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パイプラインの導入:Cardanoのコンセンサス層スケーリングソリューション

2022年にデプロイが予定されているスケーリング向上の目玉の1つとなるパイプライン。その仕組み、そしてこれが重要である理由とは

2022年 2月 1日 John Woods 5 分で読めます

パイプラインの導入:Cardanoのコンセンサス層スケーリングソリューション

パイプラインと聞いて、配管工が行うリフォームの専門用語と思っても無理からぬことです。ある意味、当たらずとも遠からずといえるでしょう。パイプラインは、実質的にCardanoの「配管」における進化です。これは、今年のスケーリング計画の主要な要素です。この計画については、成長に伴いCardanoに柔軟性を持たせるための系統的アプローチとして、その諸段階が先に公開されています。

いずれのブロックチェーンにとっても、成長と競争力を維持するのであれば、スケーリングとスループットは重要な検討課題です。CardanoがBasho開発期に入るにつれ、Cardanoのスケールが成長するエコシステムのニーズに確実に応えられるようにすることに焦点があてられています。言い換えれば、基盤となるプロトコルであるOuroboros Praosにより、現在Cardanoで展開されている、または立ち上げを待っている多数の分散型アプリケーションが、十分な速度で実行できるようにする必要があります。

Cardanoは一連の測定ステップで最適化が着実に進められ、需要の増加に伴う将来の成長に備えて慎重かつ系統的にスケーリングされます。1月初頭、ノード1.33.0のリリースで導入された変化により、ブロックサイズやメモリーユニットを含む一部のネットワークパラメーターを修正するゆとりが得られました。ここでの調整は、Cardanoが大量のネットワークトラフィックを処理する方法に直接関係しており、ネットワークパフォーマンスは引き続き注意深く監視されています。

現実世界のネットワークパフォーマンス、そして重要なことに、パラメーター変更の累積的な影響を綿密に観察し続けることが、このプロセス全体のカギとなります。更新のたびに、さらなる調整を続ける前に、最低でも1エポック(5日間)をかけて慎重に監視および評価を行います。広範な研究とエンジニアリングがシステムの設計とデプロイにつぎ込まれてきたように、分散型ネットワークのアーキテクチャーには実際のユーザーの行動と使用状況に基づいたスケーリングが必要です。

パイプラインの導入

パイプライン、より正確には拡散パイプラインは、ブロック伝播の高速化を促進するコンセンサス層の改良です。これにより、ゆとりがさらに広がり、Cardanoのパフォーマンスおよび競争力をさらに高めることを可能にします。

この手法でどのように目標が達成できるのかを理解するために、現在のブロックの伝播方法を確認しておきましょう。

現在、ブロックは6段階を経てチェーンを移動します。

  1. ブロックヘッダーの送信
  2. ブロックヘッダーの検証
  3. ブロックボディのリクエストと送信
  4. ブロックボディの検証とローカルチェーンの拡張
  5. ブロックヘッダーのダウンストリームノードへの送信
  6. ブロックボディのダウンストリームノードへの送信

ブロックの行程は非常に連続したものです。すべてのステップはすべてのノードで、毎回同じ順序で発生します。ノードのボリュームと増え続けるブロック数を考慮すると、ブロックの送信にはかなりの時間がかかります。

拡散パイプラインはこのステップの一部を互いに重ね合わせて、同時に発生するようにします。これで時間が節約され、スループットが増加します。

この手法による時間の節約により、Cardanoをスケールアップするゆとりが広がります。スケールアップには以下が含まれます。

  • ブロックサイズ - ブロックの拡大により、運搬できるトランザクションやスクリプトが増加する
  • Plutusのメモリー制限 - Plutusスクリプトを実行するために利用できるメモリーの量
  • PlutusのCPU制限 - スクリプトをより効率的に実行するために、より多くの計算リソースを割り当てることが可能となる

パイプラインの実装

拡散パイプラインを支える設計原則の1つは、チェーンの「破壊的な」変更を回避しつつ、ブロック伝播の高速化を達成するというものでした。Cardanoですでに発生しているいかなるプロトコル、プリミティブ、または相互作用も削除したくありませんでした。ノードがこれらの確立したメカニズムに依存しているためです。完全な後方互換性が必要であったため、現在の動作方法を変更する代わりに、望ましいブロックが表示されたときに、完全な検証前にサブスクライブされたエンティティに事前通知する役割を持つミニプロトコルを新たに追加しています。

パイプラインで導入された主要な変更は、ピアに事前通知し、検証前にブロックを提供する機能です。これにより、ダウンストリームピアは新しいブロックボディをプリフェッチできるようになります。複数のホップにわたってブロックを検証する時間が劇的に短縮されるため、多くの時間を節約できます。

結論

パイプラインは、今年のCardanoのスケーリングを支える柱の1つに過ぎません。これらの変更をすべて組み合わせることによって、Cardanoは競合他社よりも高速で、今年分散型金融(DeFi)のための高い競争力を持つプラットフォームになります。

主要ポイント

執筆協力:Fernando Sanchez

John Woods

John Woods

Director of Cardano Architecture

Engineering