インセンティブ付きテストネット(ITN)は12月半ばから稼働しています。これにより、ステークプールに関する興味深い見識が得られることになり、この結果、IOHKのエンジニアたちはもちろん、ステークプールをセットアップした企業や個人、そしてADA保有者たちのブロックチェーンに関する知識は急速に高まっています。重量級のHaskell開発者たちへの道を拓くためにRust言語による迅速な開発チームを使用するという戦略はここで実を結びました。IOHKは現在次の段階であるHaskellテストネットへと進むために、プロトコルの使用 - そして誤用 - に関する膨大な数の情報を得ています。それとともにCardanoコミュニティは、サポート、実験、信頼のおけるフィードバックを提供できるというその能力を提示してきました。
12月13日にITNがライブ配信される前に、158のステークプールがCardano財団に登録を済ませ、セットアップを行っていました。しかし3日のうちに、その数は325まで急増したのです。1月末までに総プール数は600を超えました。去年IOHKのトップであるチャールズ・ホスキンソンが1,000のステークプールという話をした時点では訝しい思いをしたものですが、現在十分その数が見込める位置にいます。
Scott Darby’s world of stake poolsのアニメーションに示されている通り、ノードはブラジルから南アフリカ、オールトラリアにかけて、また日本や中国からヨーロッパを通りサンフランシスコまで広がっており、果てはノルウェーのボードー、ファウスケなど、北極圏にまで達しています。
このスピーディな動きは多くの暗号通貨関連メディアで言及されています。CryptoSlateはテストネットが1週間以内にEOSやTronの10倍のプール数に達したと指摘しています。NewsBTCはヘッドラインで分散化が機能することを示すCardanoテストネットの成功とまとめています。ヘッドラインはもちろんすべてについて語っているわけではなく、その行方は紆余曲折に満ちています。しかし、目下のところ好調に進んでおり、今日までに施した改良について前向きなフィードバックを受けています(改良は今後も継続)。これはすなわち、ネットワークの成功は単に私たちの仕事に拠るものではなく、ステークプールオペレーターの仕事にかかっているということです。そこで、分散型ネットワークに命を吹き込んだステークプールを取り上げ、ステークプール運営のビジネスについて探ってみましょう。
ステークプールのツール
Cardanoコミュニティの尽力により、誰もがシステムの働きを掘り下げ、何が起こっているかを探ることができます。Cardaniansグループがプールとともに運営するAdaPoolsには、IOHKのGitHubレジストリーからのデータを基盤とし、分散化のマッピング、飽和状態の通知、特定のプールがフォークされメインブロックチェーンから外れるかどうかのテストといったツールとともにダッシュボードが設けられています。StakeLoveが運営するCardano Pool Toolは、プール名から投資リターン、委任されたADAまで16の要素でランク付けしたステーキングプロバイダーの一覧表です。
こうしたツールに示される情報は、ブロックチェーンデータを基にしています。さらに、ブロックチェーンが持つ分散化体質により、ステークプールオペレーターのアイデンティティは彼ら自身が自プールのウェブサイトやソーシャルメディアを通じて自ら明らかにしない限り、知ることはできません。したがって、初期における最大のプール、どのIOHKプールよりも倍を超える73700万ADAをステークとして擁していたプールはティッカー名をZZZとしていましたが、これは当初、単純にブロックチェーンから抽出されたIDでした。ZZZはまもなく複数のプールに分裂し、日本を拠点とするTripleZであると明かしました。
自分のADAを委任する場合、プール運営者についてよく知りたいという人もいれば、そうではない人もいるでしょう。これもIOHKが - そしてADA保有者が、というのもCardanoは分散化され次第彼らのネットワークとなるためですが - ITNから感触を得たいと狙うことの1つです。TelegramやCardanoフォーラムなど、これについて議論しているフォーラムは多々あります。テストネットにインスパイアされた議論を見るのは興味深いもので、その多くはIOHK内部でコミュニティ主導型の分散型ネットワークを構築するベストな方法、そしてインセンティブが果たす役割について行われている議論を反映しています。コミュニティの貢献と個人的利益によるモチベーションのバランスは長期にわたり議論されており、コミュニティ自身による秩序維持の程度に関しても然りです。これは新たな領分であり、コミュニティを通じて、ブロックチェーンの社会的ダイナミクスがいかに展開するかについて、また、プロトコルがどの程度敵対的行為を防ぐ責任を果たすべきかについての私たちの推論を検証できるのです。
コミュニティおよびオペレーターの反応
技術的な知識獲得とともに、コミュニティのフィードバックおよび意見を集めることは、メインネットにおけるShelleyデプロイに向けたインセンティブ付きテストネットの必須要素です。ステークプールがテストネットへ参加するためにノードをセットアップする前ですら、ユーザーからのフィードバック提供は始まっていました。CardanoアンバサダーのMaxは、自身のGerolamoブログでテストネット公開に先立ち3度にわたって「What the pool?(プールとは何か)」というインタビューを配信し、以来現在までに4回目も配信しています。Cardano Effectも4人のオペレーターにインタビューしています。また、別のウェブサイトStake Pool Showcaseでは以下の5つの設問を設け、プールオーナーに登録を呼びかけ自らのプールを紹介するよう促しています。
- プールの運営者は誰ですか
- Cardanoプロジェクトにおけるあなたの履歴は
- あなたのプールの設定は
- プールに関する今後のプランは
- あなたのプールに委任するメリットは
回答にはオペレーターの幅広さが示されています。ステークのサイズに関しては、2月までにリストされた9プールは1ADAから5000万ADAの幅に開いています。8プールは1~2人のコンピューター業界の人物により運営されており、ほとんどがCardanoとのかかわりを2017年まで遡ります。3プールが名前を明かしておらず、1つは以下のように記しています。「このプールは匿名で運営されています。これは私への影響を防ぐためです。これはセキュリティの一環で、プールへの攻撃をより困難にするためです」。また拠点は、フランス、ホノルル、ロンドン、マンチェスター、ノルウェーです。
自身の経験について情報を提供すると同時に、その多くがハードウェアの設定をリスト化しており、テストネットに期待できることを理解しているようです。「もちろん、テストネット内におけるプール運営の安定性ははソフトウェアの安定性にかかっています。それでも私は最善を尽くしますし、今後コードの安定性も確実に改善されることでしょう」。また別の人物は次のように述べています。「私たちはずっと設定を調整し続けて、ここ数エポックでとても良好なアップタイムを達成しました - ずいぶん寝不足になりましたよ」
あるオペレーターは暗号通貨を運営する際の電力消費が気がかりでした。「全般的に、日ごとのオペレーションでは35~45ワットの消費にとどまっており、喜んでいます。環境にやさしいですね」。また、別のオペレーターは去年IOHKサミットで紹介されたわずか10ワットで稼働するRock Piシングルボードコンピューターでバックアップサーバーを稼働させています。テストネットの先を見据えたあるプールオペレーターは、Voltaire期のガバナンスにおける課題を挙げ、スマートコントラクトに活路を見出しています。「金融系のDSL(ドメイン固有言語)用にはMarloweがありますが、ガバナンスの問題に役立てられる法律系DSLがないのはなぜですか」
TelegramのCardano Shelley Testnet & StakePool Best Practice Workgroup(Cardano Shelleyテストネット&ステークプールベストプラクティスワークグループ)はオペレーターがヒントを得られる場として挙げられています。
まとめとして、AdaFrogのKyle Solomonがこのブログに語った言葉を紹介しましょう。「ステークプールオペレーターはとても大変ですが驚くほどの充実感を得られます。プールオペレーターとして私が学んだ最も重要な点と言えば、第1にプロトコルはIOHKがCardanoの目標としてもともと定めた製品レベルに非常に近いものになっているということ、そして第2にCardanoコミュニティはまったくもって間違いなく素晴らしいということです。たとえお互い競争関係にあったとしても、各プールオペレーターはお互いに助け合っています」
本3部構成シリーズの次回ポストでは、ステークプールの経験とそこで学んだことについて深く掘り下げます。
IOHKのあらゆる行動と同様に、ここでもADAの使用方法に関してアドバイスを与えることはできず、これらのプールを推奨するものではありません。通常通り、忌憚ないご意見をお聞かせください。
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