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Atala PRISM:分散型ソリューションでデジタルIDを先駆け

分散型IDはIOGが構築しているネットワークの状態とシステムの要。その最新情報をお伝えします

2023年 5月 11日 Olga Hryniuk 7 分で読めます

Atala PRISM:分散型ソリューションでデジタルIDを先駆け

IDは私たちの生活のあらゆる側面で基盤を成しています。私的な場でも、仕事の場でも、個人や、保険会社、銀行、サービスプロバイダーといった企業や機関との日常的なやり取りの中心的な概念として機能します。パスポート、運転免許証、IDカード(クレデンシャル)などの物理的な文書は、個人の身元、年齢、居住地、その他の詳細情報を証明するためのシンプルな手段となります。同様に、学歴のクレデンシャルは、学術資格やプログラムの修了を認証するのに役立ちます。

しかし、デジタルイノベーションが急速に発展しているとはいえ、オンラインでの身元確認は依然として課題となっています。

IOGの製品責任者であるTony Roseは、先頃、Cardano Hotel Podcastのインタビューに応え、Atala PRISMと分散型IDについて語りました。ここでは、その主な論点を紹介します。

分散型ID

分散型ID(アイデンティティ)は、SSI(自己主権アイデンティティ)とも呼ばれ、個人にデータの保持および管理権を与えるものです。SSIは、IDとデータをオンラインで検証するという課題に対するソリューションです。このモデルは分散化を促進し、データの管理権を中央当局から個々のユーザーに移行します。

ユーザーはDID(分散型識別子)を作成し、デジタルウォレットに保存することができます。雇用主、教育機関、医師、政府など、誰もがユーザーに検証可能なクレデンシャル(VC)を発行できます。発行者と個人のDIDがVCに署名すると、それは不変になり、ブロックチェーン上で利用可能な署名DIDを調べることで簡単に検証できるようになります。デジタル署名により、個人に関する情報が信頼できる情報源から来ており、変更されていないことに確信が持てます。ユーザはこうしたVCを保持および管理し、検証の必要に応じて提示できます。

World Wide Web Consortium(W3C)は、最近DIDを標準化し、開発者がこれらの資格情報を簡単に使用できるようにしました。

Atala PRISMは、インフラ製品のデジタルIDおよび検証可能なデータのためにCardanoに構築されたデジタルID管理スイートであり、中央当局が個人データを管理することのない、トラストレスな分散型環境でVCの作成、保存、共有を可能にします。Atala PRISMチームは、W3Cが開発した新たなDID規格との相互運用性を確保するため、標準化団体と深く連携しています。

Atala PRISM v2:経験を生かして構築

Atala PRISM開発チームは、Atala PRISM v2と呼ばれるアップグレードバージョンに取り組んできました。このバージョンは、最新の分散型ID標準に準拠した、エンタープライズクラスのスケーラブルなソリューションです。これには、標準化と相互運用性のためのW3C DID仕様、コミュニケーション用のチャットDIDComm v2、選択的開示とゼロ知識証明(ZKP)を使用してクレデンシャルのプライバシーを高めるAnonCredsも含まれます。

Atala PRISMは、現在デジタルIDスペースを賑わせており、現在進行中のパイロットやコラボレーションによってその可能性を示しています。

教育省のパイロット:エチオピアの学生をエンパワメント

2021年4月、IOGはエチオピア政府とのコラボレーションを発表しました。これは、ブロックチェーンベースの学生および教職員ID、そして学術成績を記録する全国的なシステムを実装するためのものです。

エチオピアの教育省は、Atala PRISMのパイロットを実施し、継続的に高校生をオンボーディングしています。この革新的なパイロットによって、教師と学生は改ざん防止データ管理システムを使用して、学歴クレデンシャルや学業成績の記録追跡を行うことができます。このプロセスにより求職や大学出願が合理化され、学校に成績証明書を申請する必要がなくなります。このパイロットは好評を博しており、分散型IDソリューションが実世界に与える影響の実例となっています。

Laceの統合

IOGの新しいライトウォレットプラットフォーム、Laceは、安全で高速、使いやすいCardanoウォレットで、Web3のすべての可能性に開かれています。IOGは、現在Atala PRISMとLaceの統合に取り組んでいます。スケジュールは未定ですが、この開発により、ユーザーは、デジタル資産とともに分散型IDもより簡単に管理することができるようになります。

Book.ioとのコラボレーション:NFTと教育

Atala PRISMはStudentReader.ioの協力のもと、Book.ioでAtala PRISM Foundations of SSIの読者を検証可能なNFT(vNFT)にミントしています。その収益は、Summon Platformが提供するマルチシグウォレットに送られ、ケニアから始まるPower Learn Projectを通じて学生奨学金に使われています。

この革新的なコラボレーションにより、ユーザーはケニアの学生のための奨学金に資金を提供しながら、ブロックチェーン上で本を購入、閲覧、販売することができます。これは、NFTと教育という文脈における分散型ID技術の可能性を示し、PRISMパイオニアプログラムの将来のコホートへの早期アクセスを提供します。

Atala PRISMパイオニアプログラム:開発者と組織をサポート

開発者や組織を支援するため、Atala PRISMチームは2023年4月5日にパイオニアプログラムを再び開講しました。このプログラムは、分散型IDソリューションの実装に関心のある開発者や組織を教育およびサポートします。これまでのプログラムは好評で、多くの参加者により、DocuSignの実装、部族の分散型識別子、サプライチェーン製品パスポートなどさまざまなプロジェクトが展開しています。

デジタルID管理の未来

Atala PRISMは、テクノロジーを進化させ、新しいユースケース、パートナーシップ、統合を模索し続けています。分散型IDソリューションを採用する組織や個人が増えるにつれて、Atala PRISMは今後のデジタルID管理において重要な役割を果たし、より多くの企業や実世界のユースケースを解き放つことができます。

Olga Hryniuk

Olga Hryniuk

Senior Technical Writer

Marketing & Communications