Hydra for Payments ‐ Cardanoでマイクロペイメントのロックを解除する開発者ツールを紹介

IOGは、Hydra Headプロトコルに基づくユースケースの開発を促進するためにObsidian Systemsチームと協力しています。Hydra for Payments(Hydraで支払い)は、そのようなユースケースの1つです。

はじめに

スケーラビリティは、ブロックチェーンが何百万ものトランザクションを、手数料やトランザクション決済時間を大幅に増やさなくても処理できるようにするためのカギとなります。スケーラビリティの問題に対処することは、Cardano設立の原則の1つであり、Basho開発フェーズの焦点となっています。

Cardanoプラットフォームは、レイヤー1の拡張機能を実装し、メインチェーン外で機能する処理力、すなわちレイヤー2ソリューションを追加することにより、メインチェーンの処理能力を向上させてスケーリングを実現します。これらのソリューションはともにネットワークのパフォーマンスの強化、スループットの向上、低額のトランザクション処理コストを実現します。

Hydraプロトコルファミリーは、Cardanoのレイヤー2スケーリングにおける主要コンポーネントの１つです。Hydra Headは、このプロトコルスイートの第一弾です。今後のさらなるスケーラビリティ構築の基盤となります。Hydra Headは、簡単に言えば比較的小人数のグループのオフチェーンミニ台帳であり、オンチェーンの台帳と同様の作業をより高速に実行します。

Hydra for Paymentsは、Cardanoエコシステムに支払いソリューションを実装するためのオープンソースの開発者ツールです。

Hydra for Paymentsの導入

Hydra for Paymentsは、さまざまなユースケースでHydra Headプロトコルを簡単に使用できるようにするものです。ネットワークへの基本的なアクセスを可能にした第1世代ライトウォレット機能のように、Hydra for Paymentsは、Cardanoエコシステムにおけるマイクロペイメントの力を解き放ちます。

Hydra for Paymentsはライトウォレット開発者が継続的にHydraプロトコルファミリーを活用してユーザーのニーズにより良く応え、運営費用を削減し、成長途上のCaradnoネットワーク全体のスループットを向上させることができるようなツールキットを提供します。

Cardanoの多様なウォレットプロバイダーたちに対応するのに十分な柔軟性を維持しながら、開発者のエクスペリエンスが慣れ親しんだものにするための取り組みがなされます。

後のフェーズでは、Hydra for Paymentsには、ライトウォレットプロバイダーが以下を行うために必要とする基本的なバックオフィスインターフェイスが含まれるようになります。

• 自身のHydra Headサービスを維持する
• 自身のノードインフラを検査する
• 運営を大幅にスケーリングする
• このようなサービスを他者に提供する

HydraはCardanoのスケーラビリティ戦略全体の一部でしかないため、Hydra for Paymentsも最終的にはより大規模なレイヤー2ライトウォレットの物語の一部を形成することになります。

Hydra for Paymentsの機能

• 使用可能：Hydra for Paymentsはオープンソースで、現在利用可能です
• なじみ深い：レイヤー1とのインタラクションは簡単で、開発者が新たに身に着けるべき重要なコンテクストや技術はありません
• 高速：トランザクションは、ノードがやり取りするネットワークの速度によってのみ制約される傾向があります。
• シンプル：Hydraの同型性により、Hydra for Paymentsの実装が開発者にとって大幅に複雑になることはありません。
• 同型： 同型設計により、既存の開発者ツールを多少変更して再使用することができます。

Hydra for Paymentsツールキットの開発全体を通して、2つの視点が共存し、並行して進行します。

• まず、一般的なHydra Headプロトコルで説明されている技術的な基礎が継続的に検証され、Hydra for Paymentsに確実に保持されます。これは、信頼、セキュリティ、正確性に関する保証に関連するため、特に重要です。
• 第二に、ライトウォレット開発者の実践的な考慮事項がツールキット全体に浸透します。機能は常に、開発、デプロイ、保守を合理的に行えるように設計されます。統合されると、Hydra for Paymentsは、ライトウォレット開発者の運用コスト、インフラストラクチャーを監視する能力、および操作性を大幅に改善します。

図1：Hydra for PaymentsおよびHydra Headsとの基本的なライトウォレットの統合

現在、さまざまなレイヤー2ソリューションが存在している、または、設計および開発中です。さまざまなアプローチが熱心に議論または支持されていますが、実装またはデプロイにはほど遠い状態です。

サイドチェーンとロールアップは、開発コスト、市場投入までの時間、セキュリティ、初期実装の複雑さに関するさまざまなトレードオフを提供しながら、特定の諸問題を解決するための優れた候補です。たとえば、トレードオフの1つは、これらのソリューションの一部は明示的なアセットブリッジを必要とするため、開発者が考慮すべき全体的な攻撃面が増えることです。同様に、同型ではないソリューションも、メインネットのセマンティクスから逸脱するため、開発者のオーバーヘッドが増加します。

Hydra for Paymentsのロードマップ

まずは、APIをHydra Headプロトコルのプリミティブとドメインを直接マッピングし、便利なHead操作を実現します。時間の経過とともに、Hydra for Paymentsを統合する開発者に対応して、特定のマイクロペイメントのユースケースに対応する専用機能または補助機能を追加します。

2022年第4四半期

Hydra for Paymentsツールは、開発者のクレデンシャル管理を補助するために段階的にロールアウトされ、Hydra Headのライフサイクル全体を管理し、共通の便利なインターフェイスを使ってHead同士でやりとりします。

Hydra HeadプロトコルはQ4に重要な強化を実施しますが、これが直ちに初期Hydra for Paymentsインターフェイスに影響するわけではありません。

Hydra for Paymentsの機能デモ部分は制限された高速支払いシステムに焦点を当て、グループがHeadを選択して比類のない速度とコストで資産を転送できるようにします。

標準

軽量汎用DApp接続用のCIP-30標準からライトウォレット開発者が恩恵を受けるように、HydraベースのソリューションはHydraインフラ管理の標準を形成することから恩恵を受けます。これで、最終的にエンドユーザーのニーズを満たすレイヤー2DAppとのインタラクションが可能になります。

このような標準の議論と形成に参加するだけでなく、Hydra for Paymentsは、標準が実用性をもったまま進化していけるような共有参照をデプロイおよび作成することによって貢献します。

2023年

今後も、Hydraプロトコルへの新機能や強化、そして、Hydra for Paymentsでのその積極的な使用を引き続き目にすることになります。近々の例としては、既存のオープンなHeadに資金をcommitおよびde-commitする機能を追加した、完全なHydra for Paymentsの実装があります。これにより、ユーザーが資産を追加または引き出す間も、支払いチャネルを開いたままにすることが可能になります。

将来の実際のリファレンス実装では、Hydra for Paymentsが既存のコンシューマー向けライトウォレットへ完全に統合される可能性があります。これには、専用のHydra-Head-as-a-Service（サービスとしてのHydra Head）製品の発売が伴う可能性があり、ライトウォレット開発者は、全体的な運用コストを比較的低く抑えながら、市場投入までの時間をさらに短縮することができます。

1つのHeadとやり取りする新機能の検証を続ける中で、初期実装への移行とスター型Headネットワークトポロジーの使用を検討する可能性があります。Hydra Head初期段階で学んだことを活かして、Hydra for PaymentsはHead間通信などの新機能を統合するために素早く拡張されます。この初期の例の1つは、Hydra Headを接続して適切なHydra Headネットワークを形成する機能であり、ほぼすべての支払いのユースケースでユーザーエクスペリエンスが向上します。

最後に、成長するCardanoエコシステムとともにこのツールキットを進化させるためには、コミュニティからのフィードバック、話し合い、その「貢献」を蓄積することが不可欠です。

詳細に関心がある方は、HydraのDiscordチャネルでさらなる議論にご参加ください。