アイデアから実装まで:IO研究開発の考察
Input | Output R&D部門の最新のブレイクスルーが、革新的なソリューションと厳格な学術研究でCardanoの未来を形成
2025年 8月 26日 12 分で読めます
ブロックチェーン技術がグローバルインフラの基盤レイヤーに進化するにつれて、堅牢性、スケーラビリティ、関連性を確保するために不可欠となるのが厳格な研究開発である。Input | Output (IO)では、研究は理論に限定されない。それは、Cardanoのような安全で高性能なシステムの背後にあるエンジンとなる。
IOは、形式手法と数学的証明を活用してセキュリティ、正しさ、適応性をサポートする回復力のあるシステムを構築し、コアプロトコルが設計により正しくなることを保証するためにエビデンスベースのエンジニアリングを使う。この科学的アプローチは、分散型のIDやガバナンスから、クロスチェーンの相互運用性や大規模な計算まで、幅広いユースケースをサポートしており、デジタルファイナンスを超えた分散型の未来への基盤を築いている。
このブログ記事では、IOのR&D(研究開発)部門の最近の成果に焦点を当てている。R&Dは、基礎研究を実用品へと変換し、革新へのコミットメントを促進し、分散型システムの未来を形作る。
R&Dのプロセスと方法論
R&D部門は、2024年初頭に明確な目標を掲げて設立された。
- エンドユーザーへの研究成果の迅速な提供
- 主要な関係者とのコミュニケーション強化
- 実装時の障害リスクの軽減
研究チームは、NASAで開発され、現在では研究とエンジニアリングの分野で広く採用されている技術成熟度レベル(TRL)フレームワークを、科学イノベーションと応用研究の文脈により適したものにした。この応用モデル、ソフトウェア成熟度レベル(Software Readiness Levels:SRL)フレームワークは、初期の理論的作業(基本的なモデルとセキュリティ証明の開発)から検証(シミュレーション、プロトタイプ、仕様を介して実現可能性をテスト)を経て、ターゲット実装(エンジニアリングチームが研究成果に基づいて実稼働可能なシステムを構築)に至るまで、アイデアが成熟していく様子を説明する。
R&D部門は継続的な改善にコミットしており、その研究の根拠や検証方法を説明するために明確なプロセスに従っている。例えば、Cardanoでは、一部のR&D作業はCPS(Cardano問題提起)の提案から始まり、それが承認されればCIP(Cardano改善提案)へと進む。この部門は、Leios技術の検証作業ストリームを旗艦プロジェクトとして、オープンリポジトリと月次の動画/放送でのアップデートを特徴とする、公開での開発をますます進めている。
最近の成果
設立以来、R&D部門は急速に拡大し、アーキテクト、ソフトウェアエンジニア、形式手法エンジニア、応用暗号作成者からなる35人のダイナミックなチームとなった今、イノベーションと専門知識を促進する協力的な環境を育成している。チームは、最近達成したいくつかの重要なマイルストーンを誇りに思っている。
- Ouroboros Peras:このストリームでは、Cardanoに迅速なファイナリティをもたらすプロトコルバージョンOuroboros Peras(ウロボロスぺラス)実装の検証と推奨に焦点を当てている。Perasはビザンチンフォールトトレラント(BFT)投票メカニズムを導入することで、Nakamoto型コンセンサスを強化している。参加者は過去のブロックに投票し、ブロックが十分な投票を受けると「ブースト」が与えられ、複数の確認を待たずに迅速な決済が可能になる。このアプローチは、強力なセキュリティ保証を維持しながら、ファイナリティに至るまでの時間を大幅に短縮する。Perasは最大50%の敵対的ステークを容認することができ、敵対者の保有率が25%以下の場合には決済時間が一定になることが期待できる。また、動的な参加をサポートし、敵対者が過半数を超えても短期間であれば回復することができる。
- Ouroboros Leios:このストリームは、ハイスループットに主眼を置くCardanoコンセンサスプロトコルのメジャーアップグレードOuroboros Leios(ウロボロスレイオス)の開発をサポートしており、今後数か月以内にCIPが提案される予定である。Leiosは、分散化とセキュリティを維持しながら、スケーラビリティとスループットを大幅に向上させるべく設計されている。通信とデータ交換のボトルネックに対処するために、並列処理を実現する並行ブロックチェーン構造を導入する。Leiosは、インプットブロック、裏書ブロック、ランク付けブロックの3層ブロックシステムを使用して、トランザクションの並列検証と順序付けを可能にし、データ、スクリプト、トランザクション全体のパフォーマンスを大幅に向上させる。Cardanoの拡張UTXOモデルに合わせて調整され、最大50%までの敵対的ステーク耐性を持ち、現在のプロトコルへのフォールバックメカニズムを含むことで回復力を高めている。
- Cardinalプロトコル:ビットコインとCardano間にミニマルトラストなブリッジを提供し、OrdinalsなどのBitcoin UTXOをネイティブのようなCardano資産として安全にラッピングできるようにする。ラッピングされたトークンは元のビットコインとの1対1のペグを維持し、資産をビットコインに戻すためにバーン(破棄)することができる。Cardinalはオペレーターグループによって管理されるが、そのうち少なくとも1人が正直に行動する限り、セキュリティを維持できる。スラッシングを伴う固定ステークモデルを使用しており、流動性プロバイダーや比例担保を不要にしている。このシステムはBitVMXとMuSig2を用いた検証可能で安全な転送をサポートしており、再帰的な状態証明による完全なトラストレスの実現を長期的な目標としている。
- CIP-0118(ネストされたトランザクション):この提案では、ネストされたトランザクションをサポートする検証ゾーンを導入し、Babelフィーやインテントベースのサービスのようなユースケースを可能にする。これにより、トランザクションに部分的に指定されたサブトランザクションを含めることができ、トランザクションは後続のサブトランザクションで完了するため、ユーザーはADAを保持せずに取引を行うことができる。このアプローチはスマートコントラクトの開発を簡素化し、Cardanoへのアクセスを拡大させる。これは、一部のPlutusベースの設計よりもクリーンなソリューションを提供するかもしれないが、台帳の複雑さ、ツールの影響、集中化効果の可能性に関する懸念は残っている。現在、コミュニティでの議論と評価が進行中である。
- CIP:Ouroboros Φalanx(グラインド攻撃の回避):Cardanoコンセンサスプロトコルの本アップグレードは、グラインド攻撃に対する耐性を強化し、リーダー選挙の公平性を向上させる。Φalanx(ファランクス)は2つのエポックに渡ってナンス生成を拡張し、クラス群に基づく検証可能遅延関数(VDF)を導入している。これにより、敵がランダム性を偏らせたりスロットリーダーシップを操作したりすることがはるかに困難になる。分散型VDF計算をサポートし、Praosへのフォールバックも含むことで、誠実なノードの効率的を確保する。シミュレーションでは、特に高い敵対的ステークの下で、些細な攻撃が大幅に減少し、決済の信頼性が向上することが示されている。
- Jolteon:Jolteon(ジョルトン)は、Cardanoパートナーチェーンで使用するためにAGDAで形式化された、ネットワーク適応型BFTコンセンサスプロトコルだ。この形式化には、活性証明、決定可能性の結果、構成的に健全なトレース検証ツール、適合性テストが含まれる。安全性はすでに証明されており、チームはコンセンサスプロトコルに形式手法を適用するためのより広範な方法論を開発している。すなわち、まずStreamletの最小設定で試し、現在はそれをJolteonのより現実的なケースに拡張している。また、これに関連する論文および講演が公開されている。Jolteonの厳格な形式基盤は、パートナーチェーンの安全で信頼できるプロトコルとして推奨される。
- Plutus-Halo2:このイニシアチブは、Cardano、特にHalo2上の再帰的ゼロ知識証明のオンチェーン検証におけるブレークスルーを提示するものだ。これにはRustベースのHalo2回路をPlutusスクリプトに変換するトランスペラーが含まれており、乗算やATM署名などの操作をサポートする。plutus-halo2-pocやplutus-halo2-recursion-splittedなどのプロトタイプでは、オンチェーン制限内でモノリシック検証とマルチスクリプト検証を行い、Cardanoプリプロネットワークでテストしている。この作業は、CardanoのサポートをDeFiとDAppにおけるプライベートでスケーラブルな計算のために拡張しており、まもなくオープンソースコードがリリースされる予定である。
- パートナーチェーンのリステーキングフレームワーク:ステーキングされたADAを再利用し、既存のSPOインフラを活用することで、流動性プールや新しい担保を必要とせずに、パートナーチェーン全体でセキュリティを共有できる概念的なフレームワーク。パートナーチェーンツールキット(アルファv1)で導入されたこのモデルは、混合バリデーター委員会と柔軟なコンセンサス設計をサポートし、Midnightのようなチェーンが複数のエコシステムから報酬やリソースを統合しながら、Cardanoのセキュリティを継承できるようにする。信頼の前提条件を最小限に抑え(正直なオペレーターが1人いれば十分)、不正行為に対するスラッシングをサポートし、Cardinalのようなブリッジを介したトラストレスな相互運用性を可能にする。Cardanoのステーク分布を再利用してインセンティブを調整し、セットアップコストを削減することで、このモデルはプライバシーを重視したイノベーションを促進し、Ouroborosの保証をフォールバックにすることでエコシステムの回復力を強化する。
今後の予定
Input | Output Researchは毎月第1火曜日に、Intersect研究ワーキンググループと協力して、Cardano R&Dセッションを開催している。これらの研究主導の会議は、より広いコミュニティとの戦略的な協力とエンゲージメントを促進する。
現在進行中のR&Dの最新情報に注目し、Cardanoの未来を形作る最新の進歩を探るための会話にぜひ参加登録して欲しい。
最新の記事
Input | Output Researchがコミュニティに年度中間研究報告へのフィードバックを呼びかけ 筆者: Ivan Irakoze
29 August 2025
アイデアから実装まで:IO研究開発の考察 筆者: Nicolas Biri
26 August 2025
Cardanoのためのゼロ知識証明が実現:Halo2-Plutus検証ツール 筆者: Kris Bennett
26 August 2025