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Cardanoの基盤強化:2025年第3四半期の進捗レポート

スケーラビリティや相互運用性から監督や保証に至るまで、IOEの各チームは透明性と説明責任を確保しつつ、Cardanoの基盤強化にフォーカス

2025年 10月 29日 Olga Hryniuk 14 分で読めます

Cardanoの基盤強化:2025年第3四半期の進捗レポート

概要

  • 2025年第3四半期はIOEのプロジェクト全体で着実に前進、スケーラビリティ、保証、コミュニティとの協力に力点
  • UTXO-HDは効率的な台帳ストレージのための主要な統合マイルストーンに達し、Leiosは最初のCIPとエコシステムプロトタイプを通じて進捗
  • Plutus Core v.1.50.0.0は、主要なツールとパフォーマンスのアップデートを提供し、Cardano High Assuranceチームは、Plinthの新機能で形式検証を拡張
  • Hydraはv.1.0.0に達してSDKロードマップを洗練、Acropolisのモジュラーノードは、SanchoNetでのテストを継続
  • この間、KESエージェントの監査を開始、ネストされたトランザクションの設計が成熟、ステークプールインセンティブの改訂調査が進展するなど、Cardanoの長期的なロードマップに向けた、透明性のある、測定可能なイノベーションの四半期となった

Cardanoのビジョンとロードマップに基づいたInput | Output Engineering (IOE)の資金調達提案に対する最近のコミュニティ投票による支持は、単なるリソースの配分以上の意味を持ちます。それは、もっとも重要な技術開発フェーズの一つを通じてプラットフォームを前進させるという、集合的なコミットメントを反映しています。この資金提供により、焦点はロードマップの達成、すなわち、機能性を拡大し、グローバルスケールのアプリケーションのための持続可能な基盤としての Cardanoの役割を強固にするパフォーマンス強化アップグレードの実装へと移ります。同時に、デリバリーは、明確なマイルストーン、透明性のある報告、独立した監視によって導かれ、すべてのステップにおいてコミュニティへの説明責任が保証されます。

この Q3レポートは、コアおよびプロダクトの各種ワークストリーム、ならびに戦略的イニシアチブにおける主要な成果を浮き彫りにしています。

Cardanoコア

UTXO-HD

UTXO-HDのワークストリームは、第 3四半期の初めに、Lightning Memory-Mapped Database(LMDB)への UTXO-HDの統合成功という重要なマイルストーンに達しました。このアプローチにより、Cardanoは台帳データをメモリーだけに頼るのではなく、ディスクに効率的に保存できるようになり、より大きな台帳にも対応できるスケーラビリティが実現します。現在、ディスクベースの LMDBをインメモリーソリューションと比較するための内部パフォーマンスベンチマークが進行中です。

並行して、Log-Structured Merge(LSM)ツリーライブラリーの Cardanoノードへの統合を進めました。この作業により、台帳の更新とスナップショットの変換処理の効率が上がり、メモリー使用量が削減されます。最近のメインネットテストでは、チェーンをリプレイするために必要な RAMはわずか 4GBで済みました。db-analyzerにLSMサポートを追加し、Cardano node v.10.6.0のリリース待ちとなっている、フルノード統合のためのプルリクエストスタックを完了しました。 

Eidos – Cardanoブループリント

Eidosワークストリームは、Cardanoブループリントの開発と進化に焦点を当て、第3四半期を通して順調に進捗しました。取り組みにはプロジェクト成功基準の整合も含まれました。これは、ブループリントの成果物が進行中のCardano開発を確実にサポートすることを意図したものです。

コミュニティとは、ブループリントに関する意見をみるためのアンケートを含む、フィードバックの収集という形で関わりました。ブループリント作成強化におけるAIの利用を検討しました。具体的には、より広範な開発者が利用できるようHaskellおよびAgdaのコンテンツをアクセスしやすいマークダウンに変換するにあたり、大規模言語モデルをどのように使えるかを調査しました。現在ライセンスを調達し、実装計画を進めています。プロダクトへの統合が優先事項であることは変わらず、ブループリントを将来のプロダクト要件文書(PRD)に組み込み、関連する Cardanoチームへの引き渡しを合理化することを目指しています。 

Cardanoプロダクト

Leios 24/7

Cardanoの主要なコンセンサスアップグレードである Leiosは、一貫して順調に進捗し、8月に最初の Cardano改善提案(CIP)が公開されたことで、勝負所となるフェーズに入りました。コンセンサス、台帳、暗号チームは、影響分析を完了または進めました。一方、Haskellベースのシミュレーターは、さまざまな Plutusのワークロードの下で Linear Leiosのパフォーマンスを検証するのに役立ちました。

コミュニティおよびベンダーとの関与は強力であることが証明されました。TxPipeは Leiosのサポートとレビューに関する作業範囲記述書(SOW)に署名しました。一方、BlinkLabsSerokellも分析とフィードバックで貢献しました。同時に、開発ダッシュボードが最初のリリースを達成し、Leiosのメトリクスと APIが可視化されました。これは、Token2049で発表されました。

喫緊の優先事項は、影響分析レポートを完了すること、パートナーとのCIPレビューを進めること、ドラフト仕様を実行可能なロードマップ項目に変換することです。Leiosの go-to-marketアプローチ、プロダクトの目標、コミュニケーションに関する戦略的計画は引き続き進行中です。

Plutus Core

Plutus Coreのワークストリームは、第3四半期を通して順調に進捗し、チームはコア言語の強化、最適化、ツールの改善に焦点を当てました。主要な成果には、ブール値、整数、リスト、ペア、ユニットに対するケーシングサポートの実装、不要な組み込み関数の削除、BuiltinValueの実装の進捗が含まれます。コストモデルの更新、特殊化された ArgStackの最適化、配列の逆シリアル化と BuiltinValueの予備的なベンチマーキングによって、パフォーマンスが改善されました。

ツールとインフラに関する作業は、新しい組み込み関数のためのエンドツーエンドテストおよび適合性テスト、バインドトレーシング、コールトレース機能、定義されたベンチマーキングシナリオを含むUPLC比較アーティファクトパフォーマンス評価(CAPE)の立ち上げなどで進捗しました。Plutusバージョン 1.50.0.0がリリースされ、依存関係が更新されました。また、AI/Plutusの統合について検討しました。ドキュメント作成とオンボーディングも進捗し、新しいユーザーガイドリソースや課題テンプレートが開発されたほか、フルタイムのエンジニアが新たに加わりました。さらに、MLabsとスコープを定めたCIP-121プリミティブのための作業範囲記述書の作成を開始しました。

UPLC 2025ワークショップに向けて重要な準備が行われました。これには、参加者登録、内部調整、エディンバラ大学とのロジスティクス、ブランディング、ウェブサイトとランディングページの開発、イベント資料のデザインが含まれます。 

Cardano High Assurance (CHA)

CHA(Cardano高保証)に関する作業は、複数の側面で進捗しました。自動形式検証チームは、台帳ルールの形式化を進めるとともに、VS Code拡張機能のための新機能を提供しました。Glyph(UPLC/RISC-V)は組み込み関数のサポートを拡大し、アクセス可能性を高めるためにそのリポジトリを公開しました。トランザクション監視や特性ベーステストを含む他のイニシアチブは、アイデア創出フェーズに留まっており、将来の開発パスを定義するためにベンダーとスコープ調整を進めています。 

静的解析のための概念実証マイルストーンを達成し、セキュリティと信頼性に焦点を当てた 4つの脆弱性チェックを実装する静的コードアナライザーをPlinth内に構築しました。これらのチェックはオンチェーンコードで検証されています。このツールは Haskell Language Server(HLS)に統合することができ(また統合されており)、メインブランチにマージできます。

Acropolis

モジュラーノードアーキテクチャーの構築に焦点を当てたAcropolisプロジェクトは、7月から9月にかけて大きく進展しました。報酬ステートの追跡は、SanchoNetでテストから実装へと移行しました。REST APIに関する作業は進展し、主要なリファクタリングが完了し、Blockfrostスキーマとより密接に整合させるために新しいエンドポイントが複数追加されました。インフラに関しては、重大なメモリー使用量の課題に対処し、すべてのモジュールでパフォーマンス計測を実装しました。よりスマートなMithril Fetcherやpause-on-blockサポートといった改善は、システムの柔軟性を高めました。

今後、Acropolisは引き続き報酬計算を洗練させ、Blockfrostエンドポイントを拡張し、APIの整合を完了させる予定です。 

Hydra

この四半期を通して、Hydraに関する作業は、Midnight Glacier Dropのサポートに主眼を置きつつ順調に進捗しました。Hydraバージョン0.22.3をリリースして、外部のHydraヘッドネットワークオペレーター全体をアップグレードしました。その後、0.22.4が続き、キュー処理とメッセージスパムに関する重要な修正を導入しました。Hydra統合を伴うGlacier Dropのテストは、プリプロ環境とメインネットで実行されました。現在、最新リリースであるv.1.0.0が公開されています。

デリバリーサポートはもちろん、プロダクトへのフォーカスを強化しました。取り組みには、バックログの整理、ロードマップの洗練、エコシステムパートナーとのHydra SDKオプションの早期評価が含まれます。

KESエージェント

KESエージェントのワークストリームは、CardanoにKES(鍵変化型署名)機能を統合することに焦点を当てました。これは、Mithrilプロトコルをサポートする方法でブロックの保護と署名を行うために不可欠なコンポーネントです。署名操作を専用のエージェントを介して外部で処理することで、セキュリティと柔軟性が向上し、長期間にわたる秘密が暴露されるリスクなくノードが安全に鍵をローテーションできるようになります。この作業には、実装が高保証基準を満たしていることを確実にするための徹底的なセキュリティ監査の調整も含まれています。

この期間中の進捗には、KESエージェントのouroboros-consensusへのマージ、ソケットを介したセキュアな署名のためのMithrilインターフェイスの定義、およびCHaPへの初期APIバージョンのリリースが含まれます。また、Bcrypticとの監査契約を完了し、コードウォークスルーを実施しました。そして、Leiosのような他のCardanoイニシアチブに関連するBLS署名のためのCバインディングを開始しました。テストと統合は順調に進みましたが、監査の開始が遅れたことやcardano-node-10.6のリリース待ちといった外的な要因により、最終的なデリバリーには遅延が生じました。

ネストされたトランザクション(Babelフィー)

ネストされたトランザクション(Babelフィー)のワークストリームは、基盤となる研究とドキュメント作成を進め、本報告期間全体を通じて「スコープ調整」のステータスを維持しました。Babelフィー PRDのドラフト作成作業は進み、2025年10月には、より広範なエコシステムおよび協力者によるレビューのためにバージョン 1.0が予定されています。スマートコントラクトベースのアプローチと台帳ベースのアプローチを比較する設計分析を実施しました。その結果、ネストされたトランザクションは、分散型金融(DeFi)アプリケーションがユーザーの意図を満たすために競合するオープンなマーケットプレイスのユースケースにおいて、最大価値を提供すると結論づけました。 

TxPipe、Aquarium、Harmonic Labs、およびBitcoinDeFi/BitcoinVMXプロジェクトとの会議を通じて、ネストされたトランザクションの潜在的なアプリケーションとユースケースについて議論が交わされ、外部との関与が拡大しました。

ステークプールインセンティブの改訂

データ主導の分析とステークプールオペレーター(SPO)の関与が、このワークストリームのバックボーンを形成しました。SPOの分布と傾向をよりよく理解するためのクエリとチャートを作成し、日本のSPOなど、コミュニティとのフォーカスグループの運営に取り組みました。現在、インセンティブスキームに関する問題を特定する最初のマイルストーンドラフトを準備中です。

透明性と成長の維持

最後に、BCrypticとのKESエージェント監査の開始や、Dquadrantとの議論を含むより広範な第三者保証のための調達開始を通じて、監査と保証を進めました。

全体として、2025年第3四半期は、トレジャリー資金提供を受けたIOEワークストリーム全体で着実な進捗を示しました。UTXOスケーラビリティの推進や新しいコンセンサスメカニズムの統合から、インセンティブの形式化や相互運用性フレームワークの構築に至るまで、チームはCardanoの次の成長フェーズのための基盤を築きました。これらのイニシアチブは、監視と独立した監査とともに、透明性、説明責任、コミュニティの信頼に対する継続的なコミットメントを強調しています。