多様性とモジュラー設計に向かうCardanoノードの進化
Cardanoネットワークはサステナビリティとスケーラビリティの強化に向けて、多様性とモジュラー型ノードエコシステム設計へ舵取り
2025年 6月 6日 10 分で読めます
2025年以降のCardanoエコシステムの成熟を見越したとき、コアノードソフトウェアの改良はネットワークインフラ強化に向けた優先事項に挙げられる。さまざまなチームによってさまざまなプログラミング言語で構築された、複数の多様なノードの実装を導入することで、ネットワークの回復力を向上させ、システムリスクを軽減し、分散性の原則をよりよく反映させる。
多様性の重要性
誰もが1つのツールに依存する複雑なシステムというものを想像してみて欲しい。このツールにバグやパフォーマンスの不具合が生じたら、システム全体がダメージを受ける。複数のノードバリアントは、1つの実装に障害が生じたり敵対的になったとしても、その他が稼働し続けることができ、ネットワーク全体の安定性とセキュリティが強化される。
これは単一障害点を防ぐためだけでなく、イノベーションにもかかわる。異なるチームがさまざまなユースケース、プラットフォーム、パフォーマンスプロフィールに合わせてノードを最適化することで、より健全で順応性の高いエコシステムが育まれる。
Cardanoノード向けの主要な改良プラン
Input | Output (IO)は、Cardanoノードの安定性を強化し、ステークプールオペレーター(SPO)その他の運営コストを削減し、スケーラビリティを向上させるための複数の改善案を提示している。これには以下が含まれる。
- LSM(Log-structured merge)ツリー:これは、ノードを実行するためのメモリー要件を削減するために設計されたメモリー管理アップグレードだ。LSMは、UTXOセットなどのデータ構造をディスクに移行することによって、Cardanoが最適化したハードウェア上でノードを実行しながら、数十億ものユーザーや、大幅にサイズアップしたUTXOセットへのスケーリングの可能性をもたらす。これは段階的に計画されており、まずLMDBを使用してUTXOをディスクへ移動し、次にカスタムLSMライブラリーへ移行させ、最後にその他の移行すべき大規模なステートコンポーネントを特定する。
- 修正ステークプールインセンティブスキーム:特に小規模な単体のステークプール運営に、より公正なインセンティブを提供するために、現行のインセンティブ構造の修正案を検討中である。目的はSPOの多様性を促進し、新しいプールがエコシステムへ参入しやすくすることだ。
- グラインド攻撃対策:このイニシアチブは、グラインド攻撃(リーダーたちが将来のリーダー選定の操作を企てる)に対するOuroborosコンセンサス層の強化に焦点を当てている。その目的は、正直な参加者への影響力を最小に抑えながら攻撃者にとっての難易度を上げ、ひいては堅牢な守備を維持しながら決済時間およびファイナリティの向上につなげることだ。η-nonceを計算するための暗号学的代替手段や、推奨されるセキュリティパラメーターKの更新も検討されている。
- 階層的価格設定:階層的価格設定モデルは、ピークタイム中のネットワーク輻輳および予測不可能なトランザクション遅延に対処するために提案されている。ユーザーは、手数料、ブロックへの取り込み度合い別に設定されたさまざまなトランザクションチャネル(スタンダード、プライオリティ、アシュアード)を選択することで、タイミングとコストの予測可能性を高めることができる。
ノードへのアクセス可能性を高める:ローカルノードサービス
これは、サードパーティAPIプロバイダーに依存せず、Cardanoブロックチェーンと完全にトラストレスなインタラクションを望むユーザーのために考えられた新たなアプローチだ。
計画されているローカルデスクトップノードはメインネットピアと直接接続している軽量フルノードとして機能することになる。ローカルインデックスサービスを含み、ユーザーに関係のあるデータのみを保存して、メモリーとストレージ要件を最小に抑える。ユーザーはどんなウォレットもローカルノードに直接接続でき、トラストレスな操作と、現在データAPIサービスに依存しているウォレットとの互換性を、単に接続パラメーターを変更するだけで確保できるようになる。この開発はデータAPIサービスの分散化の取り組みと関連しており、SPO、さらには個別のデスクトップクライアントがデータプロバイダーとして機能する可能性を視野に入れている。
プロジェクトAcropolisによるノードの多様性の実現
ノードの多様性を真に育成し、開発を加速させるには、アーキテクチャーをシフトさせることが不可欠だ。形式手法と安全性における強みにより、Haskellは初期実装において理想的な選択肢となったが、単一言語に依存しての開発はこの言語に不慣れな開発者にとって障害となり、ノード開発における中央集権化に繋がりかねない。
プロジェクトAcropolisは、Caryatidフレームワークを基礎とし、Rustモジュールとメッセージパスを使用して、Cardanoノードをモジュラー型アーキテクチャーに変容させることにより、これに対処することを目指している。 このイニシアチブは、ノードとアプリケーションをシームレスにマージできるオープンで適応性の高い分散型コードベースというビジョンを念頭に、Cardanoノードの柔軟性を大きく高め、アプリケーションへの統合を簡単にするためのものだ。この新しいアーキテクチャーは、DB SyncやOgmiosなど、現行ノードアドオンとの統合の難しさ、高いリソース要件、そして、開発を中央集権化し、キーパーソンのリスクをもたらし、水平的スケーリングを複雑化するノードの融通性のなさに対処する。
プロジェクトの短期目標には、完全なHaskell台帳を必要とせずに有用なチェーン追従データを提供するオープンクライアントインターフェイスを備えたデータノードの開発、一般的なDB Sync機能のRustコンポーネントへの置き換えが含まれる。このアプローチは、開発者の使用性やエコシステムのアクセス可能性を向上させ、メモリーやリソース要件を抑え、同期やクエリを高速化し、スケーラビリティを強化し、コードの多様性と柔軟性を高める。Acropolisのロードマップは、2025年Q1~Q2におけるデータノードの構築から始まる。そこからバリデーションとブロック生成を追加して2025年Q3~Q4に完全なPraosノードとし、2026年にはLeiosのような将来のスケーリングソリューションに取り組む予定である。
最近の進捗:ノード多様性ワークショップ
2025年4月にパリで開催されたノード多様性ワークショップでは、Cardano財団、Harmonic Labs、IO Engineering、Sundae Labs、Tweag、TxPipeら諸団体が一堂に会した。3日間にわたって、彼らは成功や洞察を共有し、新しいノード実装やテストに関する課題に対処した。これには、現在Cardanoトレジャリーから開発資金を調達しようとしているプロジェクトの1つ、Amaruに関する議論も含まれる。ワークショップはオープンスペーステクノロジー方式で実施され、異なるノード実装間で一貫した動作を確保するための適合性テスト、追跡およびオブザーバビリティツールの使用、正準台帳状態のような標準化したフォーマットの必要性をめぐるおよそ25のセッションで構成された。参加者はまた、決定論的システム、CIPのような知識共有イニシアチブ、Cardano Blueprintも検討した。ワークショップは、プロトコルと仕様を強固にするうえでのノードの多様性の重要性と利点を強調した。
今後の展望と参加方法
ワークショップの勢いは、具体的なアクションアイテムを推進している。これには、明確なガバナンスアクションのデポジット返還に関するCIPのドラフト作成、証明書のクリーンアップ、および正準フォーマットの提案が含まれる。API仕様を形式化し、ブロックツリージェネレーターや「敵対ノード」のような異なるノード実装をテストするためのツールを構築する取り組みが進行中だ。
目的は、この協調的取り組みを継続し、Cardanoのコアコンポーネントに携わるさまざまなチーム間で、知識の共有を確保することだ。Cardano Blueprintは、このアイデアを推し進めるイニシアチブである。
議論を継続するため、コミュニティはCardanoフォーラムの新しい「ノード開発サブカテゴリー」に参加することが可能になる。このワークショップレポートはその最初の一歩だ。このカテゴリーは、継続的な議論のための恒久的で検索可能なスペースとなることが想定されている。
さらに、コラボレーションを維持し、各チームが進捗状況や課題を共有できるように、定期的なオンライン「Show and tell」セッションを開始する計画がある。これらのセッションは、簡潔で高レベルな情報共有の機会となることが想定されており、より詳細な共同作業は別途企画される。
貢献したり更新情報を得ることに興味のある開発者やユーザーは、現在行われている議論やイニシアチブにぜひ参加されたい。
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