Input Output Global(IOG)は、Cardanoの堅固な基盤を使用して、カスタムサイドチェーンを構築するためのツールキットを構築する専門エンジニアのチームを編成しました。チームはツールキットを使って、イーサリアムバーチャルマシン(EVM)対応のサイドチェーンパブリックテストネットを概念実証として作成しました。サイドチェーンにより、メインチェーンの安定性やセキュリティを損なうことなく、Cardanoを拡張可能にし、スケーラビリティを向上させることができます。
サイドチェーンでCardanoを拡張
Cardanoは第三世代ブロックチェーンであり、学術研究に基づき、Haskellで作成することにより数学的正当性を実現しています。
Ouroborosコンセンサスプロトコルの分散性、セキュリティ、スケーラビリティは、この5年間にわたり、何千もの独立したステークプールと何百万ものウォレットアドレスによって、規模と量の両面から実証されてきました。ネットワークは2017年の開始以来障害なく稼働しています。
分散性と相互運用性はブロックチェーンの将来にとっての鍵となります。これらの性質により、人であれエンティティであれ、ブロックチェーンをコントロールできる単一の存在はなくなり、1つのエコシステムに制限されることもなくなります。エンジニアリング的にも社会的観点からも、成長するためには、ほとんどのアプリケーションやコミュニティがそれぞれ主権と設計の自由を持つ必要があります。
この相互運用可能な環境を実現するために、IOGはサイドチェーンファミリーを構築するためのツールキットの作成に取り組んでいます。このツールキットによって、誰でもCardanoのセキュリティとインフラストラクチャーを活用して、ミッション固有のサイドチェーンを作成することができるようになります。EVMサイドチェーンは、この概念の実現可能性を実証します。この成果のすべてが、Cardanoコミュニティと共有されており、完全にオープンソースです。最初のステージは、2022年11月末にエディンバラで開催されたIO ScotFestでのEVMアプリケーションの実演でした。本日、公式ドキュメントの最初のトランシェが利用可能になります。
ツールキットとは
サイドチェーンとは単純に、メインチェーンに依存し、これに接続されたブロックチェーンです。
ツールキットにより、サイドチェーンは独自のコンセンサスアルゴリズムと機能を持つことができるようになります。サイドチェーンは、チェーン間で資産の転送を可能にするブリッジによってメインチェーンに接続されます。ブロックのファイナリティは、メインチェーンのセキュリティに依存するコンセンサスメカニズムを通じて決定されます。
ツールキットは以下で構成されています。
- メインチェーンPlutusスクリプト:スクリプトはCardanoメインチェーンで実行され、安全なチェーン間トランザクションとトークンの移動を可能にし、ミントポリシーを活用してサイドチェーンのトークンをサポートします。
- チェーンフォロワー:チェーンフォロワーは、サイドチェーンを管理するメインチェーンのデータとイベントを追跡します。v1ツールキットリリースでは、これは、Cardano db-syncインスタンスです。
- サイドチェーンモジュール:このモジュールはサイドチェーンクライアントの一部です。メインチェーンのデータを翻訳し、必要な台帳の調整を実装します。
図1:サイドチェーンツールキットのコンポーネント
ツールキットには、Cardanoサイドチェーンの紹介とガイドを含む技術仕様書も付随しています。ツールキットのビルディングブロックは、開発者の力になるよう設計されています。以下に例を示します。
- データや資産をメインチェーンとカスタムサイドチェーン間で移動
- さまざまなコンセンサスプロトコル、台帳ルール、言語をサポート
- 安全なサイドチェーン立ち上げ
- 安全な小規模チェーン
- 実験、インキュベーション、研究が可能
EVMサイドチェーンアプリケーションは現在監査中ですが、パブリックテストネットとして2023年1月中に利用可能になる予定です。開発者は、いくつかのSolidityアプリケーションの実行することによって、その可能性を体感することができます。EVMサイドチェーンを使用しているDApp開発者は、サイドチェーンに移動する前のデータがメインチェーンで最終とみなされることに留意してください。
サイドチェーンツールキットのコンポーネントを使用する
ブロックチェーン開発者、分散型アプリケーション(DApp)開発者、ステークプールオペレーター(SPO)、DAppユーザーは、すべてカスタムサイドチェーンから恩恵を受けることができます。開発者はツールキットを使って、Cardanoのセキュリティと分散性をベースに、特定のユースケースのためのブロックチェーンを作成することができます。
こうして作成されたブロックチェーンは、既存のSPOコミュニティのサポートを活用し、Cardanoフォロワーの熱心なコミュニティから恩恵を受けることができます。
DApp開発者にとって、カスタムサイドチェーンは相互運用性、スケーラビリティ、テスト可能性、互換性における利点を提供します。
相互運用性
メインチェーンとサイドチェーン間のもっとも基本的な通信形式は資産のやり取りです。サイドチェーンに転送する際に資産はその性質を保持するため、同じくらい容易に転送し戻すことができます。この通信はブリッジメカニズムにより可能になります。両チェーンが安全である限り、このセキュリティは双方向の転送で維持されます。
メインチェーンとサイドチェーン間の通信では、独自の(修正された場合も)コンセンサスプロトコルやブロック形式を維持しつつ連携して機能させることができるため、アプリケーションの幅が広がります。
スケーラビリティ
プロジェクトマネージャーが優秀さ、高速性、低価格(のうち2つ)を選択するように、ブロックチェーンの目的にも分散性、セキュリティ、スケーラビリティという3つの競合する選択肢があります。
サイドチェーンはアプリケーション分野に特化できるため、トランザクションの処理を高速化し、この点においてメインチェーンの負荷を軽減することができます。サイドチェーンによるスケーラビリティの向上は、セキュリティを損なうことなく、また分散化に影響を与えることなく実施できます。
テスト可能性
開発者は、専用のサイドチェーンでDAppのパイロット版をテストできます。再起動を必要とするような障害や、チェーンのインターフェイスに変更を加える必要が生じても、影響を受けるのはサイドチェーンのみでメインチェーンにまで及ぶことはありません。このフェーズは、実験的な機能や新アプリケーションのための、テストネットでの稼働とメインネットへのフルリリースの間の中間ステップとして機能します。
互換性
サイドチェーンは、既存のチェーンと同じアプリケーションプログラムインターフェイス(API)を公開して、Cardanoのコンセンサスプロトコルのセキュリティと効率性を利用できます。たとえば、Cardano EVMサイドチェーンはSolidity実行環境を提供します。これはマイナーを必要としませんが、それでもJSON RPCメソッドを提供します。イーサリアムのスマートコントラクトはそのまま、はるかに低いガス料金で実行できます。
SPO
サイドチェーンは、サイドチェーンノードの実行を決断したSPOに、単にADAだけでなくより多くのトークンの報酬をプールにもたらすことを可能にする機会を提供します。サイドチェーン専用トークンはさまざまな目的で使用でき、デリゲーターにネットワークへの参加を促します。サイドチェーンにおける報酬の設定方法に応じて、サイドチェーンのブロック生成者は、ブロックの構築、その検証、ネットワークセキュリティへの貢献に対して新しいトークンを報酬として得ることができます。また、Cardano SPOなら誰でもサイドチェーンでブロックを検証することを選ぶことができます。この場合、追加的サービスの提供とより多くのリソース使用に対する、さらなる収入というメリットがあります。
SPOがサイドチェーンでブロックの検証を選択した場合、追加的リソースを提供する必要があります。サイドチェーンを保存するディスクの空き容量が必要となるほか、チェーンフォロワーとサイドチェーンノードという2つの追加的プロセスの実行が必要になります。
DAppユーザー
チェーン間の相互運用性の向上、開発プロセスの簡易化、開発プラットフォームの増加、トランザクション手数料の低下は、DAppの数と種類を増加させる傾向があります。Cardanoサイドチェーンが増えれば、革新的なブロックチェーン設計の種類、ユースケース、ステーキング報酬の総額が増え、それがより多くのSPOやデリゲーターを惹きつけ、結果的にセキュリティの強化と分散性の拡大に繋がります。これが、サイドチェーンのエコシステムが持つポテンシャルです。
まとめ
サイドチェーンツールキットは、Cardanoロードマップにおいてプログラム可能性、相互運用性、スケーラビリティの向上を導入するスケーリングフェーズ、Bashoの最新の配信です。サイドチェーンの開発は、分散性とセキュリティを損なうことなくスループットを大幅に向上させることにより、Cardanoの大規模な普及への道を整備します。ブロックチェーン開発者は、より簡単にカスタムサイドチェーンを作成することができます。IOGは、最終的にCardanoサイドチェーンのファミリーや、パートナーによるチェーンの出現を望んでいます。
EVMサイドチェーンパブリックテストネットは2023年1月中にリリースされ、コミュニティはDAppのデプロイ、スマートコントラクトの作成、テスト環境のチェーン間でトークンの移動などを試すことができます。
1月にリリースされるツールキットは完全なソリューションではありません。ブリッジの使用感、SPOの報酬メカニズム、セキュリティモデルといった既知の改善点が存在します。これらすべての点に関して、フィードバックや意見、推奨を得るために協力しながら、コミュニティとともに慎重かつ着実に取り組んでいきます。
改良できる点は数多くあり、サイドチェーンを実行する方法は多様です。しかし、IOG内部で開発したものが、コアな機能セットを提供し、さまざまなツールを構築するための堅固な基盤を形成し、コミュニティとの協力体制をさらに向上させることを望んでいます。
より多くのドキュメントやチュートリアル動画がじきに利用可能となります。通常通り、最新情報はIOGのソーシャルメディアを通じてお届けします。
詳細は、サイドチェーンの技術仕様と開発ドキュメントをご覧いただき、IOGの技術コミュニティDiscordにご参加ください。まもなく、関心のある開発者向けにDiscordステージを開催します。更新情報を得るために、IGOの開発者ニュースレターに登録してください。商用、パートナーシップのお問い合わせは、お問い合わせページからIOGまでご連絡ください。
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