本日これから、HFC(ハードフォークコンビネーター)プロトコルアップグレードイベントにより、CardanoメインネットにPlutusスマートコントラクト機能が配信されます。
Alonzoアップグレードは、ブロックチェーンにPlutusスクリプトを統合することを通じて、Cardanoに待ち望まれた機能をもたらします。これで、Cardanoにスマートコントラクトが実装され、分散型アプリケーション(DApp)の新たなユースケースをホストすることが初めて可能となります。
これは始まりに過ぎません。それでも、今はお祝いの時です。コミュニティとして、私たちはともに驚くような旅を続けてきました。ここまで多くの人々によりなされてきた数えきれない努力を讃えるべき時でしょう。これはまた、私たちが一丸となって克服してきた課題を振り返るときでもあります。
つかの間のダウンタイムをとるかもしれませんが、ゆっくり休んでいる暇はありません。また、ここに傲慢な思いはありません。私たち、コミュニティ全体が、長い間取り組んできたビジョンを実現し始める、ここから真の使命が始まります。すべての場所で、すべての人に経済的なIDと機会を提供する分散型システムの構築です。
これまでの道
何年もかけて研究開発で素地を整えつつも、今日私たちが持つネットワークの基礎をしっかりと固めたのは、2020年3月のByronリブートでした。同年7月、Shelleyアップグレードにより、Cardanoは連合型モデルから分散型モデルへとシフトしました。
2021年3月末にネットワークの分散化パラメーターDが0に設定されて以来、すべてのブロックは、2,868ステークプールのコミュニティからなる分散型ネットワークにより生成されています。
これは、急成長を続ける類稀なステーキングエコシステムです。CardanoデータアグリゲーションツールPooltoolの統計によると、今日ステーキングされているADAウォレット数は825,755に上ります。これは、6月以来35%以上の増加を示しています。執筆時点で、ステークプールに委任されているADA合計額は598.6億米ドル相当。これはADA総額(839億米ドル相当)の71.4%を占めています。
3月のMary アップグレードでは、マルチ資産ネットワークが生み出され、ネイティブトークンが導入されました。ERC20型に代わるモデルを提供するとともに、Maryは途轍もないクリエイティビティを放ちました。ミントとトランザクションの手数料を低く抑え、スマートコントラクト不要というユニークなCardano NFTにより、NFTエコシステムは驚くべき賑わいを見せています。pool.pm(Smaug pool提供)のデータによると、Cardanoではこれまでに780,436のトークンがミントされ、19,419のポリシーが作成されています。すべてスマートコントラクト不要です。
Alonzoへ
Alonzoアップグレード(名称は先駆的なアメリカの数学者、アロンゾ・チャーチに由来)は、この成功を基に構築されました。これは、過去のアップグレードに使用されたと同じHFCテクノロジーを用いて配信され、急成長が期待される新たな時代の起点となります。オンチェーンでPlutusスクリプトの作成、実行が可能となり、新たな分散型アプリケーションプラットフォームを支えます。これで、数多くのDAppや分散型金融(DeFi)ユースケースが可能となります。ここには、単純なスワップタイプのアプリケーションから分散型取引所(DEX)、さらに、Oracleや、暗号資産に裏打ちされたアルゴリズムステーブルコインといった、より複雑な計算プログラムまで含まれます。
これは、スキルに満ちたステークプールオペレーター(SPO)コミュニティに実行される、世界で最も分散化された、サステナブルで堅牢、先進的なブロックチェーンプラットフォームに数えられます。また、情報通で熱意に満ちた委任者のコミュニティがいます。簡単で低コストのミントに惹きつけられた、活気に満ちたNFTエコシステムがあります。そして、Voltaireによる将来のガバナンス、そしてBashoやHydoraスケーリングによる究極的なスケーラビリティへのロードマップもあります。未来は明るく、遠くまで伸びています。私たちはこの長い旅を共に続けます。
新たな開発者エコシステムの誕生
すべての礎石は配置されています。プラットフォーム。ビジョン。使命。コミュニティ。スマートコントラクトやDeFiはまだごく初期段階にありますが、すでに大きな進歩を遂げています。
何千もの開発者がPlutusパイオニアコースに参加し、開発フレームワークの基礎を学んでいます。多くのプロジェクトがすでにPlutusで開発を始めており、助言段階から準備段階までさまざまなステージにあります。何百ものプロジェクトがさまざまなCardanoテストネットや個人がホストするソリューションで活発に稼働しています。世界最大の分散型イノベーションファンドであるCardano Project Catalystイノベーションプログラムでは、およそ150のプロジェクトがアイデアを展開しています。最新ラウンドでは、800以上、そう、まさに800以上のプロジェクトが400万米ドル相当の資金調達に応募しています。現在、時価10億米ドルを超えるトレジャリー、33000人を超えるメンバーを抱えるCardanoに構築する未来は、これ以上明るくなりようもありません。
プロジェクト数やエコシステムを構成する組織のスナップショットは、Essential Cardanoリポジトリを参照するか、Cardiansのマップのように(図1参照)、さまざまな優れたエコシステムマップをご覧ください(これらは代表的なもので、包括的なものはありません)。これらは、どのプロジェクトがすぐに可視化されるかを示すものではありませんが、美しい眺めを提供します。
図1:@Cardiansによるエコシステムマップ
これらのプロジェクトがデプロイに向けて進化するのが楽しみです。まもなく稼働できるものもあれば、かなりかかるものもあります。今月初頭の最初の完全なパブリックテストネットのリリースに続く、現在のメインネットリリースにより、多くの人々が開発活動を活発化することが期待できます。
いまだ初期段階
明確にしておきたいことは、今後もスムーズにはいかないということです。初期のユーザーエクスペリエンスは完璧なものではないでしょう。初期DAppの中には、問題が生じる場合もあります。すばらしい開発チームもいれば、うまくいかないチームもあるでしょう。これはパーミッションレスの分散型ブロックチェーンです。したがってこれは避けられません。中には安全でないことが示されるDAppもあるでしょう。Cardanoの安全なレイヤー1プラットフォームは、堅牢性と高保証性を提供します。そして、Plutusはセキュリティ上の潜在的弱点を最小化するように設計されています。ただし、粗末なコードの実践は、常にDAppユーザーにリスクをもたらします。ハッキングやセキュリティ上の弱点などを利用しようとする悪意のアクターも避けられません。
エコシステムが成熟するにつれ、コミュニティとして油断しないことが肝要です。実際に、私たちは業界が全体として成熟するためには、証明書を真剣に扱うことが必要だと信じています。私たちはサミットで、数多くの戦略的パートナーとともに、新たな標準およびソリューションの作成をサポートする方法を発表します。
自分自身でリサーチを
今まで通り、すべての人に自分自身でリサーチすることを奨励します。仲間のコミュニティメンバーに「クラウドソーシングによるデューデリジェンス」を依頼し、独自の貢献をしてください。オープンで透明性のあるコミュニケーションの実績、適切に維持されたソーシャルチャネルやウェブサイト、および技術的な実績を持つプロジェクトを探してください。特にこの初期の時点では、賢明さを心掛けてください。DAppのセキュリティとプロジェクトの意図に対する信頼性に加えて、DAppの発見もCardanoエコシステムの健全な成長のカギとなります。これに関しても、サミットでの詳細情報を期待してください。
サミットはお祝いの機会でもありますが、これに水を差そうとする人もいます。コミュニティは常に挑戦を誠実に受け入れていますが、偏見や意図的な無知によるTwitterやRedditのFUD(恐怖、不安、疑念)に慣れ過ぎてもいます。すべてのプロジェクトがこの悪意をいくらか受けており、メジャーリリースにはより強い攻撃がつきものです。
これは、この成熟していない業界にとって残念な要素です。幅広い普及を加速したければ、ベターなふるまいが必要です。FUDはこの数週間特に悪意に満ちています。私にとっては、日常業務の一部となっています。幸運なことに、ほとんどの同僚たちは構築に集中し、CryptoTwitter™に振り回されてはいません。
今後数週間にわたり、たくさんのFUDやナンセンスを目にするでしょう。物事は、好転する前に醜悪さが増す傾向があります。でも構いません。これは、否定論者たちが間違っていることを証明するという私たちの決意を強めるだけです。私たちには、決してプロジェクトをサポートし損なうことなく、事実をもって礼儀正しく反応する、活力と熱意に満ちたコミュニティもついています。このことは、Cardanoに取り組むすべての人々がこの上なく誇らしく感じていることです。ありがたいことです。
いまだ初期段階
嵐の中で不動を貫きましょう。そして明るい地平線に集中しましょう。HFCイベントから数時間後には、Cardanoに最初のシンプルなスマートコントラクトスクリプトがデプロイされると予想されます。パブリックテストネットでより洗練されたDAppのロールアウトが始まるまでには今しばらくかかります。舞台裏で何百ものプロジェクトが構築されていることから、9月から10月にかけてそのデプロイが、そして第4四半期を通じてこれが加速されることが予想されます。特に、Plutusアプリケーションバックエンド(PAB)やコミュニティが作成するAPIを含むローンチパッドやツール、フレームワークが利用可能になるにつれてその動きは高まるでしょう。
このアップグレードには大きな期待がかけられています。一部不合理なほどです。Cardanoウォッチャーは、アップグレード直後から利用可能なコンシューマー仕様のDAppの洗練されたエコシステムを期待しているかもしれません。ここで期待を管理する必要があります。2015年7月に稼働した別の有名なブロックチェーンプロジェクトにおいては、最初のDApp(何か猫に関するものと記憶しています)が実際にユーザーの注目を集めるに至るまで、2年以上かかったことを思い出してください。
安定したイテレーションと改良
今後数か月にわたり、2週間ごとの新コードリリースサイクル、定期的な保守アップグレード、そして、四半期ごとのHFCイベントを継続していきます。プラットフォームの調整と最適化、パフォーマンスの調整、価格パラメーターの改善を使用パターンの追跡、監視に従い行っていきます。実際に使用することによってのみ、今後成長が期待される数か月間で、フレキシブルかつスケーラブルなプラットフォームをどのように調整すべきかが明らかになります。また、成長を続ける開発者コミュニティとCardano改善提案(CIP)プロセスにも注目し、主要な要求やニーズに基づく機能をさらに提供します。
Alonzo HFCイベントはPlutus 1.0をデプロイします。これは、今後数か月をかけて進化しながらより多くの機能性をもたらすコアプラットフォームです。PlutusはCardanoのネイティブ言語ですが、もちろん始まりにすぎません。新たなブリッジ、サイドチェーン、そして他のレイヤー2ソリューションが、新鮮なオプションと、さらに幅広い開発者ベースをもたらします。Hydoraで行われている取り組みに起因する将来のアップグレードにより、さらに機能が追加されます。ステーブルコイン、バベルコイン、ステーブルフィーなどに関する論文も、プロトタイプ段階に移り始め、長期的なロードマップに更にイノベーションがもたらされます。
私たちがプラットフォームの長期的なユーティリティの調査開発を続けることに集中するあいだに、エコシステムは今後数か月間で急速に進化します。コミュニティにおける膨大な量のアクティビティで、それはかなり見ものになるでしょう。
エキサイティングな時代がやってくる
Alonzoアップグレードは、開発者、クリエーター、イノベーターのエコシステムの開花を促す、革新的なネットワークのアップグレードです。今月末、Cardanoサミットが開催されます。今週はセッションを詰めます。100を超えるセッションと40時間を超えるコンテンツが、複数のトラックで丸2日間にわたって繰り広げられる、Cardano史上最も重要なイベントになります。仮想空間と現実世界のミートアップで祝う、今日の私たちの立ち位置を反映するショーケースであり、また、どこへ向かっているかについて話すフォーラムです。若いながらも、成熟した偉大な目的を常に示してきた、新進エコシステムの反映。エキサイティングな新発表がなされるプラットフォーム。
今日エポック境界を超えるとき、その瞬間を記念しましょう。1杯や2杯のウィスキー(アジアや南半球の仲間たちには、モーニングコーヒーにちょっとたらすだけだとしても)は許されるでしょう。
ここまで成し遂げてきたことを誇りましょう。ただし、真の仕事はここから始まります。
さあ、行きましょう。
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