Cardanoは、数年に及ぶ厳密な研究に基づいて構築された第三世代ブロックチェーンであり、Ouroborosコンセンサスプロトコルと拡張UTXO(EUTXO)台帳モデルを初めとする複雑なテクニカルコンポーネントを使って開発されている。
研究および形式手法が強力な基盤を提供しているが、Cardanoの詳細な仕組みを理解することは、一部のコミュニティメンバーにとってハードルが高い。文書化しても、必ずしも見つけやすい、理解しやすいものになるとも限らない。
そこで、新しい重要なイニシアチブが登場した。それが、Cardano Bluprintだ。
Cardano Bluprintの目的
Cardano Bluprintの主目的は、Cardanoブロックチェーンの知識基盤を作ることである。目標は、プロトコル文書と仕様書を、特定の実装に縛られず、より幅広い層が利用できるようにすることだ。この「層」には、現在または将来のCardanoノード実装に取り組む開発者、アプリケーション作成者、インテグレーター、そして、Cardanoブロックチェーンの技術的理解を深めたいと望むすべての人々が含まれる。
最終的には、この方法で知識を共有することがノードの多様性(Cardanoコアロジックのさまざまなソフトウェア実装)をサポートし、ソフトウェアスタックが進化してもCardanoブロックチェーンのセキュリティと分散性を維持できるようにするために不可欠となる。
このイニシアチブの必要性
cardano-node
と呼ばれる現在のCardanoネットワーク主要コンポーネントのリファレンス実装は、8年以上にわたり開発されてきた。基礎となるコンセプトはしっかりと研究され文書化されてきたが、この情報へのアクセスやその理解は困難だ。なぜならこれは複数のリポジトリにバラバラに格納され、さまざまな形式で、時には非常にテクニカルな言語で提示されており、場合によってはHaskellプログラミング言語による実装用の詳細と混ざっているためだ。
Bluprintプロジェクトは以下のようなリソースのセットを生成することを目標としている。
- 幅広い人々に理解可能
- Cardanoコミュニティによる集合的所有
- リファレンス実装としてだけでなく、さまざまな実装に取り組む開発者に有用
このコンテクストにおける「ブループリント」の意味
すべての人に適した単一の形式、スタイル、仕様タイプというものは存在しない。「ブループリント」は、Cardanoプロトコルの仕組みを説明する特定の実装に依存しないさまざまなアセットを示している。これには以下が含まれる。
- 説明と描写
- プロセスや構造の図解
- インターフェイスの仕様(異なるパーツがどのように通信するか)
- テストデータとテストシナリオ
どのような形式であっても、これらのブループリントは以下の主要なバリューを厳守する。
- アクセシビリティ:明確な言語、読みやすいフォーマット、維持可能な図を使用する
- オープン性:共通のツールを使用して、異なるバックグラウンドを持つ人々が簡単に貢献できるようにする
- ミニマルアプローチ:特定の実装の詳細よりも、必要とされるプロトコルの機能と動作の説明に集中する
- 軽量:テスト、使用、参照がしやすいものにする
- エビデンスベース:テストシナリオ、テストデータ、シミュレーション、モデルといったリソースにサポートされている
こうしたブループリントの例としては、ネットワークプロトコル、コンセンサスアルゴリズム、ブロックとトランザクションの形式に関する説明が挙げられる。これらは、Markdownのようなシンプルな形式で書かれ、検索可能なウェブサイトとして表示され、インタラクティブな図解が含まれることもある。また、これらはテストデータセットの概要、JSONスキーマ、または定義といった、価値あるリソースも提供できる。
CIP(Cardano改善提案)との関係
CIPプロセスはCardanoネットワークの新機能を提案し、議論し、承認するための確立されたメソッドだ。CIPはこの目的において効果的で、Cardano Bluprintと多くの価値観を共有している。
CIPは変更を議論するために非常に有用だが、Cardano Bluprintはこうした議論の結果をその知識基盤として提示する。また、これがCardanoプロトコルを構成するものについて「集約的」な視点を提供する一方、CIPはそこに至るまでの個々の決定を文書化している。
しかし、Cardano BluprintプロジェクトはCIPプロセスと密接に統合されることになる。CIPは新機能を提案、議論する主要なフォーラムであり続ける一方で、Cardano Bluprintプロジェクトはそれ自身がCIPとして提示、承認される可能性すらある。これにより、コミュニティがその地位を最終的に承認する権限を持つことになる。さらに、CIPは、その開発経路の一部として、ブループリント文書に更新内容を含める場合もある。
結論
Cardano Blueprintは、Cardanoを支える深い技術知識を、よりアクセスや理解しやすく、集合的に所有されるものにするための取り組みを代表するものだ。ホスト先をGitHubにし、プルリクエストやイシューなど、なじみ深いオープンソースの貢献プロセスを活用することで、真にコミュニティ主導の取り組みにできるようにしている。
明確かつ特定の実装に依存しない文書とリソースを作成することによって、幅広い個人がCardanoプロトコルに関わり構築し、ネットワークのセキュリティと分散性を強化することを目指している。