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Cardanoエコシステムにおけるセキュリティの民主化:完全な開発ライフサイクル

Input | Output Engineeringが、すべてのCardano開発者が高保証の開発を利用できるようにするための統合ツールスイートを構築中

2025年 7月 30日 Joseph Fajen 10 分で読めます

Cardanoエコシステムにおけるセキュリティの民主化:完全な開発ライフサイクル

Cardanoのスマートコントラクトの中には、高価値トランザクションを伴うものもある。多くの開発者は今でも従来のソフトウェア開発で一般的に使われているセキュリティ対策に依存している。手動でのコードレビュー、ユニットテスト、外部監査はバグやその他の問題を特定するのに効果的であるが、スマートコントラクトは新たな固有の課題を提起する。例えば、誤った、または悪意のあるスマートコントラクトコードは、不可逆的な損失につながる可能性がある。

より高度なセキュリティ技術は、より広範なオプションを提示し、それぞれが利点と課題を提供する。形式検証はコントラクトの正しさを数学的に証明するが、専門知識が要求される。プロパティベースのテストでアクセシビリティは拡大されるが、完全なカバレッジを保証するものではない。静的解析は一般的なコーディングエラーを特定できるが、微妙な論理的欠陥は検出できない可能性がある。同様に、トランザクション監視による問題の特定は、ライブネットワーク上で明らかになってから初めて行われる。

Cardanoのスマートコントラクトセキュリティを再考する

今日、スマートコントラクト開発を始めると、一般に、環境設定、ツールの断片化、形式手法の急な学習曲線と格闘することになる。安全なコードを書くために、開発者が形式検証の専門家となる必要はない。スマートコントラクトのセキュリティを決定するには、よりターゲットを絞った統合的なアプローチが必要であるが、ここで重要な問いが生じる。すなわち、これらすべての方法論をまとまりのあるセキュリティフレームワークに統合するにはどうすればよいかという問いだ。

これは、開発者リソースの現在のギャップに対処するだけでなく、将来にわたってCardanoのセキュリティを維持するための成熟し且つ進化し続ける、統合されたツールセット作成を目指して、Cardanoエコシステムのための包括的なツールスイートを開発するためである。

Cardanoの包括的なセキュリティエコシステム

これらの欠点に正面から取り組むために、Input | Output Engineering (IOE)は、Cardano開発のより包括的なライフサイクルをサポートする一連のツールを開発している。AIをツールに直接組み込むことで、開発者は平易な言葉で要件を記述し、それらのアイデアを機械的にチェック可能な仕様に正確に変換することができる。

AIは開発者エクスペリエンス(DX)、すなわち、開発者がツール、プラットフォーム、APIを使用する際の全般的な経験を再形成している。IOEはAIを活用して、UIの観点とより広い相互作用の観点の両方からこの体験を再設計し、普及の障壁と摩擦を減らしている。同時に、開発者をより効果的にサポートするために、チームはパーソナライズ可能なコンテキスト認識型サービスと製品ドキュメントを開発している。

これらのツールは開発プロセス全体で相互作用するように設計されており、初期コード分析からデプロイ監視や継続的なセキュリティ監視までカバーしている。

このエコシステムの基盤には、開発者が直面する主な課題に対処する4つのコアセキュリティツールがある。

  • 自動形式検証ツールは、Lean4およびSMTソルバーを使用して、専門的なトレーニングなしでコントラクトの正確性の数学的証明を開発者が利用できるようにすることを目的としている。
  • プロパティベーステストツールは、自動的に生成されたインプットとシナリオを通じてコントラクトの動作を調査し、開発者が手動テストで見逃している可能性のあるエッジケースを発見するのを助ける。
  • 静的分析は、最小限の設定で一般的な脆弱性とパフォーマンスの問題を特定する開発ツールとして機能する。
  • トランザクション監視システムは、機械学習アルゴリズムを使用してデプロイされたコントラクトを監視し、異常なパターンと潜在的な不正行為をリアルタイムで検出する。

この戦略の背後にあるビジョンは明確である。すなわちCardanoを真に開発者に優しい将来性のあるプラットフォーム、言語の多様性を受け入れ、安全な開発を簡素化し、ビットコインのような他のエコシステムへの道を開くプラットフォームに変えることだ。その核心となるのは、摩擦を減らし安心感を高めることである。

これは使いやすさだけにとどまらない。相互運用性とパフォーマンスに向けた意図的な動きがある。単独で構築するのではなく、これらのツールを使えば、コントラクトが負荷の下で、またHydraのようなサイドチェーン内でどのように動作するかをより簡単に確認できる。また、RISC-Vのコンパイルサポートにより、Cardano向けに書かれたスマートコントラクトは、2つの主要チェーンを有意義に橋渡しする。

何よりも、これは単に優れたツールの開発というだけはなく、DXを再構築することである。それは、AIを活用し、明瞭性を重視して設計され、マルチチェーンの未来を見据えて構築されるものだ。

これらのツールは、初期コーディングからテスト、検証、デプロイ、継続的な監視に至るまで、開発ライフサイクル全体にわたって統合される。複雑なセキュリティプロセスを自動化し、アクセス可能なインターフェイスを提供することで、開発者が形式手法の素養を問われることなく、高度なセキュリティ技術を利用できるようにすると同時に、セキュリティの専門家が必要とする深さも提供することを目指している。

高保証開発の民主化

ここではアクセス性と厳密性について掘り下げる。従来のアプローチでは、開発者は限定的な保証でアクセス可能なツールを使用するか、厳密な形式手法を使用するために専門的な知識に多額の投資をするかの選択を迫られる。Input | Outputの統合アプローチは、開発者のセキュリティ要件に対し、よりアクセスしやすく包括的なツールを提供することで、究極的には、他のブロックチェーンで利用可能な開発者ツールよりも成熟した環境を築くことを目指している。

初めてCardano DAppを構築する開発者でも、静的分析とプロパティベースのテストを使用して、これまで専門的な知識を必要としたセキュリティレベルを達成できる。開発者は自信と要求の高まりに応じて、未知のツールチェーンやアプローチについて学ぶことなく、形式検証をシームレスに採用することができる。

一方、セキュリティ専門家は、新しいセキュリティプロパティを定義する、自動化の限界を超えたエッジケースを処理する、自動検証の限界を押し上げるなど、最も価値を高められるところに専門知識を集中させることができる。

研究から現実へ

これらのツールは、実用性に焦点を当てた、厳密な学術研究から生まれた。形式検証ツールは自動定理証明とSMT解法における数十年におよぶ進歩に基づいている。プロパティベーステストのアプローチは、体系的テストと、モデルに基づく検証に関する広範な文献から引き出されたものだ。静的分析には、長年の監査経験を通じて蓄積されたブロックチェーンセキュリティパターンに関するドメイン固有の知識が組み込まれている。

それでも、各ツールが優先するのは開発者エクスペリエンスと実用的なデプロイだ。形式検証ツールは直感的なアノテーションの背後にあるLean4の複雑さを隠す。プロパティベースのテストツールは、既存の開発ワークフローにシームレスに統合される。静的分析は、設定や専門知識を必要としない。

このバランスは、高度な数学的技術は開発者の能力を高めるべきであり、開発者の判断に取って代わるものではないという、より広い哲学を反映している。

今後の展望:ブロックチェーンセキュリティの新しい標準

これらのツールが成熟して統合されていくにつれて、ブロックチェーンセキュリティの新しい標準の確立という方向が見えてくる。包括的なテストスイートと静的分析が従来のソフトウェア開発においてプロとしてのベースラインプラクティスとなったように、これらのツールはスマートコントラクト開発でも同様の厳密さを達成可能にする。

形式検証が可能になれば、高価値のコントラクトの監査と保護において重要な役割を果たすことになる。これは、より高いセキュリティ基準が技術的負荷となるよりも経済的に有利になるという好循環を促す可能性がある。

これらのツールは、2025年を通じて段階的にリリースされる予定だ。形式検証は、まずPlinthを対象とし、その後Aikenや他のCardanoスマートコントラクト言語をサポートするように拡大していく。各リリースには、高度なセキュリティ技術をCardano開発者コミュニティ全体が利用できるようにするための、包括的なドキュメントと例が含まれる。

Cardano High Assuranceチームは、ツールの詳細を説明するための開発者ブログ記事シリーズを始めている。

現在、近い将来にこれらのツールをオープンソース化するための準備を進めている。プロダクショングレードのツールを提供するための商業的イニシアチブに興味がある場合は、IOのCardano High AssuranceプロダクトマネージャーのStefano Leoneまで連絡して欲しい。リリース日とコラボレーションの機会は随時更新予定。