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研究概要パート3:トークン、ステーブルコイン、手数料

IOGの研究により、の実装をマルチ資産のサポート、ステーブルコインの実装、そして手ごろな手数料がCardanoで実現

2022年 7月 7日 Olga Hryniuk 8 分で読めます

研究概要パート3:トークン、ステーブルコイン、手数料

以前の記事では、Cardanoの革新的なEUTXOモデルと、これがいかに表現力の有るスマートコントラクトをCardanoで実現するかについて説明しました。今回は、マルチ資産サポートとさまざまなユーザー定義のトークンを可能にする研究に注目し、Babelフィーのメリットについて紹介します。

マルチ資産サポート

イーサリアムはさまざまなユーザー定義の資産(トークン)を作成する機能を提供することで知られています。しかし、イーサリアムのトークン標準は台帳で直接サポートされておらず、カスタムコードが繰り返し必要とされます。これにより、トークンコードはシステム自体の一部となる代わりに複製され、適用されることから、複雑性が増し、余計なコストがかかり、非効率になります。ここに人的エラーを招く隙が生まれ、金銭的損失につながる可能性のあるバグを生み出すことにもなりかねません。

IOGの研究者による研究論文「UTXOma: UTXO with Multi-Asset Support(UTXOma:マルチ資産サポートを備えたUTXO)は、ISoLA 2020で発表されました。この論文は、ミントポリシーと呼ばれるコントラクトスクリプトを使った幅広いユーザー定義トークンの作成について論じています。

ここでは、ビットコイン式のUTXO台帳に基づくユーザー定義の資産作成の代替設計を検討し、UTXOモデルの拡張を提案します。このモデルでは、単一の暗号資産のアカウンティング構造が、トークンバンドルと呼ばれる無制限の数のユーザー定義のネイティブトークンを管理する新しい構造に置き換えられます。

この新モデルでは、トークン作成はミントポリシースクリプトによって制御されます。ビットコインのバリデータースクリプトと同様に、コンピュテーションの表現力に制限のあるドメイン固有言語を使用します。これで、ビットコインのセキュリティが活かされ、カスタム資産の作成と転送に対して軽量で低コストなアプローチとなります。

論文「Native Custom Tokens in the Extended UTXO Model(拡張UTXOモデルにおけるネイティブカスタムトークン)」は、ユーザー定義のネイティブトークンを備えたEUTXOモデルの一般化を提案します。本論文では、UTXOmaのネイティブトークンと、EUTXOモデルにより提案されたUTXO台帳に基づく表現力豊かなスマートコントラクトの相乗効果について検討しています。その結果、ミントポリシーの表現力が高まり、マルチ資産EUTXO台帳に、ステートマシンに基づく多様なコントラクトを直接マッピングできます。本論文はこのマッピングの正しさを公式に確立しました。

Djedステーブルコイン

カスタムトークンのほかに、IOGはCardanoにステーブルコインを実装する研究を進めました。論文「Djed: A Formally Verified Crypto-Backed Pegged Algorithmic Stablecoin(Djed:形式手法で検証され、暗号資産に裏付けられたペッグ付きアルゴリズム型ステーブルコイン)」は、2021年に発表されました。

この論文は、スマートコントラクトを価格の安定化に利用した、アルゴリズム型の設計に基づくステーブルコインコントラクトを紹介しています。これは、分散型金融(DeFi)環境で非常に役に立つ機能です。Djedは自律的な銀行として機能します。ベースコインのリザーブを保持しながら、ステーブルコインとリザーブコインをミント(発行)およびバーン(廃棄)します。コントラクトは、ステーブルコインの売買、リザーブの使用、手数料の設定によってステーブルコインのペッグをターゲット価格に維持します。手数料はリザーブに蓄積されます。

Djedは現在COTIに実装されています

Babelフィー

Cardanoのマルチ資産EUTXOモデルは、別の研究「Babel fees(Babelフィー)」を導きました。Babelフィーは、Cardanoでトランザクション手数料をADA以外のコインで支払うことを可能にするメカニズムです。この論文は、ACNS 2022に受理され、6月に掲載されました。

ブロックチェーントランザクションには実行手数料がかかります。ネットワークの安全性を確保するために、手数料は通常、たとえばCardanoにおけるADAなど、対象となるブロックチェーンのネイティブ通貨で支払われます。しかし、ユーザーが所持する他の価値あるトークンで手数料を支払うことができれば、利便性が高まり、相互運用性にもメリットがあります。IOGは、Babelフィーに関する論文で、これがいかに可能であるかを説明しています。

EUTXOモデルやカスタムネイティブ資産など、複数の革新的なCardanoの機能が組み合わさってBabelフィーを可能にしました。Cardanoのマルチ資産サポートによって、トークン作成を台帳のネイティブ資産として扱うことができます。すなわち、新しいユーザー定義のトークンを(十分な数のユーザーが勝ちあると認めた場合)、Cardanoの主要通貨であるADAと同じようにトランザクション手数料の支払いに使用することができます。

ラムダ研究者にしてIOGのPlutusアーキテクトであるManuel Chakravartyは次のように語っています。

〉Cardanoは、特定の関心を持つコミュニティが、Plutusを使用して自らが作成した新たなカスタムトークンをめぐって形成されることを推奨しています。こうしたコミュニティのメンバーは、大量のADAを持っていなくても、カスタムトークンで十分な流動性を持つ可能性があります。こうしたコミュニティをサポートするために、私たちは彼らが自分のトークンでネットワーク使用量を支払えるようにしたいと思っています。

ユーザーがトランザクション手数料をADA以外のトークンで支払いたい場合、カスタムトークンを提供しながらもADAの責任が発生するBabelフィートランザクションという方法をオファーすることによって可能になります。このトランザクションを検証するブロック生成者は、ADAとオファーされたトークンの直物取引を事前に宣伝された為替レートで設定して、このオファーを受け入れることができます。次にブロック生成者は、オファーされたトークンを交換で受け取りながら、手数料をADAでカバーする第2のトランザクションを作成します。台帳ルールを適切に拡張することにより、負債用トランザクションとそのマッチングトランザクションは、台帳にグループとして受け入れられることになります。このスキームの長所は、ADAをステーキングしているユーザーが、ステーキング報酬を通常通りADAで受け取れることです。

Manuel Chakravartyはさらにこう述べています。

〉CardanoへのBabelフィー実装へ向けた次のステップは、研究論文に基づいてCIP(Cardano改善提案)を作成することです。初回バージョンができ次第、コミュニティに提示して話し合う予定です。

マルチ資産とスマートコントラクトのサポートは2020~21年にCardanoに導入され、台帳は無数の分散型アプリケーション(DApp)を作成するための関数型環境となりました。現在1,000を超えるプロジェクトがCardanoに構築中であり、IOGの研究開発はCardanoのスケーリングと堅実な最適化に重点を置いています。次回のブログでは、Cardanoのスケーラビリティと相互運用性を推進する研究に着目します。