理論から実装へ:ブロックチェーン開発において形式的手法が重要である理由
2部構成のブログの前半では、安全で回復力のあるブロックチェーンの構築に厳格な技術がいかに必要であるかを検討する。形式手法を支える理論と、これがCardanoエコシステムにどのように信頼性をもたらすかを探る
2024年 11月 25日 7 分で読めます
ブロックチェーンのような複雑で急速に進化する分散型システムを扱う場合、信頼性、セキュリティ、効率性は重要な要素である。
Input | Output(IO)において、形式手法はこれらの目標を達成するための礎石となる。IOは厳密な数学的アプローチにより、予測不可能なネットワーク条件、金融データのセキュリティ、最先端の研究の迅速なイテレーションの必要性など、ブロックチェーン開発特有の課題に対処する。本稿では、形式手法がIOのアプローチに不可欠である理由と、これがCardanoブロックチェーンを強化する堅牢なソリューションの構築にどのように役立つかについて探る。
形式手法とは
形式手法は、要件、仕様から実装、実行に至るまで、ソフトウェアやハードウェアの設計や実装に数学的厳密さを適用することを含む一連の技法の総称である。こうした技法は、初期には実現可能性の評価や要件の明確化、開発プロセスの合理化と高速化、後期にはシステムの動作検証や円滑な更新に利用できる。形式手法は正確性、セキュリティ、性能など、システムのさまざまな面に適用できる。
では、形式手法とは実際何であるのか。実は初等教育ですでにこの用語が使われている。大まかに「計算式を書きなさい」という意味で使われているが、直感を得る足しになるだろう。
例えば、幼い子供が2つの数を足す場合、頼りにならない暗算を使うこともあれば、「筆算」のような信頼できる体系的なテクニックを使うこともある。後者は、おそらく異なる名前であるだろうが、学校で教えられることが多い形式手法の基本形である。このような体系的なアプローチは正確さを保証し、第三者が答えを検証することを可能にする。
このプロセスは紙の上では遅いかもしれないが、幸いにも電卓や電話などのデバイスで簡単に自動化できる。これは典型的な形式手法の製品化の一例である。2つの大きい数を足す個々のステップの検証は、計算機が行うため必要ない。これにより、どの計算を先に行うべきかを決定したり、その答えを実用化するといった、より重要な課題に集中することができる。
学校では、通常チェックの責任は教師におかれ、答えは正しいか間違っているかのどちらかである。これは、答えを口走ってしまう誘惑にかられる(少なくとも私にとっては)。しかし、学校を卒業してプログラマーとして25年以上を過ごした今、コードエラーを見つけて修正(デバッグ)することは非常に難しいプロセスであることは明らかだ。コードが読みやすく、意図が明確で、徹底的なテストが行われ、選択されたプログラミング言語がさまざまなバグを防ぐのに役立つ場合、デバッグははるかに容易である。
ソフトウェア開発においては、一般に正しいソリューションに辿り着くまでイテレーションを続けなければならない。そのため、開発者を正確な確率で迅速に正しい答えに導くアプローチは、試行錯誤の非効率性を回避するスイートスポットである。
「計算式を書く」というこの単純な考え方(問題を分解して、独立して検証可能なソリューションに辿り着くのに役立つ)は非常に強力である。これは、学校で学んだ基本的な算数テクニックから、私たちがIOで構築する大規模なシステムの実装にまで拡張されている。
形式手法が重要な理由
ブロックチェーンシステムの構築には3つの重要な課題があり、形式手法はこの対処に役立つ。
- ブロックチェーンシステムを現実的な条件でテストすることは困難である。現実的な条件下とは、公共のインターネットインフラ上で動作し、分散型コミュニティが多様なハードウェアを用いて操作し、実際のやり取り、ID、資格情報、トランザクションが複雑に絡み合う状態だからだ。例えば、Cardanoには3200以上のステークプールと130万の委任ウォレットがある。テスト、それに続くデプロイを実行する前に、設計、高品質コード、パフォーマンスとセキュリティパラメーターの定義付けに特別に労力を費やすことで、メインネット上でのスムーズなユーザーエクスペリエンスを確保できる。これにより、開発やテストの時間が節約され、メインネットへの新機能リリース時に想定外の問題を回避できる(Cardanoの稼働日数は2,200日以上)。
- ブロックチェーンシステムは金融資産と機密データを処理するため、整合性とセキュリティは重要事項である。Cardanoは、90,000を超えるスマートコントラクトと160,000のネイティブ資産ポリシーを保有しており、深刻な影響なしに修正することは困難、場合によっては修正が不可能であるようなバグに対する堅牢な防御を必要としている。可能な限り早期に、理想としては初期設計時に問題を特定することで、効果的にリスクを軽減することができる。
- IOは最先端の研究に基づいて、ユーザーにタイムリーなソリューションを提供する新しいシステムを開発する。設計から実装までの迅速かつ正確なイテレーションは不可欠であるとともに、コストのかかる開発遅延を最小限に抑えることになる。また、将来的に最適化、変更、保護、活用が容易になる、原則に即した、十分に理解された設計になる。
2025年以降、Cardanoは以下のようなソリューションを提供することを目指している。
- ファイナリティの高速化:Ouroboros Perasコンセンサスプロトコルの活用
- スループットの最適化:Ouroboros Leiosコンセンサスプロトコルの活用
- スケーラビリティの向上:Hydra Tailのロールアップ
- 相互運用性:パートナーチェーンのリリース
新しいノードとノードアーキテクチャー、他のシステムとのさらなる統合、異なるトークンで支払い可能な手数料(Babelフィー)、インテント、機密性、ハイブリッドアプリによるSSI(自己主権ID)ソリューション、Midnight、Hyperledger Identusは、これらのイニシアチブを推進するのに役立つだろう。
数学的仕様や証明を含む形式手法は、デジタルファンドの管理における高保証ソフトウェアとユーザーの信頼性を保証する。IOがCardanoのプロジェクトでこうした手法を広範に使用していることで、重大な問題が回避されている。このことは、安全でスケーラブルなブロックチェーンシステムを構築する上での価値を実証している。
次のブログ記事では、IOがCardanoエコシステム内のプロジェクトを開発するために形式手法をどのように適用するかについて、具体例を挙げながら深く掘り下げる。期待されたい。
最新の記事
Cardano憲法:制定会議から批准までの道のり 筆者: Fernando Sanchez
27 February 2025
Plutus TxがPlinthに衣替え 筆者: Ziyang Liu
20 February 2025
IO ResearchのCardanoビジョン、Intersectプロダクト委員会によりフィードバックを求めてコミュニティに提出 筆者: Fergie Miller
5 February 2025