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IORによるSPOのための研究フレームワークの概要

Input | Output Research (IOR) がCardanoステークプールオペレーターのエンパワメントを目的としたロードマップの概要を紹介。2025年5月1日のSPO会議で提示されたインフラセキュリティ、スケーラビリティ、トークノミクス、ガバナンスなど主要な研究目標をまとめた新フレームワークとは

2025年 6月 19日 Fergie Miller 13 分で読めます

IORによるSPOのための研究フレームワークの概要

SPOはCardanoの心臓だ。エコシステムが拡張していくネットワークの背骨ともいえる。私たちがスケールアップし、成長していくにつれ、ユーザーやビルダー、ガバナンスイノベーターだけでなく、チェーンを5年間にわたり後押ししてきたSPOをサポートすることが必須である。

2025年Cardano予算の一環として、IORは5月1日に開催されたSPO会議に参加し、SPOに関連するR&Dストリームを提示した。その洞察は重要であり、コミュニティが協働して未来を形作るうえで、新時代にSPOをなることが持つ意味をより良いものにしていくための助けとなるはずだ。

分散型ガバナンスが今や現実のものとなり、SPOは、より幅広い委任代表(DRep)のコミュニティとともに、重要な意思決定をする上で、先導役を努めることになるだろう。Input | Outputが従来から長期的な学術研究に焦点を当ててきた一方、IORはこの18か月間、コミュニティのニーズに根ざした実世界の実装と基礎研究をつなぐ取り組みに邁進してきた。LeiosPerasといったプロジェクトは、深い技術的研究とコミュニティ主導のイノベーションを結び付ける最近の例だ。

この進化の一環として、IORはSPOコミュニティとより密接にかかわる新しい方法を積極的に模索している。すなわち、プロトコルの未来に彼らの優先するものがきちんと反映されるよう、適切なチャネルや会話、コラボレーションを見つけようとしている。すでにいくつか早期の接触を始めており、この取り組みを一緒に広げていくことを楽しみにしている。

これを待つ間に、Cardano Visonのもとに2025年ロードマップの中で私たちが提案した、SPOやネットワークに焦点を当てた長期的なイニシアチブについて紹介したい。

SPOインフラセキュリティ

SPOインフラの堅牢なセキュリティ確保は、進化する脅威に対するCardanoの信頼、安定性、回復力を維持するうえで欠かせない。対象を絞った研究ストリームの中には、SPOのセキュリティ対策を直接サポートするものが含まれる。

ポスト量子ランドスケープ(PQL-1、PQL-2)

台頭する量子コンピューティングの能力は、既存の暗号規格を危殆化させる可能性がある。PQL-1はポスト量子の安全な暗号プリミティブの開発と、量子敵対者に対するCardano主要プロトコルの評価に焦点を当て、長期にわたるSPOインフラの安全性を確保する。PQL-2は量子技術によってブロックチェーンのセキュリティとパフォーマンスを強化する方法を模索し、主要な管理と、将来の暗号的脆弱性に対してより強力な保護を提供する高度な暗号署名の新たなメソッドを提供する。

ビザンチン耐性ネットワーク(OO-4)

ノードが悪意のある、あるいは予測不能な挙動を示すビザンチン障害に対して、Cardanoを支えるネットワーク層の回復力を強化することを目指す。SPOは、エクリプス攻撃やDoS攻撃などを軽減するよう設計された、改良型ネットワークプロトコルから直接恩恵を得ることになる。トランザクション伝播をセキュアにするための実践的な強化策を提供し、敵対的なネットワーク条件下でもSPOの運営継続性を保証する。

ロケーションベースのサービスおよびスマートコントラクト(WOS-6)

ネットワークノードの地理的分散性を検証し、インセンティブを与えるメカニズムを提案する。SPOの地理情報をインセンティブと報酬構造に組み込むことによって、ネットワークは地理的分散を奨励し、システムの脆弱性を軽減させる。このアプローチは、地域的なシステム障害、地政学的な干渉、ノード集中を狙った攻撃に対する堅牢性を向上させ、Cardanoのセキュリティ全体をダイレクトに強化する。

インフラの効率とスケーラビリティ

効率とスケーラビリティの向上は、SPOによるネットワーク使用量増加のサポート、競争力のある運営の維持、リソースを効率的に管理しながらの多様なサービルの提供を可能にするうえで欠かせない。

Pub/Subコミュニケーション(WOS-5)

分散型エコシステム内の非効率なコミュニケーションに対処する。堅牢で安全、ビザンチン耐性を持つPub/Sub(パブリッシャー/サブスクライバー)プロトコルを開発することで、SPOはノード、スマートコントラクト、DApp、ステークホルダーとの、より効率的、合理的なインタラクションを実現できる。コミュニケーションの効率を改善することでSPOのリソース負荷を著しく軽減し、ノードは低オーバーヘッドでもトランザクション処理や更新処理が可能になる。

分散型ストレージ(WOS-4)

成長を続けるブロックチェーンにより示された課題に対処するこの研究ストリームは、ビザンチン障害に耐性のある分散型ストレージソリューションを検討する。SPOはセキュアで障害耐性を持つ分散型ストレージメカニズムから恩恵を得る。これは、データ管理を最適化し、ストレージオーバーヘッドを減少させながらブロックチェーンデータの回復性とアクセシビリティを強化するからだ。これにより、SPOのインフラは、ブロックチェーンの飛躍的な成長にもかかわらず維持可能となる。

Leios(OO-2)

Leiosは、SPOノードリソース(帯域幅、CPU、メモリー)に比例して、ネットワークスループットを最大化することに焦点を当てている。帯域幅、CPU、メモリーなどの参加ノードの能力に直接スループットを合わせることで、SPOはハードウェアへの投資を効果的に活用し、トランザクション処理能力を大幅に向上させ、ネットワーク全体の効率を改善することができる。これにより、SPOは自らのインフラを需要の高まりに合わせてシームレスにスケールアップできる。

Cardanoシャーディング(OO-8)

複数のノードにブロックチェーンデータと検証タスクを配分することにより、水平スケーラビリティを実装しようとする試みだ。SPOは特定のタスクやサービス提供に特化することで、より多様なブロックチェーン操作とサービスを効率的にサポートできるようになる。シャーディングにより、追加のノードを投入することでパフォーマンスをスケーリングできるため、最適化されたワークロードや専門的なインフラの役割を求めるSPOにとって有益となる。

マルチリソースコンセンサス(OO-5)

Minotaurはプルーフオブステーク(PoS)、プルーフオブワーク(PoW)、プルーフオブリステーク(PoRS)といった複数のリソースを活用するハイブリッドコンセンサス機構を導入し、比較的低いオーバーヘッドで新しいパートナーチェーンを起動し、セキュリティを確保する。このモデルにより、SPOはリステーキングを通じて複数のチェーンに同時に参加でき、実質的に追加リソースを大幅に増やすことなく、SPOの運用範囲と経済的機会を著しく拡大する。

ライトクライアントインフラ(IC-3)

最小限のデータ保持と帯域幅要件でブロックチェーンと安全にインタラクションできる軽量クライアントの作成に焦点を当てる。ストレージや通信に制約のあるデバイス向けにサービスを調整することで、SPOは、より幅広いユーザーやデバイスにサービス提供を拡大できる。このようなイノベーションによって、これまでリソースの制約により排除されてきたデバイスでも、ネットワークに効率的に参加することが可能になる。

Hydra Tail(IHT-1)

トランザクションをオフチェーンで効率的にバッチ処理しつつ、オンチェーンのセキュリティ保証を維持するために、zk-rollups(ゼロ知識ロールアップ) を利用したレイヤー2スケーリングソリューションを開発する。このアプローチは、SPOノードの計算負荷とストレージ負荷を劇的に軽減し、SPOが運用コストを削減しながらより高いトランザクションスループットをサポートすることを可能にする。さらに、レイヤー1の計算集約型タスクを委任することで、ネットワークリソースを最適化する。

エコノミクス / トークノミクス

高度なトークノミクスモデルや経済的なインセンティブに関する研究は、SPOの経済的なサステナビリティ、運営上の予測可能性、参加の魅力を確保するために不可欠だ。

報酬分配とトランザクション手数料(TO-2)

公平性、予測可能性、そしてブロックスペースのトークン化といった革新的な経済モデルに焦点を当てながら、高度な報酬分配メカニズムと手数料体系を探求する。これらのメカニズムを洗練させることで、SPOは予測可能で安定した経済的リターンを得られるようになり、より正確な事業計画の立案、革新的なサービス提供の促進が可能になる。ブロックスペースのトークン化のようなモデルは、SPOがブロックチェーンのリソースを異なる方法で収益化することを可能にし、新たな収益源を開拓し、経済効率を高められる。

混雑制御(OO-7)

ネットワーク使用がピークに達する期間におけるトランザクション手数料の構造とリソース配分に対処する。リソース使用量と緊急性に基づいた、より洗練された手数料モデルを開発することで、SPOは、より安定的かつ予測可能な収入源を経験する。この予測可能性は、ネットワークに多くのユーザーを引き寄せるだけでなく、SPOがティア制サービスやプレミアムトランザクションのような新しいビジネスモデルを開発し、自らのインフラ投資から直接的に利益を得ることを支援する。

トークノミクス設計(TO-1)

Cardanoのトークンエコシステムにおける基盤となる経済分析と最適化に焦点を当て、トークンの流通、評価、マクロ経済の安定性を理解するための堅牢な数学的フレームワークをSPOに提供する。明確なエビデンスベースのトークノミクスは、SPOが長期的な価値の動向を予測し、リソース投資を戦略的に計画し、Cardanoブロックチェーン全体の経済的健全性に合致した運用を自信を持って拡大することを可能にする。

DAppトークノミクス(C-4.1)

SPOが新規または既存のパートナーチェーンに効率的に参加できるような経済的フレームワークの構築に焦点を当てた、DAppの最適な参加に関する研究。DApp、サイドチェーン、パートナーチェーンのエコシステムにおける関与を管理し、インセンティブを与えるための明確なガイドラインを確立することにより、SPOは最大の収益と最小限のオーバーヘッドで経済的機会を拡大できる。これは、広範なCardanoエコシステム内におけるSPOの運用および財務ポートフォリオの多様化をサポートする。

ガバナンス

効果的で効率的、かつ包摂的なガバナンスメカニズムは、SPOがCardanoの戦略的進化に積極的に関与する力を与え、エコシステムがブロックチェーンの効率性を損なうことなくステークホルダーのニーズに応えられるようにする。

次レベルのガバナンスプロトコル(D4-1)

最小のリソースフットプリントで、スケーラブルな分散型ガバナンスプロトコルを設計することに焦点を当てる。ガバナンスコンピュテーションの大部分をオフチェーンまたはレイヤー2に移行することにより、SPOは貴重なメインチェーンブロックスペースを過度に消費することなく、決定に参加できる。この効率化により、ブロックスペースを主にユーザートランザクションに使用でき、確固としたガバナンス参加を維持しながらネットワーク全体のパフォーマンスを保守できる。

ガバナンスインセンティブ(D4-2)

代表民主制や液体民主主義、二次投票メカニズムといった、分散型ガバナンスのための高度なインセンティブモデルを検証する。これらの洗練された投票モデルは、意思決定の力を均衡させ、中央集権化のリスクを軽減し、SPOとより広範なコミュニティからの、より広範で情報に基づいた参加を促すことを目指す。現実世界のIDやクレデンシャルの投票プロセスへの統合は、ガバナンスの公平性と有効性をさらに高め、説明責任を促進し、不正操作やシビル攻撃を防ぐ。

意思決定ツールセット(D4-3)

SPOがが分散性、経済的影響、相互運用性、スループットといった重要な指標に基づき、ガバナンスの提案を客観的に評価、比較できる分析ツールと可視化フレームワークを開発する。SPOにこのような包括的な意思決定ツールセットを提供することで、透明性が高く、協力的で、データに基づいたガバナンスへの参加が促進され、Cardanoエコシステムとすべてのステークホルダーの長期的な利益に確実に合致するような戦略的決定がなされる。

ゼロ知識、SNARK、ID

ZK証明とSNARKは主にイネーブリングテクノロジーとして機能し、高度なガバナンスシステムに不可欠なインフラを提供する。同様に、デジタルIDはコアコンポーネントとして統合され、ガバナンスメカニズムを強化し、インセンティブ構造を強固にし、セキュリティフレームワークを補強する。

各研究ストリームの詳細は、EkklesiaのSupporting Linksセクションにある「Cardano Vision - Work Program 2025 proposal」でストリームIDから検索可能だ。

今後の展望

IORは、コミュニティとのより効果的な連携のため、Intersect研究ワーキンググループを再編するにあたり、Cardano R&D Sessionsを通じてSPOのステークホルダーとの議論を継続する意向だ。

議論への参加を希望するSPOは、IORの問い合わせフォームから連絡して欲しい。

Cardanoの研究開発においてより重要な役割を担いたいと考えている研究者からの連絡も、IORは大歓迎だ。