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拡張UTXOモデルにおけるネイティブトークン

Cardanoネイティブアセットの処理方法と、その重要性の概要

2025年 5月 9日 Olga Hryniuk 8 分で読めます

拡張UTXOモデルにおけるネイティブトークン

ブロックチェーントークンは、支払いの送受信、分散型アプリケーション(DApp)サービスへのアクセス、価値の保存や移転など、さまざまな目的に使用できる。トークンの有用性は、そのユースケース、市場、またはトークンを発行あるいは使用するコミュニティによって決定される。トークンには以下がある。

  • 代替性:報酬ポイントや同通貨の単位など、同一かつ交換可能
  • 非代替性(NFT):コレクティブルやクレデンシャルなど、一意のアイテムを表すことが多い

特定の目的のために作成されたトークンは、「カスタム」または「ユーザー定義」と呼ばれることが多い。これには、新しい暗号資産の発行、アクセス権の表示、アプリ内トランザクションの有効化などが含まれる。

多くのブロックチェーンにおいて、カスタムトークンの作成には従来からスマートコントラクトの作成、デプロイが必要とされる。スマートコントラクトは、トークンの動作や、これを送信、作成(ミント)、廃棄(バーン)する方法を定義するコードである。

このアプローチは強力ではあるが、こうしたユーザー定義トークンは非ネイティブとなる。つまり、基盤となるブロックチェーンの基本構造に直接サポートされているわけではない。ここから非効率性、高コスト、複雑さの増大につながる可能性がある。

基盤に組み込まれたネイティブトークン

Cardanoの拡張UTXO(EUTXO)モデルは、ビットコインのUTXO設計に基づいて構築されており、トランザクションの決定性を維持しながらスマートコントラクトのサポートを追加したものだ。EUTXOは、共通のグローバルステータスに依存するアカウントベースのモデルとは異なり、インプットとアウトプットが明確に定義されたトランザクションを処理し、並列化と結果予測を可能にする。

CardanoのEUTXOモデルの主な利点は、カスタムトークンをネイティブにサポートしていることだ。これは、開発者が複雑なスマートコントラクトに依存することなく、独自のトークンを作成および管理できることを意味する。台帳はこれらのトークンをネイティブ資産のADAとそん色ない資産として扱うため、プロトコルレベルで直接多くのトークンタイプを安全かつ効率的に処理できるようになる。

ネイティブトークンの重要性

Cardano台帳にトークン機能を直接統合することで、従来のスマートコントラクトベースのアプローチに比べていくつかの重要な利点が得られる。

  • 効率化とコスト削減:ネイティブトークンは台帳レベルでサポートされているため、作成、送信、管理にカスタムコントラクトロジックは必要ない。これによりトランザクションサイズが縮小され、スループットが向上し、手数料が大幅に削減される。スマートコントラクトで構築されたトークンと比較して、操作は高速で、リソース消費量は少ない。
  • セキュリティとシンプルさ:ネイティブトークンはADAと同じセキュリティプロパティを継承する。監査や保守が必要な追加的コントラクトロジックがないため、脆弱性や悪用のリスクが軽減される。これにより、ネイティブトークンはDAppでよりシンプルかつ安全に使用できるようになる。
  • 開発者の経験と互換性:ネイティブトークンの作成と管理は、カスタムコントラクトを作成してデプロイするよりも簡単だ。ネイティブトークンは、ウォレット、ツール、幅広いエコシステムとシームレスに統合され、ADAと同じように動作し、プラットフォーム全体でADAと同等の扱いを享受する。

マルチアセットサポート

CardanoのEUTXOモデルにおけるマルチアセットサポートにより、トランザクションは単一のアウトプット内で複数タイプのトークンを処理できる。ネイティブの暗号通貨に限定されるのではなく、各トランザクションアウトプットには「トークンバンドル」(異なる数量のさまざまなトークンを含む構造化されたコレクション)を含めることができる。これにより、ADAや複数のカスタムトークンなどの複数の資産を1つのトランザクションで送信することが可能になる。

これらネイティブトークンのミントとバーンは、鋳造ポリシースクリプトを通じて管理される。スクリプトでは、特定のトークンをミントまたはバーンできる条件が定義される。トランザクションにトークン操作が含まれている場合、台帳は関連するスクリプトをチェックして、アクションが確立されたルールに従っているかを検証する。スクリプトはEUTXOフレームワーク内で動作するため、モデルの精度と決定性の恩恵を受け、すべてのトークン操作にわたって明確で予測可能な動作と強力な監査可能性が保証される。

ユースケース

ネイティブトークンは、安全なオンチェーンロジックとカスタムアセット作成の柔軟性を組み合わせることで、幅広い適用が実現できる。以下に例を挙げてみよう。

  • デジタルコレクティブルとクレデンシャル:NFTは、Cardano台帳のセキュリティと透明性の恩恵を受け、デジタルアート、ゲーム内アセット、イベントチケット、さらには学術資格まで、それを所有していることを示すことができる。
  • サプライチェーンと資産の追跡:トークンは物理的なアイテムを表し、全サプライチェーンにわたってその足跡を追跡できる。ネイティブトークンはスマートコントラクトなしで一意に定義および管理できるため、このアプローチはより効率的で安全となる。
  • アルゴリズム型ステーブルコイン:ネイティブトークンは、外部の参照情報に基づいて価値が決定される資産を表現できる。鋳造ポリシーのスクリプトは、これらのトークンを安定させるためのルールを定義し、自動化された通貨政策と、より堅牢な分散型金融(DeFi)の基礎要素を可能にする。
  • 役割と権限のトークン化:分散型システム内の役割(オペレーター、バリデーター、参加者など)を、固有のネイティブトークンで表現することもできる。トークンを保有することで特定の操作を実行する権限が付与され、モジュール式の譲渡可能なシステム設計が実現する。
  • アクセス制御とライセンス:トークンによって、サービス、イベント、データセットへのアクセスを許可することができる。例えば、特定のトークンを保有することで、DAppのプレミアム機能のロックを解除したり、トークンゲートコミュニティへのエントリーを付与したりすることができる。
  • 分散型ガバナンス:ネイティブトークンは、意思決定プロセスにおける議決権またはステークを表すことができる。これにより、透明性と監査可能な参加を伴うオンチェーンガバナンスシステムが可能になる。

まとめ

EUTXOは、コアプロトコルにネイティブアセットを埋め込むことで、セキュリティやパフォーマンスを損なうことなく、複雑さを軽減し、ブロックチェーンの可能性を拡大し、開発者とユーザーがCardanoをより利用しやすくなる、回復力とスケーラビリティを有する基盤を確立する。

ネイティブトークンの詳細