Input | Outputのチーフサイエンティストがラブレスコンピューティング賞を受賞
IO Researchが引用回数10,000回を突破し、世界をリードする学術的ブロックチェーンネットワークになったことを受け、Aggelos Kiayias教授がコンピューティングを進歩させたとして名誉あるBCSラブレスメダル2024を受賞
2024年 12月 3日 16 分で読めます
Input | Output(IO)のチーフサイエンティスト、サイバーセキュリティおよびプライバシー主任、エディンバラ大学ブロックチェーン技術研究所のディレクターであるAggelos Kiayias FRSE教授が2024 BCSラブレスメダル(Lovelace Medal)を受賞しました。
この賞は、エネルギー効率、相互運用性、プライバシーの問題に対処する新しいブロックチェーンプロトコルへと導いた業績に基づき、サイバーセキュリティと暗号の理論と実践への画期的な貢献を認めたものです。
ラブレスメダルは、数学者、科学者、作家として活躍したエイダ・ラブレスにちなんで名付けられ、毎年、コンピューターの進歩への顕著な貢献に対して、英国公認協会であるBCSによって授与されます。これまでの受賞者には、World Wide Webの発明家であるSir Tim Berners-Leeや、最近のノーベル賞受賞者であるSir Demis Hassabisがいます。 Aggelos Kiayias教授の研究対象は、コンピューターセキュリティ、応用暗号、分散システムであり、特にブロックチェーン技術、電子投票、安全なマルチパーティプロトコル、プライバシー、ID管理に焦点を当てています。教授は安全でスケーラブルなブロックチェーンプロトコルの発展への貢献で広く知られており、最先端のプルーフオブステークコンセンサスアルゴリズムであるCardadnoのOuroborosプロトコルの開発に尽力しています。
世界的な学術ネットワーク
この賞は、Kiayias教授のIO Research(IOR)チームが、その公開論文の引用10,000回という重要なマイルストンを達成し、世界的な研究コミュニティで主導的なブロックチェーン学術グループになったのと同時期でした。
現在、IORライブラリーには、150人以上の研究者が参加する200以上の査読、公開済みの論文が収録されています。これらの論文のうち約50本は、Cardanoの5つの開発フェーズの中核であり、Cardanoを現在の形にするのに役立った基礎研究を提供しています。Cardanoが分散型ガバナンスのVoltaire期に突入した今、IORは、Cardanoをブロックチェーン技術の最前線にとどめるために、提案されている研究のロードマップと探求の分野でCardanoの進歩に貢献し続けたいと考えています。
社内のリーダーシップ
社内研究チームは、Cardanoブロックチェーンを第一原理から設計しました。これは、問題の核心要素を発見して推論する最も基本的なレベルであり、エビデンスに基づくエンジニアリングアプローチと機能性、セキュリティ、パフォーマンスの形式的分析を重視する方法論に基づいています。
この方法論は、初期設計、ラピッドプロトタイピング、形式仕様記述、テストモデルからなる開発プロセスに統合されており、自動テストと実装検証を可能にし、設計調査をスピードアップし、より高品質なシステムを実現します。
3人のスタッフメンバーがKiayias教授と最大15人の社内研究員をサポートしています。研究員は世界的な学術ネットワーク内で協力体制を取っています。研究員は、それぞれの分野で世界的に認められたリーダーであり、暗号、分散台帳、サイバーセキュリティ、形式手法、経済学、ゲーム理論などの分野を専門としています。
暗号とコンセンサス
Christian Badertscher、Sandro Coretti-Drayton、Matthias Fritzi、Peter Gaži、Giorgos PanagiotakosはOuroborosプロトコルの最適化に関する研究を共同で進めています。
レイヤー2および分散台帳
Raghav Bhaskar、Pooya Farshim、Marc Roeschlin、Pyrros Chaidosは、Hydraスイート、ライトクライアント、Mithrilなどの研究分野に焦点を当てています。
経済学とゲーム理論
Paolo PennaとSotiris Georganasは、トークノミクスの設計、報酬の共有、トランザクション手数料の研究の先駆者です。
社内チームは研究分野を横断して共同で作業し、IORがブロックチェーン技術を進歩させる最先端のソリューションを確実に提供するために、学際的なアプローチを通じて互いにサポートし合っています。
Blockchain Technology Laboratory
3つの学術パートナーで構成されるBlockchain Technology Laboratory(ブロックチェーン技術研究所:BTL)ネットワークは、IOのイニシアチブによって2016年に創設されました。その目的は、業界や政府のパートナーと協力して、業界にインスピレーションを得たブロックチェーン技術と分散システムに関するオープンアクセス研究を実施することです。
エディンバラ大学(英国)
BTLはエディンバラ大学の一部であり、ブロックチェーン技術の進歩に焦点を当てた主要な研究センターとして機能しています。暗号と分散システムに重点を置くラボは、安全でスケーラブルなブロックチェーンプロトコル開発の最前線にあり、Cardanoエコシステムに大きく貢献しています。
チームは、以下に挙げるようなプロジェクトに関与している教授、講師、ポスドク、博士課程の学生で構成されています。
- Edinburgh Decentralization Index(EDI):ブロックチェーンの分散化を第一原理から研究し、関連するデータセットをアーカイブし、メトリクスを開発し、時間とシステム間の分散化傾向を追跡するダッシュボードを提供。
- ZK-Lab:ゼロ知識プロトコルの最先端を進み、セキュリティやパフォーマンスを損なうことなく最大限のプライバシーを確保。
東京工業大学(日本)
東工大はブロックチェーンをはじめとする工学やテクノロジーに関する最先端の研究で知られる名門校です。2016年半ば以降、BTLネットワーク内の東工大のコラボレーションは、Byron、Shelley、BashoなどのフェーズをまたがったCardanoの開発に影響を与えてきました。主要な成果としてはOuroborosプロトコルの初期バージョン、ステークプールを可能にする委任フレームワーク、ネットワークのスケーラビリティを改善するために進行中のHydraの取り組みが含まれます。
ワイオミング大学(米国)
ワイオミング大学は、Wyoming Advanced Blockchain Labのようなイニシアチブを通じて、ブロックチェーンの教育と研究をけん引しています。業界や政府のパートナーと協力して、ワイオミング州をブロックチェーンイノベーションのハブとして位置付けながら、金融、サプライチェーン、デジタルIDのアプリケーションを探求しています。
IO Researchハブ
BTLの他にも、2つのIO研究拠点が設立されています。1つは英国のエディンバラ大学にあり、Aggelos Kiayias教授が主任を務めています。もう1つは米国のスタンフォード大学にあり、David Tse the Thomas Kailath and Guanghan Xu工学教授が率いています。
両ハブともにブロックチェーン分野における基本問題に取り組み、ブロックチェーン業界の科学的知識の体系化を大幅に進め、この新生分野における研究の基本的な必要性を促進します。ここでは学際的なアプローチを採用し、研究者にブロックチェーン業界と協力する機会を提供し、ブロックチェーン技術の知識と視点を強化します。
組み込み研究者
社内チームに加えて、IORは世界中の大学の選抜されたグループと緊密に協力し、それぞれの分野のリーダーである20人以上の組み込み研究者と提携しています。これらのパートナーシップにより、IORは分野を超えた最先端の専門知識を統合することができ、ブロックチェーン科学における組織横断的な研究とイノベーションを促進します。組み込み研究者の協力を得ることで、IORは研究のインパクトを強め、世界的な課題に対処するアプリケーションに焦点を当てつつ、ブロックチェーン技術の実用的および理論的進歩を橋渡しします。
アテネ経済商科大学(ギリシャ)
- Evangelos Markakis:情報学専攻准教授、理論グループメンバー
- Spyros Voulgaris:情報学部コンピュータサイエンス助教授、ピアツーピアネットワーキング専門家
アテネ経済商科大学(AUEB)は、革新的なブロックチェーンアプリケーション研究と分散型システムのセキュリティと効率の向上に焦点を当て、世界的なブロックチェーンの進歩に貢献しています。
エジンバラ大学(上記参照)
- Philip Wadler、FRS:エディンバラ大学の理論計算機科学教授で、プログラミング言語のIORエリアリーダー
- Markulf Kohlweiss博士:セキュリティおよびプライバシー研究グループ准教授、ZK-Labディレクター、ゼロ知識のIORエリアリーダー
コネチカット大学(米国)
- Alexander Russell:コネチカット大学のコンピューターサイエンスおよび数学教授であり、アルゴリズムのIORエリアリーダー
ブロックチェーンをさまざまな学術プログラムに統合することで、コネチカット大学は、学生や研究者が成長するブロックチェーンエコシステムに貢献できるようにすることを目指しています。
オックスフォード大学(英国)
- Elias Koutsoupias:コンピュータサイエンス教授、ゲーム理論のIORエリアリーダー
オックスフォード大学は、研究グループやパートナーシップを通じて、ブロックチェーンの社会的、経済的影響とその技術的基盤を研究し、世界的な政策やイノベーションに影響を与えています。
浙江大学(中国)
- Bingsheng Zhang:暗号、検証可能な電子投票(e-voting)、ゼロ知識証明を専門とするセキュリティ教授
浙江大学は業界パートナーと協力して実用的なブロックチェーンアプリケーションを開発し、中国をはじめとするブロックチェーン技術の急速な発展に貢献しています。
現在の研究プロジェクトとハイライト
エディンバラ大学とのEDIとZK Labのイニシアチブと並行して、研究部門は短期から中期の専門プロジェクトを複数監督しており、それぞれがブロックチェーン技術に関する個別のトピックに取り組んでいます。AUEBでは、Cardanoの公開またはサブスクライブフレームワークを作成するプロジェクトが進行中であり、クライアントがトピックサブスクライブに基づいて特定のノードサブセットにイベントを配信できるようにすることで、より効率的な通信を可能にします。
ユトレヒト大学は、スマートコントラクトの認証コンパイラを開発するPhDプロジェクトを実施しています。これにより、コンパイルされたPlutusコードがそのソースを正確に反映していることに対するマシンチェック可能な証明が生成できるようになり、スマートコントラクトの動作に対する信頼が高まります。一方、デルフト工科大学では、Agdaにおける実用的なHaskellコードを検証するためのagda2hsを拡張するプロジェクトがあり、ユーザビリティの向上と理論的正確性のより深い探求に焦点を当てています。
コネチカット大学では、ブロックチェーンの効率性を大幅に向上させる可能性を秘めたプルーフオブユースフルワーク型フレームワークにおける制約ベースのローカル検索アルゴリズムに関する研究を行っています。さらに、ハーバード大学、ボストンカレッジ、オックスフォード大学との共同で行われている「Colossal Auction(巨大オークション)」プロジェクトは、ユニークで価値の高いアイテムに適用されるオークション理論を探求しています。ここでは、Colossal Laboratories and Biosciencesの絶滅防止研究の一環である、マンモスの権利の販売案が取り上げられています。この学際的な取り組みは、入札プロセスの経済理論を活用し、科学的イノベーションのための新しい資金調達モデルを模索しています。
このようなプロジェクトは、研究室やハブのより基本的なパートナーシップアプローチと並行して、世界をリードする研究者と協力して優先的な研究分野を調査するための、よりダイナミックで実用的な方法を提供します。
Cardanoビジョン
IORは、Intersectや、Cardanoエコシステムにおけるその他の主要な技術貢献者と緊密に協力して、今後5年間にわたるCardanoの進化のビジョンを形成するために、4大陸以上の主要機関の学者やエンジニアのネットワークを形成します。
今後5年間にわたってブロックチェーンをリードし続けるために、Cardanoはスケーラビリティ、相互運用性、サステナビリティに焦点を当てた堅牢な研究とイノベーションアジェンダを必要としています。これにはOuroboros Omegaのようなコンセンサスアルゴリズムの進歩、ゼロ知識証明、量子耐性暗号、スマートコントラクト機能の強化などが含まれます。目標は、イノベーションを推進し、安全性と効率性の基準を高く保ちながら、インパクトを生み出すためのグローバルな社会的課題に取り組むことです。
ブロックチェーンの11の原則に基づき、9つのテーマ別重点分野を掲げるCardanoビジョンは、ブロックチェーンの約束を世界に届けるための野心的な研究ロードマップを提示しています。テーマ別の各フォーカスエリアは、重要な問題に取り組み、技術の進歩を推進し、最終的にはCardanoプラットフォームの能力、サステナビリティ、世界的な影響力を強化するために選択されています。
この真のグローバルビジョンを実現するには、世界をリードする学術ブロックチェーンネットワークが必要です。IORとその受賞チームは、コラボレーションを促進し、最先端の研究イニシアチブに注力することで、研究コミュニティにおいてブロックチェーン技術の未来を前進させる上で重要な役割を果たしています。200を超える公開済み論文からなるIORライブラリーの認知度の高まりにより、Cardanoエコシステム内のスタートアップ、イノベーター、エンジニアにはコア機能とアプリケーションを商業化するための基礎IPが提供され、Cardanoのリーダーシップは強化され、ブロックチェーンの約束が世界に広まります。
関連情報
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Intersect Research Working Group
IORの詳細、および研究論文ライブラリーの詳細
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