アフリカでCardano開発者のための新しいブレンド型学習体験
ナイロビの地で意欲的なブロックチェーン開発者を対象にHaskellとスマートコントラクトの開発を教授
2023年 12月 15日 11 分で読めます
はじめに
秋の間ケニアの教室に戻っていたIOG教育チームは、今週初め、新たなCardano開発者達のための閉会式に喜びとともに出席した。ABC(Africa Blockchain Center)と提携して2か月にわたり行われたCardano開発者トレーニングコースが成功に終わった今、ここで彼らの考えと物語を共有したいと思う。
今日、急速な進化を続けるテクノロジー界において、ブロックチェーンに精通した開発者の需要は2022年に急増し、供給はいまだ追いついていない。ケニアでは、世界の他の多くの地域と同様に、このような開発者の供給と業界の需要との間に大きなギャップが存在する。IOGでは、銀行口座を持たないアフリカの人々にこれを提供するというイニシアチブを続けてきた。この目的を達するためにアフリカ大陸が必要とするものは、Cardanoのようなプラットフォームだけでなく、その上に自分達のニーズに合わせた新たなソリューションを構築することができる、熟練のブロックチェーン開発者だ。
ミッションベースの教育の柱の一環として、IOGはABCとともに、Haskell、Plutus、Marloweを学ぶことができるブレンド型学習体験を提供した。私、ロベルティーノ・マルティネスは、同僚のラース・ブルニェス博士、カリーナ・ロペスとともにケニアのナイロビに飛び、この2か月間の集中コースを開始した。
ケニアに到着
しかし、物事というものは必ずしも計画通りに進むとは限らない。数日早く現地入りした私達は、当然コースを実施する予定の施設を訪れ、ホストに会い、和やかに過ごした。ABCは良好なWiFi、大画面、ホワイトボード、快適な椅子を備えたふさわしい教室を用意してくれていた。それに加えて、私達もレッスンをライブ配信するためのテレビスタッフと、休憩中に学生達に栄養とカフェインを提供するためのフードサービスを用意した。学生達が、得られる限りの知識を得るために邪魔になるものなど何もなかった。しかしここで、現実が立ちはだかった。
私達が教える基礎言語のHaskellは、簡単に学習できる言語ではない。これは考え方を拡張させ、複雑な問題を解決するためのユニークなスキルセットを提供する。概念の熟考、コードを書く練習に、時間と労力を費やす必要がある。
私達は、学生達が知識ゼロの状態から、1日8時間を費やすと仮定して2か月でHaskell、Marlowe、Plutusの有用な開発者となれるよう、入念にカリキュラムを組み立てた。この1日8時間という仮定は前回のコースをベースにしたもので、その際は、コースをマスターするためにできる限りの時間をつぎ込む覚悟を決めた有資格者達が、常に十分存在していた。しかし今回の場合、私達はケニアの労働事情を考慮していなかった。ナイロビでは大部分の人々が複数の仕事をしている。結果として、ほとんどの学生は大学に通っているか、フルタイムで仕事をしているか、その両方だった。したがって、こうした新しい状況に合わせてカリキュラムを調整する必要があった。
このとき、私はケニアの学生達の真の献身というものを目の当たりにした。学生達が使える時間に合わせて必要な時間を1日5時間に短縮し、すべての期限を延長した。そして彼らはこの挑戦を受けて立った。毎日午後2時、学生達がくるのを待っていると、午前中いっぱい働いていた学生達がやってくる。そして午後8時まで勉強する。その献身ぶりが気づかれないはずもなく、私達もまた、その限られた時間とエネルギーでもペースがつかめるように、知識を凝縮し、積極的に方法を見つけるべく最善を尽くした。
それは、信じられないような時間だった。私にとってのハイライトを上げてみよう。
- 学生達が、短期間で、テーマについて全く知らない状態から情熱的で技術的に深みのある議論をするようになるさまを目の当たりにした
- 教師として、何度か最高の「ああ!」という瞬間を楽しんだ(これは私を常に喜びで満たしてくれる)
- 夜遅くまで、一緒に実践的な演習を行った。サーバー、チャットアプリ、その他のクールなプロジェクトを開発した
- そのうえ、キリンの赤ちゃんを見た!
このすべてを、同僚のラースやカリーナと分かち合えたのが嬉しい。次に、カリーナにとってのハイライトを紹介しよう。
我が同僚カリーナ・ロペスのハイライト
「良い教育で自分に力をつけよ」とは、ミシェル・オバマの見解によれば、無限の可能性に値する国家建設のための基本的な道具を表現するいくつかの格言の1つです。
教育は個人が成長するための主要な原動力であり、私は最近その影響力を目の当たりにする特権を得ました。IOG教育チームの一員として、私はこのコースでラースをサポートするという得難い機会を得ました。
このコースは対面式と仮想式のインタラクションを組み合わせたものであり、参加者と繋がり、セッションで取り上げたトピックに関するその見解を理解することができました。
当初、参加者達はやや控えめでしたが、セッションが進むにつれ、熱心に質問したり、積極的に参加したりするようになりました。Haskellは、特殊性を備えた堅牢なプログラミング言語です。モナド、レンズ、光学、型などの概念の世界に飛び込むことは、困難な時もあります。ケニアの参加者にとって幸いなことに、ラースはこれら1つ1つを簡潔かつ明確に説明し、どんどん難しくなるレッスンを理解しやすいものにしました。
初期のセッションで気が付いたことは、私のもとに最初に質問にきたのが女性達だったことです。このような熱意をもって学ぶという決意、本当に素晴らしい光景を目にすることができてとても嬉しく思いました。テクノロジーの世界、特にブロックチェーン、Haskell、関数型プログラミングでは、多様性を奨励する必要があります。
ABCのスタッフがケニアのさまざまな伝統料理でもてなしてくれたため、私達には基本的に毎日、休憩時間や晩御飯のときに参加者達と交流する機会がありました。参加者達の熱意と好奇心は伝染するもので、ブロックチェーン技術を活用して現実の問題に対処することへの深い関心を反映していました。そして、次のような考えを共有しました。
「ブロックチェーンベースの技術の普及に伴い、日々直面する問題に対する解決策を提供する堅牢なアプリケーションを作成する必要性が高まっている」
また、滞在中にさまざまなイベントに招かれましたが、そのうちの1つは、Innovate Nairobi Tech Weekに開催されたパネルディスカッション「ケニアにおけるWeb3の現状:分散型のコンテクストにおけるサービス配信のためのWeb3の採用」でした。これは、ナイロビ郡政府がデジタル経済およびスタートアップセクター内で組織したものです。
また、AWoW3(Africa Women of Web3)会議での講演も依頼されました。Web3の分野で成功した女性達がその見解やさまざまな経験とともに、ジェンダーのダイナミクスによって直面している課題を共有しました。さらに、テクノロジーとブロックチェーンイノベーションの分野で障害を克服し、プロとしての成長を遂げるための戦略についても議論しました。
パネリスト達は、Web3の分野で多様性を促進するための成功例、コラボレーション、努力を強調しました。
観光
ケニアでは、いくつかの興味深い場所を探訪する機会を得ました。 その中の1つが、活気に満ちたケニアの首都の郊外に位置するナイロビ国立公園です。この公園はアフリカの象徴的な野生生物の棲家となっているため、印象的なコントラストを見せてくれます。公園に足を踏み入れると、ライオンやキリンを始め、数えきれない動物達が迎えてくれました。都市のスカイラインを背景としたこれらの雄大な生き物の組み合わせを見て、自然な生息地を保護することの重要性を強く認識させられました。
ナイロビの中心部では、カラフルなケニアのアートとクラフツマンシップのハブである、活気に満ちたマサイ市場を見つけました。市場は、マサイの伝統衣装、宝石、その他手作りの宝物が織りなす鮮やかなタペストリーでした。地元の職人達との交流により、芸術作品に対する理解が深まったばかりでなく、こうした伝統を保護することに対する経済的、文化的重要性も理解することができました。
多くの課題にもかかわらず、ケニアの人々は非常に活気に満ちたコミュニティを形成しています。自然に親しみ、古代の伝統的生活様式や豊かな色彩を受け入れています。
全体として、この旅は私の視野を広げただけでなく、ブロックチェーン、テクノロジー、そして、豊かなケニアの文化という世界に対するユニークな見解をもたらしてくれました。 私見ですが、参加者全員が現場で初めて関数型プログラミングを体験したことは有益だったと思います。これにより、協力して作業できましたし、学生達に質問を促したりお互いに助け合うよう励ますことができました。
このコースの今後に向けては、参加者がコースから最大限の利益を得られるよう、フルタイムで参加してもらえるようにしたいと考えています。
ロベルティーノとともにこのコースでラースをサポートした経験は、私にとって発見と繋がり、個人的成長の旅となりました。教育は、確かに世界を変えるための最も強力なツールの1つであると思います。ケニアにおけるWeb3の導入はほんの始まりに過ぎません。絶えず進化するこの状況を探求していく中で、すべての人々の生活を変容させ、より明るい未来を創造する上でテクノロジーが持つ大きな可能性が想起されます。
これらのツールを受け入れ、デジタル環境の変化に適応し、より大きな利益のためにテクノロジーを活用するために協力することは、私達の責任です。旅は続き、機会は無限です。2024年、IOG教育チームはより多くのプログラムやコースを企画しています。ご期待ください。
オンライン移行中
2週間の対面式フェーズのあとは、立ち去りがたいものがあった。ケニアはポテンシャルに満ちていた。でもこれはサヨナラではなかった。むしろ「3日後にオンラインで会いましょうね」といったものだった。そして、その通り、それは実行された。 トレーニングはさらに8週間続いた。期限を延長したときに、コース自体も延長された。そして、私達は進み続けた。一週、また一週。Haskell上級コースをカバーし、Marloweコントラクトを実行し、複数のPlutusスマートコントラクトを作成し、Plutusセクションを完全に機能するクールなステーブルコインDAppで締めくくった。それでも、これで終わりではなかった。もう1つ、個人プロジェクトのセクションが残っていた。
なんでも構築できる力を与えられた場合にありがちなのは、ソフトウェアエンジニアとして、常に作業に費やせる時間を凌駕するアイデアが出てくることだ。しかし今回の場合、問題はもっと深いものだった。学生達には、自分やコミュニティが抱えている実際の問題を解決することから旅を始めて欲しいと思っていた。したがって、彼らが学んだことすべてに柔軟に対応する最善の行動は、彼らが望むものを何でも作れるようにすることだと決断した。そして、サポート、ガイダンス、技術的な専門知識を提供した。
完全分散型の宝くじから経済システム全体のシミュレーションまで、彼らのアイデアは野心的だった。これから彼らがどこへ向かおうとも、その始まりの一部となれたことを嬉しく思う。
満足のいく結果であると感じられる。物語は知識に飢えた若い開発者から始まり、彼らが独自の夢のプロジェクトを構築することで終わる。それは、この才能のある開発者達の始まりにすぎない。もしあなた方の誰かがこのブログを目にしているなら、自分を向上させようとする努力と献身に感謝します。Cardanoにあなた方が構築するものを見ることを本当に楽しみにしています。
また会いましょう。
執筆協力:Karina Lopez
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