UTXOアライアンス:ブロックチェーンスペースでイノベーションとコラボレーションを育成
相互運用性、プログラム可能性、スケーラビリティを前進させる革新的なソリューションを育成するため、他のUTXOベースブロックチェーンと提携
2021年 10月 15日 14 分で読めます
Cardanoサミットで、IOHKはErgo、Nervos、ToplとともにUTXOアライアンスを結成すると発表しました。今日、ここにアライアンスの新パートナーKomodoを迎えることができて大変うれしく思います。
Komodoはオープンソーステクノロジーのプロバイダーで、開発者や企業向けのオールインワンブロックチェーンソリューションを提供しています。Komodoはブランド付きの分散型取引所、クロスプロトコル金融アプリケーション、独立したブロックチェーンの立ち上げを希望する組織と密接に協力しています。KomodoのフラッグシップであるAtomicDEXは、ノンカストディアル型マルチコインソフトウェアウォレットと、アトミックスワップを利用した分散型取引所を1つにまとめたエンドユーザーアプリケーションです。AtomicDEXとこの基盤となるテクノロジー(Komodo AtomicDEX API)は、既存の暗号資産の99%と互換性を持ち、全ブロックチェーン業界最大のクロスチェーン、クロスプロトコル取引きサポートを提供します。
「UTXOブロックチェーンは、間違いなく今日のブロックチェーン業界の基盤を築きます。UTXOテクノロジーは、サトシ・ナカモトのコアビジョンである究極の(金融の)自由を反映しています」と、Komodoビジネス開発リーダーのKadan Stadelman氏は語ります。 「KomodoプラットフォームとAtomicDEXチームを代表して、UTXOアライアンスに参加しこのビジョンを守り、発展させることを誇りに思います。他のアライアンスメンバーと共に、このテクノロジーを次のレベルへと進められることを確信しています。皆は一人のために、一人は皆のために」
UTXOアライアンスは、スマートコントラクト機能の観点からUTXOの機能を拡張するために、エコシステムの枠組みを超えるイニシアチブを促進します。ブロックチェーン業界の他のプロジェクトと手を携えて、スペース全体で研究、開発、教育をさらに促進するという目的を共有します。
UTXOアライアンスの目標は、相互運用性、スケーラビリティ(シャーディング、ステートチャネル)、およびスマートコントラクトソリューションの観点から、UTXOモデルの継続的なイノベーションを推進することです。これらのソリューションを強化し、ブロックチェーン間にブリッジを構築する主要なイニシアチブを推進することで、誰にとっても公平でアクセスしやすいグローバルファイナンスを実現できます。またこれは、UTXOベース台帳の開発と機能を強化する集合的な取組みを確立します。このモデルを使用している他のプロジェクトには、NEO、ビットコイン、そしてそのデリバティブのビットコインキャッシュ、ライトコイン、Zcashがあります。
UTXOの重要性
未使用トランザクションアウトプット(UTXO)会計モデルは、金融活動の中核にあるセキュリティ、データプライバシー、スケーラビリティを保証します。UTXOモデルは、UTXOの同時処理が可能であるため、スケーラビリティを促進します。また、すべてのステークが単一のアカウントに集約されていないため安全性も強化されます。
UTXOはアカウントベースのモデル(例:イーサリアム)よりも安全なモデルです。UTXOベースの台帳とは異なり、アカウントベースのブロックチェーンは、すべての残高を追跡し、トランザクションのたびに同じアドレスが使用されます。これは、ハッキングへの脆弱性というリスクを負うだけでなく、トランザクションの処理が並列してではなく連続して行われるため、スケーラビリティの妨げとなります。
たとえば、Cardanoの拡張UTXO(EUTXO)モデルはマルチ資産とスマートコントラクトをサポートし、スクリプト形式で任意のロジックを可能にします。こうしたスクリプトはさまざまなブランチに分割でき、並列性とスケーラビリティをさらに強化します。
アライアンスのメンバーであるNervosは、パーミッションレス、レイヤー1、オープンソースのプルーフオブワークブロックチェーンプロトコルで、相互運用可能なユニバーサルパブリックネットワークの基礎を築くことに主眼を置いています。
Nervosの研究主任であるRen Zhang氏は次のように述べています。「『職務分掌』の原理を実装した、ビットコインの先見の明のあるUTXOモデルは、必然的にアカウントモデルよりもスケーラブルであり、攻撃を受けやすくなります。このビジョンを共有する多くのプロジェクトが、UTXOの可能性を拡張するためにユニークな見方を提供しています。UTXOアライアンスは相互運用性とメンバーの共進化を可能にすることにより、私たちの持つ優位性の上位集合を提供します」
ラムダ研究者にしてIOHKのPlutusアーキテクトであるManuel Chakravartyはこう付け加えています。
ビットコインによって実績が試されたUTXO台帳モデルは、安全性とスケーラビリティにとってのゴールドスタンダードです。UTXOアライアンスは、これが相互運用性にとってもゴールドスタンダードになるようにするための重要なステップです。
相互運用性、プログラム可能性、スケーラビリティに焦点を当てる
中央集権型金融は数十年にわたり金融業務の中心でした。このようなシステムは一般的に十分機能してきたとは言え、いまだに、中央当局への依存や、法外なトランザクション手数料、規制により国際送金に不必要な遅延、複雑性、コストが生じるなどの不利益があります。これを変えるべき時が来ました。
相互運用性
ブロックチェーンテクノロジーは、コストのかかる仲介者に依存する代わりに暗号証明に基づいた信頼のおけるピアツーピアトランザクションを可能にすることにより、中央集権型の課題に対処します。多くのブロックチェーンプロジェクトが、安全な分散型金融取引きの環境を提供するために生まれています。これらのプロジェクトは、コンセンサスアルゴリズム、会計モデル、特定のユースケース(金融、データの追跡可能性、サプライチェーン管理など)に焦点を当てたスマートコントラクトの適用性といった観点から多岐に渡っています。
成長は必然です。しかし、ブロックチェーンが成熟するスピードは、サイロ化されたエコシステムや異質なガバナンスルール、テクノロジーのバージョン、機能のサポート具合によって阻まれます。
IOHKのCTO、Romain Pellerinは、サミットで次のように述べています。
メインストリームへのブロックチェーンの適用はネットワークの相互接続を通じてのみ実現します。ちょうど、インターネットがイントラネットとエクストラネットの相互接続によって構築されたのと似ています。
したがって、今日、業界全体が相互運用性に向かって進むことが重要なのです。ユーザーは、特定の台帳に制限されることなく互いに取引きできるべきであり、スマートコントラクトは異なる環境下でもサポートされるべきです。そして、分散型アプリケーション(DApp)はプラットフォームを超えた互換性を持つべきです。このようなアプローチによってのみ、ブロックチェーン業界はその機能性を最大限に活用し、更なる普及を推進することができます。
プログラム可能性
UTXOアライアンスは、DAppとスマートコントラクトの作成を可能にするブロックチェーンのプログラム可能性にも着目しています。実際、特定のトランザクションやUTXOモデルのデータストレージ管理(ErgoとCardanoのEUTXOやNervosのセルモデルなど)を適用するためには、新言語の設計が必要です。アライアンスの創立メンバーは、自分たちのスマートコントラクト言語として、Antara、CKB-VM、ErgoScript、Plutusを開発しています。アライアンスメンバーは、UTXOベースのブロックチェーンで実行することのできるユースケースの数を急速に拡大するために、知識を共有し、協力してこうしたテクノロジーを開発しています。
また、こうした言語は、Scala、Haskell、C、JavaScript、Go、Rustなど一般的なプログラミング言語の上に、ドメイン専用言語(DSL)として構築されています。しかし、特定のケースでは、こうした一般言語はスマートコントラクトの開発者が必要とするセキュリティや使用感を提供できない場合があります。
IOHKは、セキュリティとコードの認証可能性を確実に強化するために、Plutusスマートコントラクトのプログラミング言語にHaskellを選択しました。これは最も広範に使用されている、アプリケーション開発用関数型プログラミング言語です。Haskellは単純でセキュア、そして形式的に認証されます。適用の観点からは、広範な金融ユースケースに適しており、資金を迅速に移動し、正しい結果を出し、スケーラビリティを確保します。このプログラミングスタイルは、スケーラビリティを強化するステータスの分散と並列性という点において、UTXOモデルに非常に適しています。
Nervosも証明可能安全性を持つ代替プログラミングオプションに取り組んでいます。これは、CKB-VMで一般的なプログラミング言語をサポートするために、RISK-Vコンパイラーを使用します。一方Toplは、チェーンプログラムエンジンのプルーフオブコンセプトに取り組んでいます。これは基本的に、共有されたステータス実行環境で機能することを可能にする、UTXOモデルの上部に置かれた抽象化層です。これはポインターレジストリーと一連のUTXO(台帳ステータスでアトミックデータ要素、つまりボックスとして表現される)を使って、プログラムメソッド呼び出しトランザクションを評価する実行コンテクストを再構築します。
UTXOアライアンスは、さまざなな開発努力を考慮して、プログラミング言語のバラエティが異なるブロックチェーンプラットフォームでコンパイル、使用できる、統合されたスマートコントラクトエコシステムを作成するためのベストシナリオを検討します。これは、ブロックチェーン間のよりよい相互運用性を確保するために役立ちます。
スケーラビリティ
ネットワークの拡大に伴い、トランザクション処理とスループットの観点からスケーラビリティ能力を考慮することが重要となります。UTXOモデルはアカウントベースのものと異なり、ローカルのステータスに基づいて機能するため、異なるプログラミングアプローチが必要となります。
2つのモデルは異なるプロパティを持ち、異なるトレードオフ、異なる長所と短所を提供します。UTXOモデルはローカルステータス(トランザクショングラフ全体のローカル部分)を管理することにより、決定性、予測可能性、スケーラビリティを保証します。アカウントモデルは、グローバルステータス(トランザクショングラフ全体が検証前に処理される必要がある)に依存したユースケースの開発を促進します。
したがって、UTXOモデルは、トランザクションとコントラクトの実行をチェーンへ送信する前に保証するという貴重なプロパティを提供し、予想外の手数料や検証結果に驚かされることはありません。また、一連のサブグラフに分割することによりトランザクショングラフをシャーディングする方が定義上よりシンプルであるため、UTXOモデルはスケーラビリティの面でも優れています。
さらに、特定のトランザクションや一連のトランザクション(データ、スクリプト、資産を転送する)を切り離して、アクティビティをオフチェーンで続け、結果をオンチェーンに返す方が簡単です。これは、メインチェーンからアクティビティをオフロードすることによって、スケーラビリティを確保します。たとえばIOHKは、システムスループットを高め、スケーラビリティを脅かすことなく並列して複数の操作を実行できるようにするHydraステートチャネルソリューションを開発しています。スケーラビリティの詳細は、Cardanoの並行性およびHydraアプローチに関する記事をご覧ください。
共通の目的へ向けた協力
UTXOアライアンスは、ユニバーサルUTXO標準を開発しながらUTXOモデルを進歩させるために協力します。ADA保有者、暗号資産ユーザー、企業、開発者コミュニティに、単一の標準に制限されることのない幅広いソリューションを提供することを目指しています。このため、アライアンスは学術研究を行い、UTXOモデルに基づく安全でスケーラブルなスマートコントラクト開発を支える数多くの論文をリリースします。
相互運用性が鍵となる一方で、資金のセキュリティ、トランザクション処理のスケーラビリティ、そしてもちろん、スマートコントラクトで提供される拡張機能を強化したブロックチェーンソリューションの提供も不可欠です。
アライアンスメンバーのToplは、インパクトマネタイズエンジンとして構築されたブロックチェーンを開発しています。Toplの創立者にしてCTOのJames Aman氏はこう述べています。「拡張UTXOは、ハードコードによるプロトコル動作とスマートコントラクトの溝を埋める、DLTシステムにおける新しいコンピュテーションメソッドを可能にします。EUTXOは、ライトクライアントからですら完全なローカル検証可能性を維持しながら、ユーザーが複雑なやり取りを行うことを可能にします」
さまざまな機能を特定のブロックチェーンに依存しない形で活用する可能性を実現させるために、アライアンスは次のような現実的な課題に取り組みます。
- 異なるブロックチェーン環境で、どのようにシームレスにデータを移行するか
- トランザクションで使用される理想的なデータサイズとは
- 適切なデータ処理速度とは
- トランザクション手数料、他
したがって、アライアンスはさまざまなブロックチェーン間でシームレスで安全なトランザクションを可能にするメカニズムに主眼を置き、ブロックチェーン技術のより大規模な普及を促進します。これにより、堅牢なDAppやDeFiソリューションの開発も促進されます。
アライアンスメンバーであるErgoの共同創立者であるAlex Chepurnoy氏は言います。「UTXOがブロックチェーンのスケーラビリティやよりシンプルなオフチェーンプロトコルにとってベターであることはよく知られていますが、拡張UTXOモデルによって、興味深いプロパティを持つ新しいオンチェーンDeFiの構築も可能になります」
これは始まりに過ぎません。現在、UTXOモデル改良の草分けとなり、共通知識とテクノロジースタックがいかにスケーラビリティを改良できるかを調査し、オープンソースリサーチに貢献できるよう、より多くのエコシステムとのコラボレーションを検討しています。アライアンスの成長に伴い、進捗状況をお知らせします。
詳細情報、アライアンスへの参加、研究への貢献は、UTXOアライアンスのウェブサイトをご覧ください。
最新の記事
Quality Engineering at IO: bridging research and reality in software development 筆者: Ivan Irakoze
20 November 2024
ブラックホーク空へ:ハリケーン「へリーン」を受けて英雄達を輸送 筆者: Fernando Sanchez
29 October 2024
ワイオミングのBlockchain StampedeでCardano Day 筆者: Alejandro Garcia
21 October 2024