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デジタル資産規制の未来 - Charles Hoskinsonの証言

2022年6月23日、IOGのCharles Hoskinson CEOは米国下院の商品取引、エネルギー、信用に関する小委員会で証言の提供と質疑応答を求められました。以下は、その証言の写しです

2022年 6月 23日 Charles Hoskinson 16 分で読めます

デジタル資産規制の未来 - Charles Hoskinsonの証言

米国下院、商品取引、エネルギー、信用に関する小委員会におけるヒアリング

2022年6月23日

I. 導入

Maloney委員長、Fishbach幹部メンバー、小委員会メンバー各位、および著名なゲストの皆様、このヒアリングに証人としてお招きいただきありがとうございます。Charles Hoskinsonです。私は心から本小委員会の働きを称賛しており、ブロックチェーン業界のためにフォーラムを提供する時間を割いていただいていることに感謝しています。将来のデジタル資産規制に関して、十分な情報をもって、しっかりと議論するために、必要な情報を提供したいと思います。

II. Input Output Globalの背景

私は、イーサリアムブロックチェーンとCardanoブロックチェーンの設立者の一人であり、ブロックチェーンとその他の最先端テクノロジーの開発に主眼を置く研究およびエンジニアリング企業、Input Output Global(IOG)のCEOです。IOGはアメリカの企業であり、Cardanoブロックチェーンや、その他、デジタルIDを個人に提供するブロックチェーンベースの自己主権型IDソリューションであるAtala PRISM、個人にさまざまな金融サービスへのアクセスを提供するデジタルポータルであるLaceライトウォレットなど、ブロックチェーン上の製品の構築を支援しています。IOGの研究チームは、ブロックチェーンテクノロジーに関する140を超える学術研究論文を発表し、ワイオミング大学やカーネギーメロン大学、スタンフォード大学、エディンバラ大学などの学術機関と関係を持っています。米国以外にも、当社はアフリカ、とくにエチオピア、タンザニア、ケニア、ブルンジで農村部にブロードバンドサービス拡大し、マイクロファイナンスや融資市場を通じて金融包摂を高め、学生や教師にデジタルIDや検証可能なクレデンシャルを提供する手助けを行っています。このすべてはCardanoブロックチェーンで行われます。

III. 現実問題を解消するためにブロックチェーンテクノロジーを使用

分散型台帳、すなわちブロックチェーンは、透明性に優れ、監査可能、タイムスタンプ付き、不可変である必要がある情報を保存します。このプロセスにより、社会的経済的事項の記録を信頼性のあるプログラム可能なものにすることができます。

パブリックブロックチェーンは、多くの商品と同様に、本質的に分散化されておりパーミッションレスです。たとえば、私はコロラドの農場で牧草を育てています。私は牧草の植え付けや刈り取りに許可を得ることはありませんでしたし、現在は動的なグローバル市場のメンバーです。こうした市場はすべて規制、管理されていますが、この市場を機能させるために中央集権的な牧草当局というものがあるとは想定しません。そのような不条理は、現代経済ではなく、旧弊なソビエトの中央部における計画立案者が保有していたものです。ブロックチェーンプロジェクトはこの分散化の精神を運用および具現化しており、手間のかかる時代遅れの規制構造の重みで失敗に終わるでしょう。

牧場主として、私は水利権、放牧リース、公有地当局、および他の多くの協定、契約、および経済的出来事に対処しなければなりません。こうした活動の管理監督の多くがデジタル化されておらず、為政者や規制当局、調査官へ新しい価値を提供する方法を共有していません。ブロックチェーンでは、こうした活動が透明性と監査可能性をもって実施、管理され、結果が情報として共有されます。

たとえば牛肉産業を見てみると、この業界の全サプライチェーンや、牧草飼育の保証や貿易金融、顧客エンゲージメント、顧客フィードバック、認定証、エンドツーエンド追跡可能性といったサステナビリティや安全性の問題に至るまで、多大な価値を生み出すことなど、多くの方法でブロックチェーン技術を使用することができます。追跡可能性に関して言うなら、BeefChainは消費者が牛肉製品を追跡できるようにするブロックチェーンスタートアップです。BeefChainはCardanoブロックチェーン上に構築され、IOGのAtala Traceソリューションを活用しています。2019年、同社はプロセス検証プログラム3でUSDA認定を取得しました。これはホルモンフリーなどの一定の特徴に関し、米国の食品安全規制にしたがって監査、認定を受けたことを示しています。動物個体と産地の特定を可能とすることによって、BeefChainは牧場主が高級牛に対しこれに見合った価格を受け取ることを可能とし、消費者へは自らが消費する肉に対する安心感を提供します。ワイオミングで見られるように、動物のブランド化に関する規則と手順をデジタル化することで、査察官を待つ時間が何千時間も短縮され、家畜販売が迅速化でき、環境や保全に関して点数付けしたサプライチェーン管理のデータ収集が向上できます。家畜のブランド化は、その時々の記録がブロックチェーン上に不可変なものとして固定されることにより新たな意味を持つようになります。

IOGは、事業の一環として、エチオピアの教育省と協力し、同国でブロックチェーンベースのデジタルIDと検証可能な成績を500万の学生と教師に提供する事業に取り組んでいます。この活発なプロジェクトの目的は、データ主導型の政策決定を可能にすると同時に、詐称のリスクを削減することにより、学生が国内外で大学や就職市場で学歴を証明できるようにすることです。IOGとWorld Mobile社との提携は、Cardanoブロックチェーンを活用してアフリカ全土を接続可能とするための基盤を敷き、大陸の農村部や遠隔地の人々に力を与え、すべての人が平等にサービスやチャンスにアクセスできるようにするものです。World MobileのCardanoブロックチェーンを活用したメッシュネットワークモデルはスケーラビリティ、共有インフラ、セキュリティ、透明性、自己主権を可能にし、ひいては人々がコネクティビティにアクセスするためのコストと障壁を下げることができます。共有経済はすべてのネットワーク参加者にその成功への相互利害を与えます。

ケニアとガーナでは、暗号資産の流動性と実世界の経済活動との間にある摩擦を取り除く製品のエコシステムを通じて資金調達のギャップに取り組むために、IOGはPezesha Africa Limitedと提携して、運転資金のための短期融資を探す中小企業に融資を促進しています。目的は、シームレスな融資を可能にするシンプルで摩擦のないツールを構築することです。

米国で行われているもう一つのユースケースにもぜひ触れておきたいと思います。これはブロックチェーンテクノロジーを活用したロイヤリティプログラムで、IOGとDISH Network Corporation間で現在戦略的提携によって開発しています。この2社は、Cardanoブロックチェーンを基盤としたバックエンドのトークンベースのロイヤリティシステムの開発に取り組んでいます。Cardanoは、顧客が獲得したロイヤリティコインまたはBoostcoin™の残高を追跡し、顧客の報酬および報酬還元に基づいてロイヤリティトークンをミント(発行)またはバーン(廃棄)します。ロイヤリティトークン残高は、DISHが管理するデジタルウォレットを使用し、夜間のバッチ操作で調整されます。IOGのAtala PRISMはプロセスに個人を特定するような顧客情報が絶対に入らないようにするために活用されます。この提携の第一歩は、DISHがより良いサービスを提供し、顧客と安全に接続できるよう、Atala PRISMのIDサービスとCardanoのネイティブ資産機能によって、ブロックチェーン機能をDISHのインフラで可能にすることです。

こうしたユースケースとプロジェクトは、ブロックチェーンテクノロジーが米国、とくに農村部や遠隔地にもたらしうる、ある種の経済発展と成長の実例となります。

IV. ブロックチェーン業界の原則

デジタル資産をどのように規制し、消費者を守り、現代社会の現実に合わせて成長させるかということについて議論するならば、イノベーションは詳細を困難にするがゆえに原則に焦点を当てるべきであることを認める謙虚さが必要です。言論の自由の概念は新たなテクノロジーによって試されていますが、憲法上、言論の自由の概念は変わっていないことが認められます。私たちは、政府の干渉や懲罰を恐れることなく自由な社会で自らを表現したいと望んでいます。米国政府とのやり取りのなかで、ブロックチェーン業界から現れる思想を導くべき原則とはなんでしょうか。

アメリカが生んだもう一つの創造物、インターネットを見ても、ガバナンス、進化、そしてインターネットのイノベーションは国際電気通信連合(ITU)やその他の国際組織に管理されてるわけではなく、むしろ何千もの相互接続した独立機関や民間会社が、接続性、容量、ユーティリティの増加という自己発生的な共通の目標に向けて協力しています。合衆国はインターネットが繁栄し、合衆国がインターネットテクノロジーで主要な役割を果たし、これを維持することができるよう、官民の提携を受け入れています。同様に、米国のブロックチェーン業界を繁栄させ、その潜在能力をフルに活かすために、さまざまな機関が民間セクターと強力することになるでしょう。

インターネットの規制の枠組みについて議論し、1兆ドル規模の企業の台頭につながった1990年代の連邦議会のように、私はこの議会が、ブロックチェーン業界と協力して我が国の革新と適応における優れた能力を活用する原則主義のアプローチに向かうことで、素晴らしい結果を出すことができると信じています。

特定の法域の壁に分断され、報告と開示を中央集権的機関のみに依存するカテゴリーベースの規制は、ブロックチェーンベースの分散型エコシステムでは効果的でなく、イノベーションを抑制することになるでしょう。一方、より柔軟性のある原則主義に基づく規制は、始まったばかりの業界の首を絞めたり、企業を海外に追いやることなく、黎明期のテクノロジーとともに適応、進化させることができます。

V. 米国産業の支援における価値

20世紀を振り返ると、米国の優位は金融サービス、テクノロジー企業、生産能力の3つの柱に拠っていました。これらの業界は、グローバル化の需要、競争の激化、新しいテクノロジー、そして、サステナブルで価値観主導のグローバル経済を確保するための環境、社会、ガバナンス(ESG)を定義したいという欲求のもとで、素早く変容しています。私は、ブロックチェーン業界は、21世紀を通じてこれらの業界の信頼、コンプライアンス、競争力を可能にする基盤となるテクノロジーを構築しており、それによって次の米国の世紀を確実なものにすると信じています。

ブロックチェーンテクノロジーが提供する透明性があり不可変で常に客観的な台帳は、記録管理、レポート作成、監視のための驚異的なツールです。言い換えると、ブロックチェーンテクノロジー自体が消費者のセーフガードとなり市場の完全性を守るために提供することができる多くのツールを提供します。分散型取引所をフロントランニングやセキュリティ違反から保護する概念は、Chainalysisなどのレグテック企業が、政府機関、規制当局、エコノミスト、金融エンジニアに取引所に関する前例のない情報を提供するために使用することもできます。このデータのコレクションはパーミッションレスかつロイヤリティフリーです。ダークプールはもうありません。中央集権的ブローカーはもういません。

ブロックチェーンテクノロジーのパワーはその普遍性であり、イノベーションのためのパーミッションレスなモデルです。真の競争は、全員が市場に平等にアクセスする中に存在します。当社IOGは、エチオピアからモンゴルまで多様な国々でブロックチェーンに関連するビジネス開発を推し進めるにあたり、ロイヤリティを支払う必要も、特許申請の必要も、ライセンスを取得する必要もなくきています。農場主がブランドを登録できるようにするのと同じツールを、土地の権利書やクレジットスコア、さらに音楽作品を表現するNFT(代替不可能トークン)に再利用でき、アーティストが公正な報酬を受け取れるようにすることができます。

ブロックチェーンは価値、思考、商業の流動性を、社会がかつて経験したこともない程大規模かつスピーディに可能にします。こうした新しい機能の結果を予想する代わりに、どのようなリスクに対して消費者や市場を保護すべきであるか、消費者が得るべき基本的権利とは何か、そして、こうした新しいツールを最大限に活用する方法について判断しなければなりません。米国で作られる規制や法律を遵守することは、ブロックチェーン業界、国、世界にとって指針となる価値を持たなければなりません。なにも制御されない開発スピードは、詐欺、浪費、乱用の横行につながるからです。

VI. 適切かつ信頼のおける規制の重要性

IOG、私自身、そして業界の他の多くがデジタル資産およびブロックチェーンテクノロジーに関して適切かつ信頼性のある規制に好意的であり、支持しています。しかし、これは新しいテクノロジーであり、1世紀近くも前に作られた法律や評価の範囲内にたやすく収めることのできない、根本的に新しい資産クラスです。

暗号資産は金融幹細胞、すなわち、プログラミング可能なソフトウェアで、ほぼすべての資産であり、時間の経過とともに変更可能です。実際、同じような暗号資産は2つとしてなく、暗号資産のユーザー、機能、特徴は、誰が、なぜ、どこにその暗号資産を保有しているかによってさまざまなものとなります。暗号資産は、データの検証、情報や価値の転送、商品の購入、サービスへのアクセスの提供などに使えるほか、報酬やメンバーシッププログラムとしての役割を果たすことも、価値の店舗や投資として機能でき、すべてはその暗号資産の寿命のなかで同時的にも異なる時期にも発生します。

米国の立法府は、同時にこれほど多くの異なる作用をするものを規制しようとしたことはありません。たしかに、暗号資産の中には証券であるものも商品となるもの、あるいはその両方であるものもあります。しかし、どちらでもないものもたくさんあるでしょう。暗号通貨をどのように分類しようと、以下の3点を心に留めておく必要があります。(i) 米国における既存の規制制度は、このような資産をまったく考慮していなかったこと (ii) 暗号資産がなければ、単純にほとんどのブロックチェーンテクノロジーは機能しないということ (iii) 規制の目的が、適切な消費者保護と市場の完全性の保証を促すことであることです。最後の点は、暗号資産を必ずしも証券または商品と分類する必要のないアプローチによる規制で達成することができます。

米国の証券法は、中央集権的組織(特定可能であり、その株式の保有者に財務データおよびその他のデータを提供する役割を永続的に引き受けることができる企業)が存在することを前提として、投資家と市場の保護を実現しています。一部のブロックチェーンテクノロジー、ひいては暗号資産は、初期には企業のような中央集権的組織が作成または支援している場合もあります。しかし多くの場合そうではなく、また時間が経つにつれて、事実上すべての暗号資産やブロックチェーンは、このようなテクノロジーをサポートする当事者として特定できる中央集権的組織なしに存在することになります。このような中央集権的に責任を負う当事者の存在を想定している既存の法律や規制は、ブロックチェーンテクノロジーおよびこのようなテクノロジーを推進する暗号資産の場合には、単純かつ論理的に機能しえないのです。

信頼のおける規制は、ブロックチェーンテクノロジーが米国の競争力、米国のセキュリティ、とくにデジタルインフラ、米国の金融包摂、経済発展と成長の推進に果たすことのできる重要な役割を理解することから始めなければなりません。

VII. 結論

暗号資産と、運営と機能を暗号資産に依存する幅広いブロックチェーン業界は、この十年で、非営利のボランティア開発者の小さな集団から、高度なエンジニアリング、科学研究、上場企業、そして、世界中でこうしたテクノロジーを使用する何千万もの人々を抱える、1兆ドル規模のグローバルエコシステムへと成長しました。

ブロックチェーンテクノロジーの大きな成長に匹敵するのはインターネットのみであり、より安価で効率的な支払いシステム、暗号により強化されたインフラセキュリティ、ガバナンスの新形態、自己主権型IDなど、間違いなく重要な機会をさまざまに生み出します。しかし、この新しいテクノロジーはまた新たな課題を提示し、従来の多くのシステムに既存の問題も増幅させています。カウンターパートのリスクや中央集権的仲介者の必要なしに情報と価値を瞬時に移動し、複雑なビジネスプロセスや構造を、素早くアップグレードすることができるオープンソースソフトウェアへとスリム化することで、グローバル規模で商業活動を思考するスピードで処理することが可能になります。

これらの実際のユースケース、業界の指針となる価値についての私見、およびブロックチェーン業界の将来についての考えを提示する機会をいただき感謝しています。私の知識とネットワークは、立法プロセスを支援するために、この小委員会でいつでもご利用ください。最後に、米国が米国のブロックチェーンおよび暗号通貨業界の規制の将来について議論する中で、今後数か月にわたって実り多い継続的な対話に参加できることを願っています。お時間いただきありがとうございます。ご質問を楽しみにしています。

*証言の動画はこちらでご覧いただけます。