Ouroboros Chronosはブロックチェーン技術に基づく最初の高回復性暗号タイムソースを提供
より精度の高いグローバルタイムキーピングを提供するために設計されたChronosは、セキュリティと通信遅延に対するネットワークの復元力を強化
2021年 10月 27日 7 分で読めます
分散型ネットワーク全体のグローバルタイムの同期は、回復性確保の要です。
すべての参加者間に最新情報を確保することから、正確なトランザクション処理とブロック生成を維持することに至るまで、スマートコントラクトのデプロイという点で時刻同期は特に重要です。
エディンバラ、パデュー、コネチカットの各大学の研究者と協力する中で、Input Outputは、より安全で改ざん防止型のグローバルタイムソースを提供するために、ブロックチェーン全体でグローバルに時刻情報を同期する方法を発見しました。これには、サプライチェーンの測定ツールなどモノのインターネット(IoT)デバイスや、一般的な、特に中央クロックの混乱がセキュリティリスクを意味する分散型システムからの時刻情報を同期することが含まれます。この研究は、Cardanoブロックチェーンの基盤となるコンセンサスアルゴリズム、Ouroboros(ウロボロス)の最新イテレーションOuroboros Chronos(クロノス:ギリシャ語で時間の意)で実現されます。
時刻は重要
時刻はコンピュータープログラムおよびアプリケーションにおいて不可欠のコンセプトです。このコンセプトがなければ、TLS(Transport Layer Security)ベースのウェブサイトへのアクセス、データ交換、あるいはさまざまな暗号アルゴリズムの活用ができません。
しかし、時間管理は容易に解決できる問題ではありません。正確な時刻同期はインターネット全体のデータ送信を想定しています。そしてこれにもまた時間がかかるのです。特定のデータ通信に必要な時間を予想することも困難です。ネットワークの状態は絶え間なく変化し、また、混雑や実際のデータサイズをはじめとする諸要素に依存しています。したがって不整合が頻繁に発生するため、正確な計時用ツールやソリューションを提供することは重要です。
リアルタイム
一般のコンピューターでは、タイムキーピングは当然のものとみなされています。しかし、この背後では厳密なメカニズムが機能しているのです。たとえばNetwork Time Protocol(NTP)は、グローバルに分散しているサーバーの階層を使ってタイムキーピングに対処しています。NPTには、最適な方法で同期するために開発された経路制御を持つStratum(階層)が最大15含まれます。また、遅延と送信時間の不整合の両方を軽減させるベルマンフォードスパニングツリーもこれを可能としています。
英国政府のSatellite-derived time and position:Blackett review(衛星から導出された時間と位置:Blackettレビュー)は、最近、より復元力のあるタイミングデータの必要性と、スマートグリッドから自動運転車まで重大なセクターが、妨害、サイバー攻撃、宇宙天気に脆弱な全球測位衛星システム(GNSS)に依存していることの危険性を強調しています。さらに、電気通信からスマートトランスポートまであらゆるものに対応する、より回復力に優れた代替計時サービスを調査するために、英国国立物理学研究所の主導で世界初のNational Timing Centre(国立計時センター)が設立されました。世界の計測センターでは現在、正確さを期すために、複数の場所でさまざまな周波数で稼働しているクロックの比較を行う必要があります。
ブロックチェーンの時刻同期
分散型台帳テクノロジーのタイムキーピングのコンセプトは異なります。正確で有効なタイムスタンプがないと、ネットワークは処理中のトランザクションが有効で、以前のトランザクションを取り消すことがないことを確認できません。さまざまなブロックチェーン台帳で使用されるさまざまなタイムスタンプ手法がありますが、必ずしも正確とは限りません。たとえば、ビットコインはコンセンサスのセキュリティ上の理由からタイムスタンプを使用しますが、タイムキーピングは主要目的ではありません。イーサリアムでは、オンチェーンタイムスタンプはマイナーが決定し、コンセンサスは有効性のためにブロックや承認をするわけではありません。
タイムキーピングはスマートコントラクト実行にも不可欠です。不正確だと分散型金融(DeFi)のスマートコントラクトを攻撃のリスクに晒します。スマートコントラクトの脆弱性は必ずしも貧弱なコードが条件となるとは限りません。時刻の不整合は台帳であらゆる攻撃の可能性を防ぐために解消されるべきです。
Ouroboros Chronos:通信とタイミングの回復力を高めるための設計
Ouroboros Chronosに関する新たな研究により、ブロックチェーン技術で時刻をより安全に同期することができるようになります。Chronosはそれ自体が暗号的安全性を持つブロックチェーンプロトコルであり、追加的に、外部でホストされたクロックの脆弱性を排除し、新しい時刻同期メカニズムを介して正確なタイムソースを提供します。これにより、ブロックチェーンはトランザクションに正確なタイムスタンプを押すことが可能となり、時刻情報を対象とした攻撃に対する台帳の耐性を強めます。
この新プロトコルは、単一障害点を持たない統一されたネットワーククロックにローカルの時刻を同期することによって、重要な電気通信、交通、取引システム、インフラの回復性を大幅に強化します。
エディンバラ大学ブロックチェーンテクノロジーラボのディレクター兼Input Outputのチーフサイエンティストで、この研究を主導するAggelos Kiayias教授は、次のように話しています。
中央タイムキーパーなしでクロックを同期する問題は、真に堅牢な分散型金融システムを作るうえで重要です。私たちは初めて、動的に進化する関係者グループが自分たちのローカルクロックを調整するブロックチェーンメカニズムを開発しました。したがって、任意の参加パターンに従って出入りしても整合性を保つことができます。ブロックチェーンベースのグローバルクロックを創り出すことは、多くの潜在的外部アプリケーションを使った、より安全で改ざん防止性能の高いタイムソースへの道を整えることにもなりました。
正確な計時と全トランザクションの完全な追跡可能性を可能にすることで、科学的進歩もまた、完全に監査可能かつ不正防止型の金融システム創造へ向かって大きな一歩を踏み出しました。
詳細は、公開された論文を参照してください。
本稿執筆に協力いただいたRachel Bruce、Jenny Corlett、Rod Alexander、Christian Badertscherの諸氏に感謝します。
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