2025年、完全なコミュニティガバナンスの下でCardanoが進化を続ける中、スケーラビリティは未だ最優先事項の1つである。
Ouroboros Leios(ウロボロスレイオス)は、CardanoのOuroborosコンセンサスを大幅に再設計し、スケーラビリティとスループットを飛躍的に向上させ、Cardanoを現在の限界をはるかに押し上げるように設計されている。Cardanoの長期的なスケーリングエンジンとして、Leiosは大規模な普及、高度な分散型金融(DeFi)、グローバルな分散型アプリケーション(DApp)インフラへの道を開きつつ、Cardanoの代名詞であるセキュリティと分散性を維持する、画期的なアップグレードだ。
Ouroborosの発展
OuroborosプロトコルファミリーはCardanoブロックチェーンの機能を拡張し続けてきた。Ouroboros ClassicからPraos、Genesis、そしてそれ以降の各リリースは、セキュリティ、分散性、効率性を強化するために厳格な査読済み研究に基づいて構築されている。
これらの進歩により、Cardanoは科学的根拠に基づくブロックチェーン設計のリーダーとして位置付けられたが、予想されるユーザーベースの成長に対応するためには、さらなるスループットの改善が不可欠である。現行バージョンのOuroboros Praosの主たる枷となっているのは、ネットワーク容量やCPU性能などのノードリソースではない。むしろ、そのスループットはコンセンサスアルゴリズムの基盤となるデータと通信の依存性によって制限されている。これに対処するには、根本的に新しい設計が必要である。Cardanoの強力なセキュリティ特性を維持しながら、ネットワーク容量を追加的に解放できる設計である。
Ouroboros LeiosはOurogorosファミリーの最新の進化形であり、まさにこれを達成するように設計されている。
Ouroboros Leiosの目的
Leiosは、十分に活用されていないコンピューティングリソースとネットワークリソースを活用することにより、新しい並行ブロックチェーン構造と並列処理アプローチを導入する。
Ouroboros Praosは、ハードウェアによる制約ではなく、ブロックチェーンアルゴリズムの仕組みに内在する非効率性に起因するスループットの限界に直面している。
- ブロック拡散:Praosでは、ブロック拡散はブロック処理の総時間の一部を占めるのみとなる。Cardanoメインネットでは、ブロックは平均20秒ごとに生成されるが、実際のタイミングはランダム性によって異なる場合があり、2つのブロックが同じスロットに作成されることもあれば、ほんの数秒の間隔で作成されることもある。ブロック拡散には通常約5秒かかるため、システムは約75%の時間アイドル状態である。20秒間隔は伝播に十分な時間を提供し、妥当な確認速度を維持しながらフォークのリスクを低減する。
- 拡散中のリソース使用率:ブロック拡散中であっても、ほとんどのノードはほぼアイドル状態のままとなる。ブロックを実際に処理中のノードのみがCPUとネットワークリソースを使用することになり、これは、ブロックがネットワークを伝播するにつれて順次実行される。
Ouroboros Leiosは、ブロックチェーン構造とコンセンサスアルゴリズムを再設計することで、こうした非効率性に対処している。Leiosの主な目標は次のとおりである。
- データスループットの向上:現在のCardanoスループットは約4.4kB/sであるが、一般的なサーバーではピアあたり約900kB/sを処理できる。
- スクリプトのスループットを向上:ウォールクロック秒あたりのCPUミリ秒(ms/s)で測定される。現在のCardanoスクリプトのスループットは約2ms/sだが、単一のCPUコアのキャパシティは1,000ms/sである。
- トランザクションスループットの向上:データとスクリプトのスループットに基づいて算出された測定値。シミュレーションツールはノード並列化を活用することで、Leiosが1,000トランザクション/秒(TPS)以上の目標を提供できることを示している。
- 強力なセキュリティを維持:以前のOuroborosのセキュリティ特性を損なうことなく、高いスループットを達成する。これにより、最大50%のステークを支配する敵に対抗できる。
- 分散性の維持:分散性やプロトコルセキュリティ特性を損なうことなく、プロトコルが十分に効率的であることを保証する。
セキュリティの維持と分散化
Leiosは、スループットを大幅に向上させながら、Ouroboros Praosのコアセキュリティ保証を維持している。同じランキングブロック間隔(約20秒)を保持し、その間隔内で慎重にタイミング調整されたプロトコルの諸段階を使用する。この設計により、Praosのセキュリティ証明がLeiosに引き継がれ、敵対行為への耐性維持が保証される。エンドースメントしきい値など追加的なセーフガードは、有効なインプットブロックのみが最終台帳に寄与することを保証し、プロトコルの完全性を強化する。
LeiosはCardanoの分散化モデルも支持している。ノードリソースの使用量を増やし、現在Praosを使用しているオペレーターがスムーズに移行できるようにする。ステーク加重VRFメカニズムは引き続き機能し、参加者のアクセスを維持している一方で、プロトコルは引き続きナカモト型コンセンサスに従い、Cardanoのオープンで包摂的なネットワーク構造を維持している。
並行ブロックチェーン設計
従来のブロックチェーンは本質的にシーケンシャルである(つまり、各ブロックが前のブロックに直接依存する線形構造を持つ)が、ノードのネットワークは並列システムである。これにより、リソースの使用効率が低下し、シーケンシャルな性質によってデータの依存関係が生じる。
- ブロックBはブロックAに依存
- ブロックCはブロックBに依存
- 以下同
Leiosは、複数のブロックが互いに依存せずに同じレベルで存在できる、並行ブロックチェーン構造を導入している。これにより、並列処理を可能にするより複雑な依存パターンが作成される。
この並行構造では、
- 複数前のブロックに依存するブロックが存在し得る
- 一部のブロックが同時に処理される場合がある
- 全体の構造により、並列性が大幅に高まる
図1:線形および並行ブロックチェーン構造
並行ブロックチェーンにおけるトランザクション処理
並行ブロックチェーンはトランザクション処理に新たな課題を生み出し、次の2つの重要な問題が浮上する。
- 並行ブロックに競合するトランザクションが含まれている場合どうなるか
- 並行ブロックの結果を結合するときに台帳をどのように解釈するか
Leiosはこれらの問いに答えるためにシャーディングの使用に基づいてオプティミスティックアプローチを採用し、ほとんどの処理中のトランザクションが互いに独立していることを保証する。
- トランザクションの複数のブロックが並行処理される
- 各ブロック内でトランザクションは順番に処理される
- 結果が結合されると、ブロックは線形の順序になる
- これにより、すべてのトランザクションの線形順序が作成される
- 競合するトランザクションは検知され、処理される最初のトランザクションは保持され、後で競合したトランザクションは破棄される
このアプローチは、Cardanoの拡張UTXO(EUTXO)台帳に特に適している。EUTXOモデルは、UTXOの基本モデルをスマートコントラクトで拡張したものである。アカウントベースのモデルとは異なり、EUTXOは決定論的トランザクションを保証し、実行前にその結果を正確に予測できる。これは、トランザクションの依存関係が満たされている限りトランザクションを独立して検証できることから、スケーラビリティと並列処理に理想的である。
Leiosを使用すると
- EUTXOトランザクションは、すべてのインプットとアウトプットを事前に明示的に識別
- トランザクション間の依存関係は明確で完全
- 競合を容易に検出可能
- トランザクションは結果を変更せずに並べ替えることができる(依存関係が守られている場合)
仕組み
Ouroboros Leiosは、セキュリティを維持しながらトランザクションの並列処理を可能にする3層ブロックチェーン構造を導入している。Leiosは、1つのブロックタイプがすべてのタスクを処理するのではなく、タスクによって3つの専用ブロックタイプに分割する。
- トランザクションのインプットブロック
- 検証のためのエンドースメントブロック
- 順序付けのためのランキングブロック
この分離により、複数のインプットブロックを並行で作成して検証できるため、スループットが大幅に向上する。
プロセスはインプットブロックから始まる。インプットブロックは頻繁に作成され、検証のために最新の台帳ステータスを参照するトランザクションを運ぶ。エンドースメントブロックは、これらのインプットブロックをバンドルし、ステーク加重を加味した抽選を通じて選択されたノードから検証を取得する。十分なエンドースメントが集められると、エンドースメント証明書は参照されるインプットブロックの有効性を保証する。より低い頻度で生成されるランキングブロックは、間接的に複数のエンドースメントブロックを参照することによってトランザクションの最終的な順序を確立する。このアプローチにより、ノードはすべてのトランザクションを即時処理する必要なくブロックチェーンのステータスを適用できるため、セキュリティ保証を維持しながらスケーラビリティを確保できる。
トランザクション処理を順序付けと検証から切り離すことで、Leiosはリソース使用率を最大化する。トランザクションは継続的に処理され、ネットワークノードのアイドル時間が短縮される一方で、並列検証によりワークロードが効率的に分散される。
もっと知る
Ouroboros Leiosプロジェクトは現在研究開発段階にある。現在進行中の研究は、形式的検証、HaskellとRustのシミュレーション、ネットワークパフォーマンスモデリング、プロトコルの実現可能性と有効性を保証するためのインフラ整備に焦点を当てている。
ロードマップには、短期的に実世界の状況をより良く反映させるためのモデル調整、中期的にその結果得られた知見をより広範なCardanoツールへ統合すること、そして最終的にその知見が将来のコンセンサスアップグレードに影響を与え、効率性とスケーラビリティを向上させることが含まれている。
参照
執筆協力:William Wolff、Giorgos Panagiotakos、Nicolas Biri、Christian Badertscher
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