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Hyperledger Identus – 過去、現在、未来

Linux Foundationの分散型トラストプロジェクトであるHyperledger Identusが、分散型アイデンティティを活用して、より安全でプライベート、効率的な未来を実現する方法を探る

2025年 1月 27日 Javier Ribó 6 分で読めます

Hyperledger Identus – 過去、現在、未来

IDは理論上は単純に見えるかもしれませんが、現実ははるかに複雑です。あなたやあなたの愛する人たちの個人情報へのアクセスをコントロールしているのは誰でしょうか。それは本当に安全でしょうか。他に誰がアクセスできますか、そしてもしそれが悪人の手に渡ったらどうなるのでしょう。

ID管理は、こうした課題に対処するために飛躍的な進化を遂げてきました。出生証明書や社会保障番号のような伝統的な方法は、指紋や顔認識のような代替識別方法へと、徐々に道を譲ってきました。

こうした進歩にもかかわらず、大きな課題は残っています。人々は依然として、機密情報の保護を中央集権化されたプロバイダーや政府に依存しています。しかし、個人データとオンラインIDに対する完全な管理権を求める声は高まってきています。ここに、ブロックチェーン技術と、LFの分散型トラストプロジェクトであるHyperledger Identusが実行可能なソリューションを提供します。

Hyperledger Identusとは

IdentusのIDソリューションはAtala PRISMプロトコルの強固な基盤に基づいて構築されています。このため、Identus SDKがWeb(Typescript)やモバイル(SwiftやKotlin)など多数のプラットフォームで動作するなど、他のソリューションにはない柔軟性を実現しながら、分散型IDソリューションのための包括的なツールスイートを提供しています。Identusは相互運用性、セキュリティ、プライバシーを優先し、エンドツーエンドの暗号化、検証可能なクレーム、安全なデータストレージを提供して、ソフトウェア定義の信頼と堅牢なユーザー保護を確立しています。

IDソリューションが信頼を得るには、分散型の情報源が必要です。これは、Cardanoの下支えのおかげで、Idetusの強みの1つとなっています。Identusは既存のノードを管理したり保守したりする必要はなく、新しいノードを奨励する必要もありません。他のチェーンは独自のIDソリューションにこうした柔軟性を持たせようと奮闘していますが、IdentusはCardanoに完全にサポート、補完されています。

オープンソースプロジェクトとして、Input | Output(IO)はHyperledger Identusの1コントリビューターに過ぎず、コミュニティがプラットフォームの進歩に欠かせないものとなっています。Identusは透明性の高いコラボレーションを通じて改良を続けています。これには最近開催された「Develop Decentralized Identity Solution Using Hyperledger Identus(Hyperledger Identusを使用した分散型IDソリューションの開発)」ワークショップのようなイベントも含まれます。このアプローチは、医療記録への安全なアクセスを可能にするなど、現実世界における新しいアプリケーションを可能にします。

Identusスイートは、分散型識別子(DID)および検証可能なクレデンシャル(VC)のソリューションを提供し、次のようなID文書の安全性と信頼性を強化します。

  • パスポート
  • 運転免許証
  • 銀行口座
  • 国民ID
  • 教育証明書 

PRISMを基盤とするHyperledger Identusプラットフォームは、Cardanoブロックチェーンを検証可能なデータレジストリとして使用して、ユーザーがDIDを作成、管理、解決できるようにします。

  • DID管理:ブロックチェーンに操作を公開することにより、DIDの効率的な作成、更新、無効化を促進する
  • トランザクション検証:DID操作をオンチェーンに記録する前に、暗号検証によってDID操作の整合性と信頼性を確保する
  • スケーラビリティ:ブロックへの操作のバッチ処理をサポートし、スケーラビリティを向上させ、トランザクション手数料を削減する

個人にとって、これは、個人データを開示、販売、悪用する可能性のあるIDプロバイダーに頼ることなく、個人データを管理できることを意味します。個人だけでなく、組織やより広範なコミュニティにとっても、Hyperledger Identusは詐欺を防止し、利害関係者やメンバーに関する信頼できる同意の得られたデータ共有を提供し、プライバシー規制へのコンプライアンスを確保するのに役立ちます。

Hyperledger Identusの今後

Hyperledger Identusは2025年に成長すると予想されています。Cardanoが数十億人のユーザーに対応できるようスケーリングし、世界で最も分散化されたブロックチェーンになることによって、ネットワーク全体でユーザビリティを拡張する新たな機会が生まれるでしょう。

LF分散型トラスト(多数のメンバーを擁する定評あるLinux Foundationの傘下組織)の一員となることで、さらなるコラボレーションと成長のための多くの機会が開かれます。この提携は、Hyperledger Identusが分散型IDソリューションをリードする可能性を強化します。

Hyperledger Identusは、Cardanoコミュニティとのコラボレーションを継続することで、デジタルIDを取り巻くもっとも差し迫った問題に対するソリューションを提供する態勢を整えています。すなわち、ユーザーには以下が可能になります。

  • 誰がいつ情報にアクセスできるかを決定する
  • IDを安全に保存する
  • 第三者に依存せず身元を証明する

Hyperledger Identusチームの最新情報を入手したい場合は、コミュニティカレンダーをチェックして、オンライン会議に出席し、ディスカッションに参加してください。 

本稿はFabio Pinheiro、Curtis Harding、Goncalo Frade、Benjamin Voiturier、Allain Magyar、Daniel Calatayudとの共同執筆です。Fernando SanchezとOlga Hryniukにも協力いただきました。

Javier Ribó

Javier Ribó

Software Engineer Lead – Atala Prism Applications

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