされないようにすることが肝要です。ピアツーピア(P2P)通信は、Cardanoのステークプールオペレーターが24時間稼働し続けている数千台のコンピューターであるリレーノードが相互に直接インタラクションできるようにすることで、ネットワーク接続の分散性を確保します。 

プールオペレーターは、ブロック生成用に設定されたノード1つと、2つ以上のリレーノードを実行することが推奨されています。最近まで、リレーノードは手動で設定して他のリレーノードにリンクする必要がありました。

自動化を充実させた通信機能を備えたCardanoノードソフトウェア(バージョン1.35.6および1.35.7)のリリースにより、これに進歩がもたらされました。ダイナミックP2Pを使用すると、他ノードへのリンクは自動的に設定され、プールオペレーターがを手動で設定する必要がなくなります。つまり、ネットワークの一部が故障したり、速度が低下したり、ハッカーに攻撃されたりした場合でも、各ノードは自動的にインターネット上で新しいピアを見つけることができます。オペレーターが介入する必要はありません。

このアップデートでは、トランザクションの検証時や、Cardanoの稼働を維持するために必要な多くのタスクのいずれかを実行する際に、各ノードがどのノードと「通話」するかを選択する方法が自動化されます。ダイナミックP2Pはセキュリティを強化して、サービス拒否(DoS)攻撃に対するネットワークの耐性を上げます。ノードがダウンしたり、接続の質が低下したりすると、ネットワークのリンクは正常に動作しているノードへと自動的に調整されます。

この結果、ブロック拡散時間が最小化され、最終的にネットワーク全体の効率が向上します。P2Pモードで実行されているノードは、品質測定に基づいて、リンクを維持するべきリレーピアをより賢く選択します。各ノードによるこれらのローカルな選択により、ネットワーク全体が継続的に最適化され、ネットワーク全体でブロックとトランザクションの送信時間が最短に抑えられます。 

DeFiパズルのピース

誰でもどこでも使用できる金融システムを開発するうえで、他のブロックチェーンと連携でき、Plutusでスマートコントラクトを作成でき、より多くのタスクを処理でき、より優れた回復性を誇るのが、Cardanoネットワークです。1月末、Cardanoのステーブルコイン、Djedのリリースにより、分散型金融(DeFi)のパズルにピースがもう1つ加えられました。Djedは1日で2700万ADAの裏付けを得て、MinSwap、MuesliSwap、Wingridersなどの取引所で利用可能になりました。

コイン価格を安定させるために、Djedごとに6ADAが裏付けられています。この裏付けにより、CardanoエコシステムにDeFiの機会が拓かれ、支払いの決済や手数料のカバーにDjedが使用されるようになります。

トレーニングへの投資

技術の進歩に伴い、IOGはトレーニングコースを拡大しました。これは、プログラマーと、プログラミング経験のない金融関係者の両方に利益をもたらします。IOGアカデミーは、CardanoのスマートコントラクトプラットフォームであるMarloweとPlutusを対象としたコース、テクニカルガイド、Q&Aセッションを提供しています。この出発点は、MarloweとPlutusのHaskell言語の基本を提供するGitHubのコースです。

過去5年間で、500を超える人々がIOGでCardanoに取り組んできました。現在、この数は社外の多くの開発者によって数倍になっています。これまでに立ち上げられたプロジェクトは119にのぼり、さらに1000件のプロジェクトが続いています。Cardanoのアップグレードのたびに、IOGは開発をしやすくし、世界が分散型金融へ踏み出しやすくすることを目指しています。

本稿の内容は、財政、投資、法律、税金に関するアドバイスを含むがこれに限定されない専門的なアドバイスを目的としたものではありません。Input Output Globalは、読者が本稿から得られる情報の使用またはこれへの依存に一切の責任を負いません。

参考