IO ResearchのCardanoビジョン、Intersectプロダクト委員会によりフィードバックを求めてコミュニティに提出
Intersect Researchワーキンググループ経由でプロダクト委員会に提示されたInput | Output Researchの2025年ワークプログラム提案は、予算委員会への推薦案件として正式に承認されコミュニティからのフィードバックを待つ
2025年 2月 5日 13 分で読めます
Cardanoビジョン提案のプレゼンテーションは、IntersectナレッジベースのResearch Working Group(RWG)ページからダウンロードできる。現在進行中の協議プロセスの一環として、Intersectプロダクト委員会による審査を受けた現在、IO Research(IOR)は、RWG Discordチャネルを通してフィードバックや議論を求めている。
主要ブロックチェーンとしての地位を維持するために、Cardanoにはサステナビリティ、スケーラビリティ、相互運用性に焦点を当てた堅牢な5年間の研究アジェンダが必要だ。これを実現するためには、Ouroboros Omegaなどのコンセンサスアルゴリズム、ゼロ知識証明、スマートコントラクト機能の強化など、特定の重点分野を発展させなければならない。
目標は、イノベーションを推進し、高水準のセキュリティと効率性を維持しながら、世界的および社会的課題に対処するCardanoの位置付けとリーダーシップを強化することである。
リサーチネットワークと実績
IORの世界的な学術ネットワークは2つの研究開発チームで構成されている。30人以上の社内研究員と各地の研究員との研究ネットワーク、35人を超えるアーキテクトとエンジニアからなるイノベーション部門が、ラピッドプロトタイピングと検証に焦点を当てている。研究ネットワークについての詳細は、この最近の投稿を参照して欲しい。
IORのライブラリーには、世界各地の150人を超える研究者が携わった200を超える査読、発表済みの論文が公開されており、合計で10,000回以上引用されている。これらのうち、約50の論文はCardanoの5つの開発テーマ(または開発期)の中心となり、Cardanoが現在の形で存在することを可能にした基礎研究を提供している。
Voltaireとガバナンス
CIP-1694を通じて導入されたVoltaireは、Cardanoの最初のロードマップの完成を示し、ネットワークが自律システムになるための技術的基盤を確立した。
投票およびトレジャリーシステムを導入することで、参加者は自分のステークおよび投票権を使用してネットワークの将来に影響を与え、既存のステーキングおよび委任のフレームワークに基づいたCardanoの改善を提案することができる。
これを裏付ける公開論文は以下となる。
- A Treasury System for Cryptocurrencies: Enabling Better Collaborative Intelligence(暗号通貨のためのトレジャリーシステム:より優れたコラボレーティブインテリジェンスを実現)
- SoK: Blockchain Governance and Reward Schemes(SOK:ブロックチェーンガバナンスと報酬スキーム)
- Committee Sizes in Proof of Stake Governance(プルーフオブステークガバナンスにおける委員会の規模)
IORの方法論
IORアプローチは、エビデンスに基づくエンジニアリング手法を提唱し、包括的なアーティファクトと高いセキュリティ保証のための形式手法を通じて、設計の透明性と検証を保証するものだ。
IORの方法論は、ワークストリームまたはプロジェクトが最初の問題ステートメントから1~9のSRL(ソフトウェア成熟度レベル)を経て市場へのデプロイへと至るまでの、3つの異なるフェーズで構成される。
- 基礎研究(プレシード/SRL 2まで):IORは、最先端の技術水準をも凌ぐアイデアを開発し、形式化する。適切な要件の特定、固有のトレードオフや制限の特定、有意義な数学モデル、明確に定義された設計目標、厳密なセキュリティ証明に即した技術的な提案やソリューション。
- 迅速なイノベーション(シード/SRL 4-6まで):軽量な概念検証をデプロイする学際的なチーム。有望なアイデアを開発し、プロトタイプ、モデル、シミュレーションを通じて実現可能性を確立し、直接使用できる仕様を作成し、完全な実装を検証するための厳格な研究開発。
- 目標とする実装(シード+/SRL 4-6以降):IORは、イノベーションフェーズで開発された仕様に従って、目標とするプロダクション環境でソリューションを実装するエンジニアリングチームをサポートし、高保証、エビデンスに基づくエンジニアリングアプローチを保証。
2030年の展望
IORは、Cardanoがより広範なブロックチェーンエコシステムとともに、分散型コンピューティングおよびストレージプラットフォームへと進化することを想定している。Web2のシームレスな接続感のごとく、ブロックチェーンネットワークが苦も無く相互運用できる「世界のオペレーティングシステム」となる。
このビジョンは、ブロックチェーンがID、ガバナンス、権力構造を定義する上で変革的な役割を果たすデジタル国民国家の出現をサポートする。戦略的研究アジェンダは、具体的な研究開発経路を示し、その目的、関連する技術的課題、およびその結果としてのCardanoの機能強化を詳述し、これらの進歩をリードするものとして自らを位置づけている。
Cardanoビジョン
戦略的研究アジェンダは、Cardanoの5年間の展望を概説している。このアジェンダは、中期レビューを伴うビジョン&インパクトフェーズという2.5年ずつの2つのフェーズで構成され、上記のように、連続した年次および隔年のワークプログラムで構成されている。
2025年向けなどの各年次ワークプログラムには、タスク、マイルストン、成果物を含む特定のワークストリームが含まれ、それらはすべて、卓越性、品質、および実装を提供することを目的としている。このアジェンダは、100%アップタイムというCardanoの実績に基づいており、継続的な改善を保証し、ブロックチェーン技術の最前線での地位を維持するものだ。
ポートフォリオ戦略を活用することにより、IORは各研究方向において、その進捗、リスク、新たな機会を継続的に評価することができる。
9つのテーマ別重点分野
Cardanoビジョンの提案は9つの重点分野から構成されている。各重点分野では、Cardanoの動機、技術的課題、メリットを詳述し、各方向が特定のブロックチェーンの原理原則とどのように整合しているかを示す。
これらの分野は研究開発のロードマップを提供し、その取り組みが革新的であるだけでなくCardanoの使命に関連するものであることを保証する。各分野は、重要な問題に取り組み、技術の進歩を推進し、最終的にはプラットフォームの能力、サステナビリティ、世界的な影響力を強化する。
1.世界のオペレーティングシステム
現代のITインフラの重要なレイヤーになるためには、ブロックチェーンは安全な価値転送を可能にし、分散型金融(DeFi)のような複雑な操作をサポートしなければならない。Cardanoはスマートコントラクトの機能とインフラを強化し、包括的でアクセス可能なシステムを構築することを目指している。これにより、CardanoをDeFiや他の専門分野のリーダーとして位置付ける。
2.Ouroboros Omega
Cardanoのプルーフオブステークプロトコルはエネルギー効率が高く、幅広い参加をサポートする。エコシステムが成長するにつれて、トランザクションのスループットと処理のスケーリングが重要になる。Ouroborosを最終形態に引き上げることで、グローバルなブロックチェーンエコシステム全体における普及が実現する。
3.トークノミコン
トークン化により、資産の作成とグローバルな転送が可能になる。CardanoのネイティブトークンとBabelフィーのようなイノベーションにより、その先進性は際立っている。しかし、トークノミクスの継続的な改良は、安定性、イノベーション、公正なサービス価格設定、分散性の強化、成長の促進に不可欠である。
4.グローバルID
SSI(Self-sovereign identity:自己主権型ID)は、個人データのコントロールをユーザーに委ね、選択的なプライバシーと規制へのコンプライアンスを可能にする。Cardanoのトランザクション、スマートコントラクト、ガバナンスにSSIを埋め込むことで、堅牢な分散型IDフレームワークが確立され、相互運用性が強化され、コミュニティの成長が支えられる。
5.民主主義4.0
インターネット、ソーシャルメディア、AIなどのテクノロジーは、伝統的な民主主義に挑戦し、ガバナンスの新たな可能性を開く。Cardanoは、安全な投票システム、憲法上の代表とインセンティブにより民主的なガバナンスを強化し、分散型ガバナンスにおけるアクセシビリティとリーダーシップを向上させようとしている。
6.Internet Hydra-ted
レイヤー2ソリューションのHydraはトランザクション処理を高速化し、手数料を削減することで、ゲームやサプライチェーンなどのハイスループットアプリケーションでCardanoの競争力を高めている。Hydraの開発をさらに進めることで、Cardanoのスケーラビリティと企業の魅力が強化される。
7.インターチェーン
ブロックチェーンとレガシーシステム間の相互運用性は不可欠である。強力なセキュリティ基盤により、Cardanoはクロスチェーントランザクションのリーダーとして位置付けられている。スケーラブルでプライベートなクロスチェーンDAppをサポートすることで、Cardanoは安全で効率的なマルチチェーン環境を提供することができる。
8.コアのゼロ知識機能
ゼロ知識ツールは、Cardano全体のプライバシーとセキュリティを強化する。モジュール化された更新可能なインフラを標準化して長期的な機能性、競争力、適応性を保証し、プライバシー保護ソリューションのリーダーとしてCardanoを確立する。
9.ポスト量子の展望
量子コンピューティングは、VRF(検証可能なランダム関数)やしきい値署名のような従来の暗号に一定のリスクをもたらす。Cardanoに量子耐性アルゴリズムとスケーラブルな暗号ソリューションを搭載することで、インフラを保護し、ポスト量子時代における回復力と適応性を保証する。
評価とレポート
ワークプログラム25のレポートは、構造化されたプロセスに従い、すべてのワークストリームにわたって透明性と説明責任を提供する。半期中間報告書は重要なチェックポイントとして機能し、作業や成果物を含むワークストリームのステータスに関するハイレベルな最新情報を提供する。
各ワークプログラムの最後に、年間を通じて達成されたすべての成果物に関する詳細情報の要約を含む包括的な最終報告書が作成される。この報告書には、関連する最終コストの詳細な内訳も含まれ、プログラムの財政的および運営的成果の明確な姿を提供する。
次のステップ
Cardanoビジョンとワークプログラム25の提案がCardanoコミュニティに広く浸透し、資金調達を正式に申請していこうとする動きの中で、IORはコミュニティのメンバーが提案と今後のエキサイティングな研究機会をはっきりと、完全に理解できるように積極的に働きかけていく。
コミュニケーションと普及
2025年、IORは、研究による洞察、最新情報、成果を効果的に共有するために、特にCardanoコミュニティ内の特定のグループ(SMEなど)の研究へのアクセシビリティを向上させる方法を模索したいと考えている。
研究者、研究組織の代表者、ステークプールオペレーター、DApp開発者、DRep、または2025年を通じてCardanoの研究プログラムへ関与を希望するその他のCardanoステークホルダーの方は、IOおよびIntersect Research Working Group LeadのリサーチパートナーシップディレクターであるFergie Millerに連絡し、このフォームを提出して初回ヒアリングに進んで欲しい。
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